アップルとAnker、“音が良い”USB-Cケーブルはどっち? AirPods Maxの有線接続で検証
ついにというべきか、アップル「AirPods Max」(第2世代モデル)が、USB-C接続による有線でのロスレス再生に対応した。

その概要、音質、使い勝手については、山本敦氏によるレポートで紹介されているので、ここでは概要を記す程度にとどめる。
AirPods Max(第2世代モデル)を使い、USB-C接続によるロスレス再生を楽しむには、まずAirPods Maxのファームウェアを最新にしておくことに加え、iOS 18.4、iPadOS 18.4、macOS Sequoia 15.4以上が必要になる。
準備が整ったら、あとはかんたん。デバイスとAirPods MaxをUSB-Cケーブルで接続すると、特に設定を行わなくてもUSB-Cによる音声伝送が行える。

USBケーブルでの接続時にはデバイスの自動切り替えが起きず便利
ところで、USB-Cケーブルで接続していると、iPhoneとiPad、Macを同時に使っている場合でも、いわゆるデバイス間の音声の自動切り替えが起きない。これが地味だが使いやすいのだ。
iPhoneやiPad、MacとAirPodsの自動切り替えは、ふだんは非常に便利な機能だ。だから基本的にはオンにしている。ただ、たまに意図していない切り替えが起こることもあり、デバイスをつなぎ直さないときもある。これがちょっとしたストレスだ。USB-Cケーブルを接続すれば、こういった意図せざる切替えが起きず、そのデバイスの音声が優先されるので安心だ。
もちろん、ほかのデバイスから手動でBluetoothの接続をAirPods Maxに切り替えると、USB-Cケーブルからの音声入力は停止し、切り替えたデバイスからのBluetooth音声が再生される。
一点注意したいのは、筆者の私物のiPhone 16 Pro Max(iOS 18.4)との接続時には、USBオーディオ接続時とBluetooth接続時の音量差が非常に大きいということ。具体的にはBluetooth接続の音の方が大きい。USBオーディオ接続で音声を再生しながらケーブルを抜くと、自動的にBluetooth接続に切り替わるが、このときに音量がドーンと大きくなる。

音の雰囲気は変わらないが、ロスレス伝送ではもちろん音質が向上する
さてUSBオーディオ接続時は、最大48kHz/24ビットのロスレス音声が伝送される。山本敦氏がレポートしていたとおり、Bluetooth接続のAAC接続時と比べても、音の印象はあまり変わらない。
ワイヤードでのロスレス伝送とAACではデータ量が全く違うので、もっとわかりやすい違いがあってもおかしくないと思う一方、Bluetooth接続時と音の方向性があまりに変わってしまうと、体験の一貫性が損なわれる。こういったことから、あえて同じように感じられるようチューニングしているのかもしれない。

当たり前のことだが、逆にBluetoothでのリスニングからUSB-C接続に切り替えると、明らかに音質が良くなる。そのあたりに転がっているUSB-Cケーブルをつなぐだけで、AirPods Maxの音が一段階グレードアップすることになる。AirPods Maxをお持ちの方は嬉しいアップグレードだろう。
USB-Cケーブルを変えたら音は変わるか? 実験してみた
…と、ここまでは山本敦氏のレポートと同じようなことしか書いていないので、ここからは少し踏み込んで、デバイスとAirPods Maxを接続するUSB-Cケーブルを変えると音は変わるのかという、当サイトならではの実験をしてみた。
ハイファイオーディオになじみの無い方は、「USB-Cケーブルで音が変わるわけないだろ」と思われることだろう。逆にハイファイオーディオファンは、良くなるか悪くなるかは別として、「何をしても音は(大なり小なり)変わる」という感覚を持っている方が多い。
筆者はもちろん後者の立場だが、今回の実験で音の違いが知覚できるかどうか、やってみるまではあまり自信がなかった。
だが、手持ちの、決してオーディオグレードとはいえないUSB-Cケーブルで聴き比べてみても、はっきりとわかるレベルで音の違いが表れた。
まずはアップル純正のUSB-Cケーブルで、先ほどと同じSilk Sonic「Leave the Door Open」を再生。再生音を記憶してから、AnkerのThunderbolt 3ケーブルにつなぎ替えたら、全体的に音が太く、力強く変化した。けっこうな違いなので、確認のため、もう一度アップル製ケーブルに差し替えてみると、変化に確信を得た。アップル純正ケーブルの音は繊細なのだが、少し迫力に欠ける印象。力強さはAnkerの方が優る。
他のケーブルも試してみようと、UGREENのケーブルに交換した。音質傾向はアップル純正に似ているが、ダイナミックレンジは純正より少し広く感じる。純正とANKERの中間のようなキャラクターだろうか。

今回はこの3モデルしか試していないが、ケーブルごとに音の個性が表れることがはっきりわかった。USB-Cが一般化してきたいま、複数のケーブルが家にあるという状況は多いはず。ぜひケーブルを抜き差しして実験し、ケーブルごとの音の違いを確かめてみてほしい。
長尺でオーディオグレードのUSB-Cケーブルはまだあまり多くないが、ゾノトーンなどが販売している。オーディオグレードケーブルは通常のUSB-Cケーブルよりはるかに高価だが、線材やその巻き方、シールド、シースなど随所に工夫が施されている。通常のUSB-Cケーブルで物足りない方は、こういったハイファイオーディオの世界に足を伸ばしてみるのもおすすめだ。