レコード再生の盲点を突く!“ノイズポンプ”シリーズ最新作、「フォノアレイ」の実力チェック!
アナログプレーヤーとフォノイコライザーをつなぐフォノケーブル。そのアース線に対策を施す画期的なアイテム「PhonoARAY(フォノアレイ)」が注目を集めている。フォノのアースライン上に発生するノイズをポンプのように吸い上げる前代未聞のアイテムである。
英国・CHORD COMPANY(コードカンパニー)が長年にわたり培ってきたアレイテクノロジーの集大成とも言えるフォノアレイは、オーディオアクセサリー銘機賞2025のグランプリ、並びにアナロググランプリ2025のアナログアクセサリー部門でも見事受賞を果たしている。その実力をレポートする。
コードカンパニーの集大成、この形状には必然性がある!
英国コードカンパニーからアナログプレーヤー専用のノイズポンプとして「フォノアレイ」が登場した。原理は一連のノイズポンプ・シリーズと同じだが、機器や電源などの空き端子に挿すプラグではない。どうやってアナログの超微弱信号を汚すノイズを吸収するのだろうか? そんな疑問を持ちながら、同製品を取り扱うアンダンテラルゴを訪問することにした。
まずこの形とサイズ。大きなかまぼこ型でグランドアレイの10倍くらいありそうだ。専用アースケーブル付きで、フォノ伝送間のアースに接続して使う。「本体にプラグを付け、フォノイコに直に挿せればどれだけスムーズなことか」とは思うが、この形、方式には大いなる必然がある。詳しくはのちほど……。
試聴のために用意されたのはnaim audio(ネイムオーディオ)の小粋なプリメイン、復刻版の「naim50」(日本では未発売)とリンのシステムである。テストはアナログプレーヤー「LP12」とフォノイコライザー「UPHORIK」間で行った。リンのシステムはよりアキュレートにオーディオ機器としてのクオリティがアップ。ネイムはリラックスして雰囲気よく音楽を楽しむ感じになる。
フォノアレイの共通の効果としては、明らかに静けさの次元が違う。息をのむほどの静寂と生々しい実在感を引き出す。シャンティの『ボーン・トゥー・シング』は冴えた高音域で、透明感溢れるクリスタルボイス。ギターの余韻も実に深いのだが、汚れのもとがすべて消し飛んで、空間のすみずみまで立体音場が広がった。
クラシックはアンネ=ゾフィー・ムターの室内楽をかけたが、フォノアレイなしの混濁した状態から、歪み感がぱっと消えて分離が鮮明に。ハーモニーも美しくなる。ヴァイオリンのソロがきりっと立つ感じで、裏の旋律がどう動いて音楽を表現してるかまでわかるのだ。聴いていて楽しくなる。
アームはノイズに対して“裸の王様”状態
ノイズポンプ・シリーズは、ケーブルのノイズ吸収技術であるアレイテクノロジーをベースに開発されたものだ。ケーブルの反射対策に端を発し、インピーダンスが急変する箇所(接続点)での高周波ノイズの撃退に作用する。
「グランドアレイ」は空き端子用のスティックで、機器の内部(電子回路)に渦巻く電磁波ノイズ吸収の専用品だ。そのノイズは機器の動作によって発生するもの。クルマでいえばエンジン音がうるさいからといってエンジンはとめられない。それと同じだ。
そもそもアナログプレーヤーの中にはエレクトロニクスの増幅器がない。自己発生するものがないからそこでのノイズはない。確かに回路はなく挿すところがない。いったいどこからどういうノイズ吸収すればよいのか?
この疑問に答えたのが最終回答のシリーズ第4弾フォノアレイだった。さすがにアラン・ギブ社長が自ら手がけただけのことはある。ノイズポンプを知り尽くしたノウハウが活かされた形だ。開発にはこれまでの2倍から3倍の期間を要したそうだ。
そのカギはトーンアームだ。アームそのものをアンテナとして、
アナログ再生に関しても電磁波対策が必須
もうひとつは信号の微弱さである。ピックアップされる信号はCDの1万分の1程度。アナログプレーヤーにははるかにスペックの高いものが必要となる。さらに生活環境の変化に合わせて、アナログ再生に関してもデジタル再生と同様に電磁波対策が必須となる。
以下はフォノアレイのつなぎ方の解説図だ。フォノケーブルのアース線やシャーシのアース線と、フォノイコのアース端子との間に接続して使用する。両端の端子は内部で直接つながっており、アレイ線などの素子も接続されているわけだ。フィルターや回路ではないので念のため。
最後にケースだが、しっかりした箱に入れれば済む話ではない。以前試作機も見せてもらったが、ここからの進化に驚いた。ぶ厚い切削のアルミ材を採用。内部のシールドとともに素子を外部ノイズから保護してくれる。徹底したメカニカルアイソレーションを追求すべく、振動吸収に優れた素材で満たされている。最終的にケースに入って出来上がるまで2年〜2年半はかかったそうだ。
生命力とみずみずしい表現力が感じられる
最後に改めてリンのフルシステムで、パールマン指揮の『チャイコフスキー:ヴァイオリン協奏曲第5番』を聴いた。消え入るような哀愁感をたたえつつ、起伏の激しい厳しい音源だ。
フォノアレイがノイズフロアをぐ〜んと下げ、S/Nは天井知らず。さらにローレベルでの鮮度や分解能といったものが強化され、火の出るようなオケと超絶技巧の独奏ヴァイオリンのかけあい。そのリアリティが眼前に展開された。心から感動できる、録音年代を思わせない生命力とみずみずしい表現力だ。
最後はパワフルなジャズで、モダン・ジャズ・カルテットの『ピットイン・ライブ』だ。定番の「リカード・ボサノバ」はフォノアレイを付けると付けないとでは大違い。熱量がハンパなくエネルギッシュに音が飛び出してきた。2管プレーヤーの立ち位置や、スティーブ・ガットのドラムパーツはマイクの位置までわかる。これはもうフォノアレイを外せない。
一週間の貸し出しも可能なので、まずは自宅のアナログプレーヤーでぜひその効果を体験して欲しいものだ。
(提供:アンダンテラルゴ)
本記事は『季刊・アナログ vol.87』からの転載です
