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ヘッドホン祭に参考出展

3名の評論家が聴いた! ゼンハイザー密閉型最上位「HD 820」ファーストインプレッション

2018/04/26 岩井喬/野村ケンジ/山本敦
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ゼンハイザーが今年1月のCESで初公開した密閉型のフラグシップヘッドホン「HD 820」。大注目を集める本機が、いよいよ「春のヘッドフォン祭2018」に参考出展される(関連ニュース)。

密閉型のフラグシップヘッドホン「HD 820」

「HD 820」はそのモデル名が示す通り、同社ヘッドホンの最上位となる開放型ヘッドホン「HD 800S」および「HD 800」の密閉型バージョン。ドライバーユニットに“Ring Radiator”トランスデューサーを搭載。同社は「従来の密閉型では不可能だった自然で広大な音場や透明度を実現した」としている(関連ニュースインタビュー記事)。

イヤーカップにガラスカバーを採用していることも音響上、そしてデザイン上の大きな特徴だ。凹面がドライバー後部と、その吸音構造に対して放射される音を適切に反射し、まるで開放型のように、効果的に音波を減衰できるとしている。

イヤーカップ部に採用したガラスカバー。音響上もデザイン面でも大きな特徴となっている

金属製のヘッドバンドや内側に配置された独自のダンピング素材、マイクロファイバー製のイヤーパッドなども特徴。ケーブルはシルバークラッドOFCケーブルを採用。φ4.4mm 5極バランス端子ケーブルも同梱される。

ヘッドバンドは金属製を採用

内側には独自のダンピング素材を使用している

ヘッドホン祭でも熱い注目を浴びることは間違いないHD 820。本稿では、このヘッドホンをいち早く聴いた評論家・ライター3氏のコメントを紹介する。※掲載順は五十音順

■岩井喬氏のファーストインプレッション

アイコニックなパーツデザインはHD 800/HD 800Sを踏襲しており、ハウジングのステンレスメッシュ部はこれら2機種の意匠を取り入れ、成形で表現している。イヤーカップ全体をボアアップしたかのようなフォルムだが、装着性はHD 800/800Sと大きく変わらず、遮音性・防音漏れ性能はともに良い印象だ。

パーツデザインはHD 800/HD 800Sを踏襲しつつ、ハウジングのステンレスメッシュ部は2機種の意匠を取り入れている

HD 800/HD 800Sを密閉型として仕上げたという言葉通り、装着して初めて音が出た瞬間に感じたのは、HD 800系統特有の音場の広さだ。同時に中高域にかけての凛としたエッジを感じさせる、上品な輪郭表現も実感できた。

自宅環境でHD 800/HD 800Sの両機を使っていることもあり、HD 820の存在は大変気になるところだった。だが密閉型となると、HD 800の心地よさのポイントでもある自然な開放感が失われてしまうのではないかと、少々心配していたのだ。

実際のところはそうした心配は無用だった。誇張感が少なくすっきりとした、開放型を思わせる清々しい音場が展開される。5.6MHz音源では臨場感も高く、個々の楽器がS/N良く浮き立ち、アタックのクリアさも際立っている。

音場は広大で、音像のボトム感も密閉型ならではの厚みがあり、リアルな存在感を得られる。ボーカルの肉付きも良く、艶めかしい口元の艶感をしっとり、そしてキレ良く描き出す。リヴァーブの余韻も澄んでおり、音像の動きも的確に感じ取れた。シームレスかつ瑞々しい描写性はHD800/HD 800S譲りで、サンプル機ながら完成度の高さを実感できた。

■野村ケンジ氏のファーストインプレッション

一聴して「非常に良い」と感じた。ここまで音の澄んだ密閉型ヘッドホンは聴いたことがない。さすがゼンハイザーと、チューニングの妙を感じた。

一般的に密閉型の高級ヘッドホンは、それほど数が多くない。それは開放型の方が音色の傾向として、整合性を取りやすいからだ。密閉型はエネルギー感があっても、歪みが付帯しやすいという傾向がある。だがHD 820にはこの歪みが全くといっていいほど感じられず、なおかつ密閉型の良さである、音がぐいぐい前に出てくるエネルギー感が得られる。

密閉型ながら全く歪みなく、かつエネルギー感も得られる

HD 800やHD 800Sと音色は変わっていないが、エネルギー感や躍動感が増している。ボーカルが前に出てきて、ピークの伸びも同時に感じられる。「本当の高級密閉型は凄いな」と素直に思わされた。

装着感についても、イヤーパッドの柔らかさが適度で、違和感がなかった。さらっとした触感で、着け心地はむしろHD 800/HD 800Sより上がっているのではないだろうか。

イヤーパッドは適度な柔らかさを持つ

さらっとした触り心地で、高い装着感を実現している

密閉型ヘッドホンのファンも多いが、そういう方が音をグレードアップしたいと思った時、本機は格好の存在となりそうだ。大変価値ある製品であり、他社製の密閉型ヘッドホンをお使いの方も、ぜひ一度は聴いてみることをオススメする。

■山本敦氏のファーストインプレッション

HD 800が登場した2009年から、もうすぐ10年が経つ。その年月の経過にふさわしく、HD 820も「現代の音」と感じられる。また密閉型にすることで、使い勝手もより高まった印象だ。

私はこのHD 820を1月のCESで聴き、その時にも大きな感銘を受けたが、今回発売を目前にしてさらに進化したと感じた。一言で言うとまとまり感が出て、生っぽさがさらに増したのだ。

CES発表時よりもサウンドは進化、まとまり感が増した

音質は、密閉型の良さがよく出ている。それが分かりやすいのは、アタック感がしっかり感じられるところだ。

高域の伸びもハイレベルで、開放型の「HD 800S」に迫るほど。単に明瞭な高域が聴けるだけでなく、他の帯域とのスムーズなつながりが素晴らしい。これによって音のリアリティが格段に増している。

中域のリッチさも印象的だ。アレサ・フランクリンのボーカルを聴くと、声の実在感に驚かされた。アコースティックギターの音で確かめても、音の厚み、実在感をあますところなく伝える能力を実感できた。

デザインも魅力的だ。ハウジングにガラスがあしらわれているのがとても未来的で、ワクワクする。高級ヘッドホンでありながら未来を感じさせる。

ハウジング部のガラスが未来的なデザインに仕上がっている

ゼンハイザーのフラグシップヘッドホンは、これまで開放型の「HD 800」や「HD 800S」が存在していたが、今回のHD 820は、密閉型になったとはいえ全く違うヘッドホンになったという感じがしない。一言で言うと「HD 800の密閉型の音がする」のだ。



以上、3氏の「HD 820」ファーストインプレッションをお届けした。いずれも、そのポテンシャルを高く評価しているようだ。実際に音を聴いてみたいという方は、ヘッドホン祭で確かめてみてはいかがだろうか。

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