ネットワークオーディオ、ノイズ対策の基礎知識(1)「機器の内部ノイズ対策編」
ネットワークオーディオ特有のノイズ対策が必要
ネットワークオーディオの勢いが止まらない。今となっては、メインの音楽ソースがLPやCDといったパッケージメディアではなくなった方は多いだろう。
しかし、ストリーミング再生においてだけでなく、ダウンロードやリッピングによって得た音源データをサーバーに保存して再生する場合においても、パッケージメディアの再生を前提としていたオーディオ再生ノウハウだけでは、望む音質に近づけることは困難である。ネットワークオーディオ特有の音質向上策が必要になっているのだ。
対策アクセサリーは既にたくさん市場に溢れているので、何をどう選べば良いのか混乱されている方もあろう。そこでこれから3回にわたり、「ノイズ源」毎に対策アクセサリーを整理してみようと思う。
第1回の今回は「ネットワークオーディオ関連機器の内部で発生するノイズ、外部から侵入するノイズ、それぞれへの対策アクセサリー」を探ってみる。PC、ルーター、ハブ、そしてネットワークプレーヤーといったネットワーク関連機器の内部には各種ノイズが充満している。これによる音質劣化を防止するために、各社からそれぞれ独自の技術を搭載したアクセサリーを展開している。
ノイズ対策を考える際の参考に、ぜひ活用してほしい。
機器内部で発生するノイズ対策
・YUKIMU SUPER AUDIO ACCESSORY「PNA-USB01」

PNA(プラグ・ノイズ・アブソーバー)シリーズは空き端子に挿して機器内部のノイズを吸収するアクセサリー。USB-A端子仕様の「PNA-USB01」はUSB電源に存在するノイズ成分を抵抗とコンデンサーの直列回路で吸収し、さらに非磁性の電磁波吸収シート「パルシャット」で内部回路の伝導ノイズを吸収。そして低インピーダンスの金属製ケースが高周波ノイズを吸収するという3段構え。LAN端子仕様の「PNA-LAN01」もあり。
・ACOUSTIC REVIVE「RUT-1K」

ACOUSTIC REVIVEからは本機の他にLANアイソレーター「RLI-1GB-TripleC」、LANターミネーター「RLT-1K」も発売されているが、前者は主に「LANケーブルを経由して」混入するノイズ、後者は主に「空きLANポートに外部から」混入するノイズに対応するアクセサリーである。それゆえ前者については次回、後者については本稿後半にて取り上げる。
USBターミネーター「RUT-1K」は空きUSBポートに装着するアクセサリー。PC、あるいはUSBポートが搭載されたオーディオ機器はUSB回路が常に動作している。PCにおいてもオーディオ機器においてもUSBポートが空いているとUSB回路は、信号経路はもちろん、バスパワーを搭載しているため電源回路としてもノイズを発生し、音質を劣化させる重大な影響を与えてしまう。そこで「RUT-1K」はUSBの信号経路を良質な抵抗でターミネートし、電源回路にはフィルター回路を搭載して、信号・電源双方において機器内部におけるノイズをシャットアウトするのである。
・TELOS「Macro Q」

USBアクティブノイズキャンセラー「Macro Q」も空きUSBポートに装着するアクセサリー。検知と補正用に特製ICを2個使用しており、PCの空きUSBポートに装着することで、同じPCの別ポートからUSB-DACへ送られるUSBデータ信号のノイズを除去。またデジタルオーディオ機器のフロントやリアの空きUSBポートに装着することで、USBポートを設けたがゆえに生じてしまうデジタルオーディオ機器内部のノイズを除去することができる。
・CHORD COMPANY「GroundARAYシリーズ」

グラウンドアレイシリーズは、LAN、USB-AだけでなくXLR(オス・メス)やRCA端子仕様もある。つまり本機に関してはネットワークオーディオ関連機器専用というわけではなく、あらゆる機器内のノイズ吸収用に設計されている。機器内部のノイズを、異なる帯域を受け持つ5つの素子が吸収、熱に変換・発散する“ノイズポンプ”である。
信号経路の途中に挟み込むフィルターや回路等ではなく、回路のグラウンドにのみ「触れる」ことでノイズを吸収するのが特徴的だ。すなわち信号には直接手を加えない設計とすることで、動作不良や特有のキャラクター付け等のリスクを徹底的に排除している。
・Synergistic Research 「UEF Performance Enhancerシリーズ」

「UEF Performance Enhancerシリーズ」も空き端子に装着して機器内部のノイズを吸収することでフロアノイズを低下させるアクセサリーである。Synergistic Research独自開発のUEF(=Uniform Energy Field)テクノロジーを搭載している。こちらも「GroundARAY」同様、LAN、USB-AだけでなくXLR(オス・メス)やRCA端子仕様も用意されている。
機器の外部から侵入するノイズ対策
・audioquest ノイズストッパー「USB/RJ CAPS」

金属製の「ノイズストッパーキャップス」シリーズは空いているUSB-A端子あるいはLANポートに装着することで、機器外部からの高周波ノイズ・輻射ノイズの混入を避けることができる。
・ACOUSTIC REVIVE「RLT-1K」

空きLANポートに装着することで空きLANポートの動作がストップされ、外部ノイズの飛び込みを防止できる。
内部・外部の両方のノイズ対策を謳うアイテム
・audioquest:「Jitter Bug FMJ」

ゴムふたを閉じた状態で空きUSB-A端子に装着すると、金属製の本体ケースと、高周波を吸収するカーボンを素材とする特殊ゴムとによって、機器の外部から高周波ノイズが混入するのを防止できる。さらに、搭載された「デュアル ディスクリートノイズディシぺーション回路」が機器内部で発生する高周波ノイズをも低減させる。
・SPEC 「AC-USB1-K」

インド・ビハール州産、最高品質の天然ルビーマイカを特殊積層加工したオーディオ用マイカコンデンサーを樹脂ケースに内蔵している。空きUSB端子に装着することにより外来ノイズの飛び込み防止効果だけでなく、USB回路のノイズ除去効果も得られる。
なお、記事の前半で記載した「機器内部のノイズ対策が施されたアイテム」についても、金属シャーシやカーボンなどを活用しており、外部ノイズ対策に配慮されているとみられるものも多い。
空き端子に挿入するアイテムが主流
以上ご覧の通り、「ネットワークオーディオ関連機器の内部で発生するノイズ、外部から侵入するノイズ、それぞれへの対策アクセサリー」は空き端子に装着するタイプばかりだ。機器をその内部・外部に分ける境界が他ならぬ端子部だからであろう。
次回は、ネットワークオーディオ関連機器同士を繋ぐLANケーブルを経由して混入するノイズ対策用アクセサリーを整理する。