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最新版D.D.S.C.HD採用のデノン中級AVアンプ「AVR-X4000」を大橋伸太郎がレポート

公開日 2013/06/21 14:24 大橋伸太郎
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デノンの中高級機AVアンプが一新された。AVR-X4000は、AVR-4520に次ぐモデルとして登場した7chアンプ搭載モデルである。7.2ch構成の最上位という点ではAVR-3313の後継とも言える本機だが、型番を切りのいい4桁の数字に変更してきたあたりに、内容面の前進に対する同社の自信が窺える。

AVR-X4000

■デジタル部を中心に徹底的にブラッシュアップ

下位のAVR-X1000とAVR-X2000については共通する点も多かったが、AVR-X4000の場合、出力や電源の規模が違う。全ch同時の瞬発力とダイナミックレンジを確保するべく、保護回路や電源のサポートも下位に比べ周到に設計されている。また、9.2ch構成の最上位機AVR-4520とは価格で2倍以上の開きのあるが、本機はAVR-4520のデジタル回路から設計上の多くを引き継いでいる。


AVR-X4000のCPUボード部。デジタル回路全般も徹底的な見直しが行われ、DACも最新の192kHz/24bitモデルが採用された
AVR-4520との差で見ていくと、AVR-4520はDSPを3基搭載しているのに対し、AVR-X4000は2基搭載となっている。また、DACが一新され、昨季までの旭化成からバー・ブラウンになった(今季の3製品はその点で共通だ)。また、AVR-4520が192kHz/32bitを搭載しているのに対し、AVR-X4000は、192kHz/24bit対応DACを搭載する。他にも、AVR-4520は外部アンプの使用で最大11.2chまで拡張できるのに対し、本機は11.2ch分のプリアウト搭載で同時最大出力は9.2chとなっている。

加えて、デノンのサラウンド技術の中核である「D.D.S.C.HD」や「AL 24 Processing Plus」、ジッターフリー伝送技術「Denon Link HD」など、定評ある同社ならではの高音質再生技術の搭載も、本機の選択理由となるだろう。

機能面では、ネットワーク機能は192kHz/24bitのWAV/FLACファイルのギャップレス再生に対応。96kHz/24bitのアップルロスレス再生に加え、AirPlayに標準対応する。他に4Kアップスケール/パススルーに対応し、GUIもシンプルなグラフィックスに進化。先行した下位モデルと同様に、背面部のスピーカーターミナルは横一列配置の採用で結線が容易となり、さらにカラーリングで識別性を高める工夫が施された。競争熾烈なこの価格帯だけに、ユーザーベネフィット上の配慮も凝らされている。


AVR-X4000の背面端子。スピーカーターミナルが一列に配置されたことで結線のしやすさが格段に向上し、さらに端子が色分けされたことで接続の間違いも防ぐことができる
■ステレオ再生の能力の高さに驚く

AVアンプの場合、マルチチャンネル再生に照準を合わせて設計されるため、一定の販売価格の中でコストがデジタル部とパワーアンプ部に集中する。よって、アナログのステレオ音源を聴くと物足りない場合も多いのだが、7〜9chのアンプのうち2chしか使わないのだから当然といえば当然だ。

しかし、AVR-X4000はCD再生の音質が抜群にいい。アナログ入力、デジタル入力(同軸)接続を切り替えて聴いたが、どちらもFレンジの帯域バランスがよく、フラットで自然。エマール(pf)の弾くドビュシーの音色にぎらついたところがなく内省的な深い響きを湛え、その上ブリリアントで上品な倍音の光沢がある。


