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【連載】佐野正弘のITインサイト 第6回

「0円で使われても困る」とぶっちゃけた後の戦略とは?楽天モバイルの今後はどうなる

2022/05/19 佐野 正弘
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楽天モバイルが「月額0円」を廃止、新料金プラン「Rakuten UN-LIMIT VII」を発表



1GB以下であれば「月額0円」で利用可能で、どれだけ通信しても月額3,278円で利用できる「Rakuten UN-LIMIT VI」が人気だった楽天モバイル。ですが、同社が2022年5月13日に、新しい料金プラン「Rakuten UN-LIMIT VII」を発表したことで、大きな波紋を呼んでいます。

それは、要するに「月額0円で使えなくなる」からです。Rakuten UN-LIMIT VIは、1GB以下であれば0円で利用できる上、0円でも国内通話が無料になる「Rakuten Link」が使えたり、楽天市場で買い物する時のポイントが増えたりすることから、0円での運用を前提にサブ回線として使うユーザーも多かったのです。

ですが、Rakuten UN-LIMIT VIIでは月額0円になる仕組みが廃止され、同プランへの移行が始まる2022年7月1日以降、データ通信を使わない人も、最低月額1,078円を支払う必要が出てきてしまいました。楽天モバイルを月額0円で利用しているのは、スマートフォンに詳しく、SNSなどで積極的に情報発信するリテラシーの高いユーザーが多いとみられることから、新料金プランの発表を機としてSNSで楽天モバイルへの批判が噴出し、大きな騒動となったわけです。

楽天モバイルが発表した新料金プラン「Rakuten UN-LIMIT VII」は、現在の「Rakuten UN-LIMIT VI」と比べ、通信量が1GB以下であれば月額0円で利用できる仕組みが削られている

ではそもそもなぜ、楽天モバイルはRakuten UN-LIMIT VIに月額0円を導入し、そして今回そのプランを止める必要があったのでしょうか。改めて経緯を振り返りますと、そこに大きく影響しているのが、楽天モバイルのネットワーク整備と、菅義偉前首相による携帯料金引き下げ政策です。

月額0円を実現した料金プラン「Rakuten UN-LIMIT VI」、その導入に至った背景とは



楽天モバイルが、携帯電話会社として本格的にサービスを始めたのは2020年4月。当初の料金プラン「Rakuten UN-LIMIT」は、月額3,278円で自社エリア内であればデータ通信が使い放題というものでした。それだけでも料金面ではインパクトがあったのですが、同社は当時、総務省から基地局整備の遅れを何度か指摘されるなど、インフラ整備の遅れが目立っていました。そこでデメリットを補うべく、300万名までは1年間無料で利用できるという大盤振る舞いのキャンペーンによって、利用者を増やそうとしたのです。

楽天モバイルは本格サービス開始当初、インフラ整備が遅れ不利な立場にあったことから、300万名まで1年間無料で利用できるキャンペーンを実施して契約者を募っていた

ですが、同年に首相に就任した菅氏の政策により、競合他社が従来より安価な料金プランを相次いで投入。既に全国津々浦々をカバーしているNTTドコモまでもが、Rakuten UN-LIMITと同じ月額3,278円(当初)で20GBの通信量が利用できる「ahamo」を発表し、注目を集めました。その結果、インフラ面のデメリットが目立つ楽天モバイルは不利な立場に追い込まれ、「無料キャンペーンが終わる2021年4月以降、楽天モバイルの解約が続出するのでは」という声も少なからず挙がっていたのです。

菅前政権の携帯料金引き下げ政策により、NTTドコモが「ahamo」を提供し大きな話題となるなど、価格面での楽天モバイルの優位性が大きく失われることとなった

そこで2021年1月、楽天モバイルが打ち出したのが、現在のRakuten UN-LIMIT VIです。使ったデータ通信量に応じて料金が変わる段階制へと仕組みを変更し、1GBまでであれば月額0円で利用できる仕組みを新たに導入。無料キャンペーンが終了したユーザーの解約を防ぐというのが、月額0円の狙いだったといえるでしょう。

Rakuten UN-LIMIT VIに月額0円の仕組みが導入されたのは、無料キャンペーンが終了したユーザーを他社に流出させない狙いが大きかった

月額0円の廃止から見て取れる、同社の狙い



ではなぜ、現在のタイミングで月額0円を終了するのかといいますと、そこにもネットワーク整備が大きく影響しています。楽天モバイルは、その後急ピッチで4Gの基地局整備を進め、半導体不足の影響などがありながらも、2022年4月には人口カバー率97%を達成。当初予定のおよそ4年前倒しでエリアカバーを拡大しており、まだ大手3社に対抗できるとは言えませんが、一時と比較すれば、だいぶ利用できるエリアが広がったのは確かです。


