アナログレコードのEQカーブの謎に迫る

こんなカーブに誰がした?〜麗しきイコライザーカーブの世界〜【第1回】

和久井光司

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2019年04月18日
近年のアナログブームによって注目を集めるアナログレコード再生。幅広い世代の関心を集め、各アーティストのアナログ盤のリリース情報も毎月のようにニュースが入ってきている。この様な状況の中で、過去の名盤にもより注目が集まり、高品位なアナログレコード再生を楽しむためにイコライザーカーブに注目が集まっている。

これまでは、ほとんどの再生装置において、RIAAカーブで再生するのことが一般的であったが、本来は録音年代やレコード会社によって独自のイコライザーカーブが設定されていた。現代では、その設定値を自由に可変できるモデルが登場している。

現在、オリジナル盤の再生にこだわりを持つ和久井光司氏が、さまざまなレコードを用いてイコライザーカーブの検証をしている。プロのミュージシャンとして多数の録音に携わる同氏の視点によるレビューを数回にわたりお送りしていくので、ぜひお楽しみいただききたい。


■「ストーンズのオリジナル盤て、本当にこんな音だと思う?」

とあるマニア宅で経験したイコライザーカーブの真意を探るべく、小社試聴室で事前試聴も行った(この時はJOPLIN MkIIを使用)

アナログレコードのイコライザーカーブのことは20年ぐらい前から知っていた。

当時、ジャズやロックのオリジナル盤を集めていた先輩の先輩(開業医でギター弾きでオーディオ・マニア)が、「ぼくが研究してきたことの答えが見えてきたから、オリジナル盤の音にはうるさい和久井くんにウチのシステムでレコードを聴いてもらいたいんだ」と言ってきた。「面白そうな話ですね」と直接の先輩(医者でギター弾き)と一緒に出かけると、酒宴の途中で現れた小学生の娘さんに、一千万ぐらいかけて揃えたオーディオで〈踊るポンポコリン〉をかけてやったりしている。もちろん爆音でだ。

私は先輩の先輩のことはよく知らなかった。彼が会員になっている文化交流会で、「ビートルズがいかに文化的か」を話してくれ、と言われて講演めいたことをしたことがあったのだが、彼がそれほどのオーディオ・マニアだということも、ジャズやロックのオリジナル盤を集めていることも、家に招かれる段になって初めて聞かされたのだ。私は「マニア」と呼ばれる人たちが苦手だったりする。ロックのオリジナル盤はたくさん持っているが、それはミュージシャンが決めたサウンドに最も近い音が入っている盤だからであって、たとえば弾き語りのフォークなどはギターの爪弾きよりも、スクラッチ・ノイズの方が大きかったら音楽が台無しだと思っている。そういうのはCDでもいい。だから先輩から、「あの人はブルー・ノートのオリジナル盤を何十枚も持っている」と聞かされて、ちょっとビビっていた。それが〈踊るポンポコリン〉でほぐれ、私たちは楽しくレコードを聴くことになったのである。

先輩の先輩は、まずブルー・ノートの盤を何枚か聴かせ、それからビートルズやローリング・ストーンズのオリジナル盤モノラルを、普通にかけていった。そして、言ったのだ。

「ねえ、ストーンズのオリジナル盤て、本当にこんな音だと思う?」と。

「各レコード会社がマスター・テープをつくるときの基準がそれぞれにあるとしたら、どうなる?」

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