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シェル・リード線「SR-500」も試聴

サエクから登場、PC-Triple C採用のバランス対応フォノケーブル「SCX-5000」を聴く

2015/09/18 角田郁雄
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角田氏の自宅システムにSCX-5000を導入してそのサウンドを確かめる

SCX-5000を使って、愛用のレコードプレーヤーである独トランスローター社「Rondino」に取付けたSME「series Vトーンアーム」(カートリッジはマイソニック「Eminent Gold」)と、フェーズメーションのバランス対応モノラル・フォノイコライザー「EA-1000」を接続。ジョニ・ミッチェル『Mingus』や、ヴァイオリニストであるイザベル・ファウストの『バッハ無伴奏ヴァイオリン』を再生した。

アナログプレーヤーは独トランスローター社「Rondino」を使用した

フォノイコライザーには、バランス入力を搭載した管球式フォノイコライザー、Phasemation「EA-1000」を組み合わせた

まず『Mingus』であるが、ジョニ・ミッチェルが奏でる独特の開放弦チューニング・ギターのアタックと倍音の対比が鮮やかで、レンジ感がかなりある。ジャコ・パストリアスのリヴァーブの効いた深いベースも特徴だ。なかでも聴き応えのあるのが「The Wolf That Lives In Lindsey」だ。

実際にSCX-5000を使用することで変化したのは素晴らしい音場の広さで、音の透明度、濁りの少なさは格別。左に琵琶を激しくかき鳴らすかのようギターが聴け、右から和太鼓を叩くような小さなドラムスの音が聴けるが、その響きの情報量は実に豊富で、目の前で演奏されているかのような立体空間を描く。その中央にジョニ・ミッチェルが生々しく、ややエコーを加えながら定位。メロディーに従って声使いが変化する様子や、音階を紡いでいくアーティキュレーションにゾクゾクするし、中低域に厚みを持っていることにも感心する。

【試聴アナログディスク1】ジョニ・ミッチェル『Mingus』

【試聴アナログディスク2】イザベル・ファウスト『バッハ無伴奏ヴァイオリン』

PCOCCと比較しても解像度が上がり、さらに音の鮮度が高まった印象で、バランス伝送の効果により静けさも際立つ。真空管イコライザーのほど良いスウィートな音色も反映され、すっかり聴き惚れてしまった。イザベル・ファーストを聴くと、ヴァイオリンの響きのスケールが増す。姿勢を変えながら演奏するので、響きが左右に振れるのだが、その様子がリアルで、柔らかで細かな響きが空間に舞う様子も見事。解像度、明瞭度ばかりではなく、硬さのない、豊かな倍音表現ができるようになったことも分かる。

RCA端子搭載の「SCX-5000D-R」もラックスマン「EQ-500」と組み合わせて試す

SCX-5000にはいくつかのプラグコネクタータイプが用意されている。次にRCA出力コネクターを備えた「SCX-5000D-R」を紹介する。こちらは出力コネクターこそXLRキャノンではないが、SCX-5000と同様の線材とシールド構造が採用されていて、実は原理的にはバランス伝送と同じ性能を発揮する。特に私の愛用するラックスマンの管球式フォノイコライザー「EQ-500」はMC用入力トランスを搭載するので、バランス伝送になる。

RCA端子採用モデル「SCX-5000D-R」。¥58,000(税抜)。L字型のDIN端子を搭載した「SCX-5000D-R(L)」もラインナップする。

ラックスマンの真空管フォノイコライザー「EQ-500」

その音にはEQ-500の長所が反映され、ストレートかつワイドレンジで、音の立ち上がりが俊敏だ。しかも弱音が綺麗で深みを感じることはSCX-5000と同様で、EQ-500のムンドルフコンデンサーなどのパーツを生かした色濃い倍音の再現性との相性も見事だ。

PC-Triple C導体採用のシェルリード線「SR-500」も大きな効果

結局、この音、伝送特性の素晴らしさに魅了されて、SCX-5000とSCX-5000D-Rを導入した。この2つのケーブルのDINコネクターを差し替えることにより、2機種のフォノイコライザーでレコード再生を楽しむことにしたのだ。

さらに1階の部屋のヤマハ「GT-2000」のシステムでは、カートリッジのシェル・リード線もSAEC「SR-500」に交換した。レコードの音溝から音をトレースするカートリッジ出力直後の線材なので、音の変化が大きい。実際の使用では、リード線を絡ませずにL/Rの線をオープンに開いて接続するのが私の流儀。明らかに空間が広がった感じになるからだ(このリード線材はほどよく硬く、接続時にうまくクセがついて各線を絡ませずに接続できるところも良い)。

角田氏私物のカートリッジおよびシェルにリード線「SR-500」を装着したところ

試聴では、アグレッシヴな演奏のマイルス・デイビスのジャズ『Live At Plugged Nickel, Chicago』から「So What」を再生。普段使用するOFC線と比較するなら、このリード線はトランペット、サックス、シンバルの響きの鮮度が高まり、カートリッジの音がストレートに再現されている印象を受ける。強い響きであっても、柔らで細かな音の微粒子が加わった印象で、音楽の躍動感、リアリティーが増した思いとなる。音の透明度もかなり高い。これは明らかにPC-Triple C線材の効果だ。音質を極める方には、ぜひ一度「SR-500」にもチャレンジして欲しい。

リード線「SR-500」は角田氏の自宅1階のシステムで試した

【試聴アナログディスク3】マイルス・デイビス『Live At Plugged Nickel, Chicago』



今回試聴したアナログ伝送アイテムは、音質を極める中級からベテラン向けのアイテムだ。SAECは従来からアナログ再生を大切にしてきたので、そんなアナログファンが実際に欲しいと思うアイテムをよく捉えて、実現していることに好感を持った。

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