「ダイレクト・メカニカル・グラウンド・コンストラクション」設計により、不要振動を徹底的に排除。AVR-X4000には同社のピュアオーディオで培われた技術・ノウハウも結集されている
サラウンド収録のBDソフトはどうだろうか。7.1ch収録のBDソフト『レ・ミゼラブル』ではDACの音質のよさが改めて確認できる。本作は歌唱がセンターchに集約されるが、声がセンタースピーカーに張り付かないので、アンサンブルが良くほぐれる。アマンダ・セーフライドやサマンサ・パークスのソプラノが浮き上がるようで、透き通った可憐さが生まれる。ついにBD化されたライブの名作『ポール・マッカートニー&ウィングス ロックショー』では、バンドの楽器の立体感、ポール・マッカートニーのツアーで疲弊したボーカルの生々しい表現も確かで、聴き応えがある。

■地道な音質向上を積み上げたサラウンドは格別

DTS-HDマスターオーディオ5.1ch/96kHz/24bitで収録の新作『ニール・ヤング ザ・ジャーニーズ』はDACの贅沢な使い方が奏功しており、価格以上の音場表現を聴かせてくれる。先のパワーアンプ部の余裕と音質がサラウンドに積み上げられている。収録会場のトロント・マッセイホールが、深いディレイとリバーブで満たされていく重厚な描写は美しく感動的だ。Fレンジの広さとそれを音響的に押し広げていくパワーアンプ部の充実を同時に実感させられる。

最後に、ネットワーク経由でNASに保存したハイレゾ音源を聴いた。ノラ・ジョーンズの192kHz/24bit音源は、バックのバンドがやや奥まって定位、ボーカルの近さとの定位の対比、遠近感が絶妙だ。この辺りの脚が地に着いた音場表現の確かさはやはりDAC以上にパワーアンプ部の充実もあるのだろう。


ネットワーク再生時のGUI。192kHz/24bitのWAV、FLACや、APPLEロスレス再生、さらにはギャップレス再生にも対応している

Denon Remote Appを用いれば、スマートフォンやタブレットからの操作も可能。操作性の面でも配慮が行き届いている

ネットワーク再生時の操作でもDenon Remote Appが活躍。アートワークのサムネイルが表示されるなど、閲覧性も向上
現在、AVアンプは、アナログ・ディスクリート方式とクラスDデジタル方式が競い合う非常に興味深い状況にある。ユーザー冥利である反面、誰しも購入にあたり迷う点であろう。両者は一長一短である。クラスDデジタルは効率に優れ、一定の規模の中で全ch同時に瞬発的に大パワーを発生させやすい。

一方、アナログ・ディスクリート方式は音質の地道な改善(ファインチューニング)という利がある。AVR-X4000がまさにその見本だ。サラウンド音声も非常に優れているのに加え、ステレオ再生にアナログアンプらしい表現の懐の深さを感じさせる。ピュアオーディオアンプに比肩出来る情報量の濃いニュアンス豊かな音質である。その積み上げが、7.1chサラウンド再生時に発揮される。AVR-X4000を試聴する際は、ステレオ→ネットワーク→サラウンドの順で、必ず全てを聴いてほしい。

【SPEC】●定格出力:フロント 125W+125W、センター125W、サラウンド 125W+125W、サラウンドバック 125W+125W(8Ω、20Hz-20kHz、THD 0.08%) ●実用最大出力:フロント 165W+165W、センター165W、サラウンド 165W+165W、サラウンドバック 165W+165W(6Ω、JEITA) ●HDMI端子:入力×7(フロント×1)、出力×3 ●映像入出力端子:コンポーネント入力×2、コンポーネントビデオ出力×1、アナログ映像入力×4(フロント×1)、アナログ映像出力×3 ●音声入出力端子:光デジタル入力×2、同軸デジタル×2、アナログ入力×6(フロント×1)、アナログ音声出力×3、ゾーン2出力×1、11.2chプリアウト×1(最大同時出力9.2ch)、ヘッドホン出力×1、フォノ入力×1(MM) ●その他の入出力端子:LAN×1、USB端子(iPod/メモリー)×1、FMチューナーアンテナ×1、セットアップマイク入力×1 ●消費電力:670W (待機時0.1W<通常スタンバイ>、 0.5W<CECスタンバイ>) ●外形寸法:434W×167H×379Dmm(フット、端子、つまみ含む) ●質量:12.3kg

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