楽天モバイルは課題となっていたネットワーク整備を急加速、2022年4月には人口カバー率97%を超えるに至っている
一方、楽天モバイルはそれだけ短期間のうちに大規模な投資をしていることから赤字幅が急拡大、楽天モバイルの親会社である楽天グループの経営にも大きな影響を与えるようになってきました。そこで楽天モバイルは、2022年第1四半期をピークとして楽天モバイルの赤字を縮小させる方針を打ち出し、当初から予定していた2023年度の黒字化実現に向け、収益確保を重視するようになってきました。

実際に楽天モバイルは、自社エリアが整備されていない場所をカバーしていたKDDIのネットワークとのローミングを、2021年10月より39都道府県で順次終了させることを明らかにするなど、大きなコスト要因となっていたローミング終了に着手。それに続いて着手したのが、Rakuten UN-LIMIT VIIの提供による「月額0円」の廃止というわけです。


エリア拡大の一方で、赤字幅も大幅に拡大。それゆえKDDIとのローミング終了を急ぐなど、ここ最近赤字解消に向けた動きを加速している
楽天モバイルの代表取締役会長であり、楽天グループの代表取締役会長兼社長・最高執行役員である三木谷浩史氏も、新料金プラン発表後の楽天グループ決算説明会にて、「0円でずっと使われても困っちゃう、っていうのがぶっちゃけの話」と話していました。新料金プランは、楽天モバイルの収益改善が大きな狙いであることが伺えるでしょう。


楽天モバイルの三木谷氏は、月額0円の廃止は収益改善が狙いである旨の発言をしている
もっとも楽天モバイルは、これ以上月額0円のユーザーを増やしたくはないものの、既存ユーザーから不満が出ることを考慮し、既存ユーザーがRakuten UN-LIMIT VIを利用し続けられる仕組みの用意も検討したそうです。ですが、新しい料金プランより安価なプランに利用者を留めることが、ユーザーの囲い込みを禁止する電気通信事業法27条に抵触する可能性があることから、断念したとしています。

ただ、楽天モバイルの経営がどうであれ、月額0円から利用できるプランに関しては、総務省の有識者会議でも競合他社などから「価格圧搾ではないのか」と批判されていました。それだけに、MVNO大手であるインターネットイニシアティブの代表取締役社長の勝栄二郎氏が、「止めたのは正しい方向だと思う」と話すなど、低価格帯で争っている競合他社にとっては歓迎すべき出来事だったともいえます。

他社への流出を防げるのか、今後注目されるユーザー数の推移



とりわけ、この動きを歓迎しているのはKDDIでしょう。KDDIも月額0円から利用できる「povo 2.0」を提供しており、月額0円のサブ回線を求めるユーザーが、楽天モバイルから乗り換えることが期待されるからです。

月額0円での提供が価格圧搾になるのでは、という懸念はpovo 2.0にも向けられているのですが、povo 2.0は0円では実用性が低く、お金を払って必要なサービスを追加する「トッピング」をすることで、快適に利用できるという仕組みです。これは諸外国では、一般的な「プリペイド方式」に限りなく近い内容で、Rakuten UN-LIMIT VIとはコンセプト自体に大きな違いがあります。

そうしたことから、KDDIの代表取締役社長である高橋誠氏は、povo 2.0を「止める理由がない」と話し、今後も月額0円を継続する意向を示しています。povo 2.0や、月額数百円程度で利用できるようになったMVNOのサービスが、楽天モバイルに失望したユーザーの受け皿となってどこまで契約数を伸ばせるか、注目されるところです。


KDDIの高橋氏は、楽天モバイルの発表後に実施された決算説明会で、povo 2.0を止めるつもりはないと発言している
ただ、実際にどれだけのユーザーが流出するのかという点については、見えない部分でもあります。なぜなら、よくよく考えると、月額1,000円近くの料金を支払って楽天モバイルを継続利用することにも、楽天市場でのポイント付与が従来より増える、他社の通話定額オプションよりも安価にRakuten Linkで国内通話し放題など、一定のメリットが存在しているからです。それらのメリットとデメリットを天秤にかけた結果、継続利用する人がいないとは言い切れないでしょう。

そうしたことから、三木谷氏も「ユーザー離脱に関して、ゼロではないがほとんどの人が残って頂けると思っている」と、ユーザーの継続利用に自信を示しています。その自信が果たして実際の結果につながるかどうか、今後のユーザー数の推移に注目したいところです。

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