贅を尽くした設計のフラグシップ

シリーズ中でも特殊な構造の最上位機 − タンノイ“Definition”「DC10A」を聴く

鈴木 裕
2013年03月21日
■アルニコマグネットなど高品位なパーツを厳選

「DC10A」はディフィニションシリーズのフラグシップだが、スペシャルバージョン的な成り立ちを持っているスピーカーだ。デュアルコンセントリックドライバーを1発だけ使っているが、ディフィニションシリーズの他のモデルとは構造や磁石が異なっている。

DC10A

つまり、ブックシェルフ型のDC8、トールボーイ型のDC8TとDC10Tデハ、同軸ユニットであるデュアルコンセントリックドライバーには高域用、低域用のふたつの磁気回路を持たせ、トゥイーターにはネオジウム、ウーファーにはフェライトのマグネットを採用。これによって特に高域方向に再生レンジが広帯域化されているのが特徴だ。

これに対して、DC10Aでは、トゥイーターとウーファーで磁気回路を共有し、一つの大型アルニコマグネットで駆動させる設計を採っている。

この方式は1947年にデュアルコンセントリックドライバーが誕生した時のモデル「モニターブラック」で採られていた構造であり、現代に至るまで、一部のハイエンドモデルにしか採用されてこなかった。しかもアルニコマグネットは従来のものよりも3倍の磁力を持つALCO MAX-IIIを使っている。

そして、DC10A用のデュアルコンセントリックドライバーは、結果として奥行き方向のサイズが大きく、エンクロージャーの奥行きも深くなっている。具体的に言えば、DC10Tが320mmであるのに対して、DC10Aは438mmあり、箱の容積が増えたのも余裕のある低域表現につながっている。

ウーファーのクルトミューラー社特性のパルプ系振動板、トゥイーターはアルミ合金の逆ドーム型コーンで、6段階プレス法で徐々にドームを形成し、しかも1回のプレスごとに過熱して内部歪みを取り除いていたり、パッシブネットワークもパーツにこだわっているのはもちろん、摂氏マイナス190度という極低温で冷却処理するなど、贅を尽くした造りが素晴らしいスピーカーだ。

■低音の再現性が高くS/Nも良好 − 濃い情緒を感じさせるスピーカー

グリュミオーがソロを弾いているパガニーニのヴァイオリンコンチェルトを聴いてみると、コンサートホールの空気感が濃密に再現され、モンテカルロ国立歌劇場管弦楽団の、怨念のイタリアらしいオーケストラの音色感が実に魅力的だ。特に有機的なつながりがあるのだ。

ソロヴァイオリンの音もねっとりとした感触。内声部がよく鳴るのも特徴的。現代的な山下達郎の打ち込みによるポップスを聴くとS/N感が翌、再生の難しい低音のシンセベースの再現性も高い。またヴォーカルに濃い情緒を感じさせてくれるのも嬉しい。

音楽に味わいを求めたい方に推薦したいスピーカーだ。

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