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【特別企画】熟慮を重ねた回路構成で性能を向上

伝統の銘プリアンプを現代風に刷新。オーディオ・ノート「M7 Heritage」が打ち出す躍動のサウンドを聴く

2022/10/25 石原 俊
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オーディオ・ノートの歴史と共に歩んできた伝統のプリアンプ「M7」。それを現在の技術でさらに磨き上げたモデルが、ここに紹介する「M7 Heritage」である。躍動的な音のイメージをより鮮明に打ち出した現代の「M7」、その実力を石原 俊氏が体験する。

AUDIO NOTE プリアンプ「M7 Heritage」価格:4,565,000円/税込 photo/田代法生

高品位なパーツ群を採用。熟慮を重ねた回路構成



オーディオ・ノートは高級真空管アンプを中心に製品を展開しているメーカーである。本機は同社のセカンドクラスのプリアンプだ。「M7」という型番のモデルは同社が1976年に創業した頃から連綿と作り続けてきた機種で、1980年代後半に「M7 TUBE」に進化し、同時期に発売された「ONGAKU」という211シングルのパワーアンプとともに名声を博してきた。海外、特にイギリスにファンが多いという。

そんなM7 TUBEの躍動的な表現を維持しつつ、現代の技術でさらに磨き上げたのが「M7 Heritage」だ。試聴を重ねて選び抜かれた高品位なパーツ群と、熟慮を重ねた回路構成によって基本的な性能を向上させたことで、現代のシステムに組み込んで使っても何らの違和感がないと同社の技術陣は胸を張る。

底板を開け内部を見る。フロントパネルを手前にして右側にあるのがフォノアンプのモジュールだ。手組み配線だがプリント基板並みの信号経路の短さを誇っている。モジュール直近にデカップリングコンデンサーを左右独立で配置することでシグナルループを極小化している。

本機の内部。向かって中央にライン回路、右側にフォノアンプ回路、左側に電源回路とヒーター回路を配置。同社独自の銀線などを駆使し、完全に社内でアッセンブルされる美しい配線技術も大きな魅力

初段の真空管はECC803S(12AX7)によるSRPP(シャント・レギュレーテッド・プッシュプル)回路だ。2段目のプレートフォロアと3段目のカソードフォロアには6072(12AY7)を使用している。これによって低インピーダンスと極小のRIAA偏差が達成されたという。

中央にあるのがラインアンプのモジュール。これまた美しい手組み配線で、これまたプリント基板並みに信号経路が短い。ここでもモジュール直近にデカップリングコンデンサーを左右独立で配置してシグナルループを極小化している。

使用真空管は6072(12AY7)×4で、プレートフォロアとカソードフォロアを直結することで500Ωの出力インピーダンスと18Hzのカットオフ周波数(20kΩ負荷時)、そして強力なパワーアンプドライブ能力を得ることに成功した。

左側にあるのが電源部。整流は整流管EZ81(6CA4)が司る。自社製の電源トランスは試聴を重ねることで適切な制振処理がなされた。シャント型のヒーター回路はDC12.6V点火とし、91,000μFにも及ぶコンデンサー群によりリップル成分を排除している。

本機のリア部。入力端子はRCA×3系統とXLR×1系統のほか、MM専用のフォノ入力(RCA)を2系統装備。出力端子はRCA×2系統とXLR×1系統を搭載

限りなく広大なレンジ感で音楽を聴くのが楽しくなる



本機の操作感は極上だ。ノブ類の感触は極めてシルキーで、触るのが生理的快感ですらある。まずはCDを聴いた。真空管・ソリッドステートを問わず一流の音である。

音質は硬からず軟らかからずで、軟らかだと思って聴いていると銀線を多用しているからか、銀らしいキリリと締まった音にハッとさせられ、硬いと思って聴いていると、ピアノの優しいタッチの心がほっこりする。もちろんf特性・D特性ともに超ワイドレンジで、強い音が来てもたじろぐことはなく、弱い音は限りなく無音に近い状態まで拾いきる。

音像には輪郭線がない。音像はよく締まっているが、ギチギチに締め上げているわけではなく、抜群の分解能ではらりとほぐれる。音場は限りなく広く、スピーカーのはるか後方にまで広がっている。音楽的には中立的というか、介入型とか客観型という分類をするのが馬鹿らしくなるほど音楽を聴くのが楽しい。

ジャズは極めて上品で、荒々しいセッションも優しくキレイに表現する。しかもエネルギー感がたっぷりとあるので、荒々しさのようなものも認識させてくれる。ブラスセクションもさることながらリズムセクションの表現がすばらしい。ピアノは明晰で、ドラムスやベースは最低域までズシーンと沈み込む。

ヴォーカルは端正だ。声が音場の中央でキレイに結像し、優しい歌が聴覚に流れ込んでくる。発音・音程ともに良好で、歌詞の意味が自動的に理解できるようなイリュージョンも味わえる。クラシックはずばりオーケストラの描き方が巧い。

最後にアナログレコードを聴いた。端的に申し上げると、本機のフォノイコライザーは極上である。価格は極めて高いが、投資に見合った喜びをもたらすプリアンプである。

(提供:オーディオ・ノート)


本記事は『季刊・analog vol.77』からの転載です。

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