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ワイド化した精悍な外観と濃密で力強い音を実現

進化する伝統 ー ラックスマンの真空管セパレートアンプ「CL-38uC/MQ-88uC」を聴く

2018/03/28 山之内 正
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真空管アンプは根強い人気があるが、その多くはプリメインアンプであり、セパレートアンプを選ぶのはかなりマニアックなオーディオ愛好家に限られる。だが、性能を突き詰めると設計に余裕のあるセパレート型の方が明らかに有利だし、プリメインと同様に使い勝手が良く、導入のハードルがそれほど高くない製品も存在する。

「CL-38uC」

「MQ-88uC」

ラックスマンの「CL-38u」と「MQ-88u」はそんな製品の代表格だ。2011年の発売以来、人気に陰りを見せないのは、真空管アンプの王道を行く基本構成と外見を継承しつつ、現代の真空管セパレートアンプにふさわしい質感の高いサウンドが楽しめるからだろう。

その人気ペアが6年ぶりにモデルチェンジとなり、「CL-38uC」「MQ-88uC」として生まれ変わった。3年前に限定モデルが発売されたが、今回は入出力を充実させたほか、筐体の横幅を従来の400mmから440mmに拡張するなど、更新は多岐に及んでいる。「カスタム」を意味すると思われる「C」の文字が末尾に加わったのみとはいえ、ワイド化されて精悍な印象を獲得した外見も含め、進化の中身は決して小さくない。

JJ製真空管を使用。定番モデルを細部までブラッシュアップ

具体的に見ていこう。CL-38uCとMQ-88uCに共通するのは、真空管メーカーをスロバキアのJJに統一したこと。基本性能と寿命が安定していることが選択の理由だという。CL-38uCはトランスを介したバランス入力を新設し、ソースコンポーネントの接続方法に選択肢が増えた。各ステージにSRPP構成を採用し、計4基のMCトランスを積むフォノイコライザー回路を内蔵する点は前作と同じで、ECC83Sを3本、ECC82を5本という真空管の数も変わらない。ただし、メイン基板と電源回路の間隔が大幅に広がるなど、筐体の拡大で生まれた余裕は音質改善につながる。

真空管メーカーをスロバキアのJJに統一

筐体のサイズが大きくなったことでメイン基板と電源回路の間隔も拡大。この余裕が音質改善につながる

MQ-88uCはKT88を3極管接続で使用したプッシュプル構成を踏襲し、25W+25Wの出力を確保。今回から出力端子を4/8/16Ω用に独立させ、組み合わせるスピーカーごとに最適なインピーダンスマッチングを実現しており、機能の拡張として注目したい。なお、ダイレクトと可変の2入力を用意する点は従来と変わらない。

4/8/16Ω用に独立した出力端子を装備

また地味な変更なのでなかかなか気付きにくいのだが、シャーシ外装の仕上げを前作のブラックからダークブラウンに変更している点も見逃せない。もちろんCL-38uCのウッドケースとの相性は抜群で、トランジスターアンプでは真似のできない温かみのある雰囲気をたたえている。

シャーシ外装をダークブラウンに変更。ウッドケースとの相性も抜群

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