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【特別企画】こだわりの「m」マーク付与モデル

“フラットな音”の魅力とは? − マクセルの新イヤホン「MXH-RF500」実力徹底解剖

公開日 2013/02/22 11:15 高橋 敦
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『フラットな音』が奏でる世界とは?

では音の印象を述べていこう。まずはまとめると、広がりのある空間性とその中での豊かな響きが印象的。またまさにフラットで突出した帯域や音色を作らず、再生のバランスに優れる。音色は柔らかさや軽やかさを巧く引き出しつつキレも良い。低音は横に太いというよりは縦に深いと感じる。

試聴を行う高橋氏

さて具体的に見ていこう。まずはアグレッシブなジャズのピアノ・トリオ作品、上原ひろみ「MOVE」で全体的な確認。ピアノの単音やクラッシュシンバルの余韻が綺麗に長く残り、響きの成分の再現に強みを持つと感じられる。カナル型イヤホンとしては比較的オープンで広がりのある音場が響きの豊かさにもつながっているようだ。

ハイハットシンバルは硬質な鋭さではなく、細やかでしなやか。それでいて音色の芯が確かでピシッとしている。それを筆頭に音色は全体に、耳に刺さる感触を強めず、ほどよく和らげて心地よいものにしてくれる。

この曲のベースは多弦ベースでより低い音域までが演奏されるのだが、本機はその音域の幅広い上下によっても音の厚みや太さがふらつくことが少なく、安定した自然な手応えを維持することも特長。マクセルのこだわる「フラット」を確かに感じられる要素と言える。

製品を装着したところ

宇多田ヒカル「Flavor Of Life -Ballad Version-」では女性ボーカルの感触を確認。例えば声を掠れさせる表現など、ボーカルの表情の豊かさへの対応も十分だ。声の手触り、ざらつきの質感も、柔らかなタッチで楽しませてくれる。

また低音の自然な厚みや深みは声に対しても発揮され、自然な肉声感がある。低音を下手に強調しているモデルだと声が太って輪郭が膨らんだり、声以外の低音が緩く広がって声をマスキングしたりで、声が不明瞭になることもある。しかし本機のフラット再生を基本とした低音は、そのような失態を見せることはない。ボーカルが主役のソースにおいても、本機のフラット志向は力を発揮する。

クラブ系の音への対応力は安室奈美恵「Wonder Woman」でチェックした。バスドラムやベースは重みではなくいわゆるビッグな響きでその存在感を打ち出す。音場のクラブ的な密集感は薄まるが、サビで音場がぱっと広がる際のその広がりは秀逸。

またギターのカッティングやボーカルのラップのエッジ感も良く、ヘヴィではないがキレのよいグルーヴを叩き出してくれる。低音強調モデルで聴く強烈なクラブ・サウンドとは異なるが、こちらも魅力的な表現だ。

マクセルがこだわるフラット志向の再現性は、この価格帯でもというか、この価格帯ではさらに際立つ。派手に強調されたサウンドも確かに面白いし刺激的だ。だけれど本当に良い音、そして聴きやすい音とは何か。それを手軽に実感できるのが、このMXH-RF500/MXH-RF500Sだ。価格以上の音を聴かせてくれる、「より良いイヤホン探しの第一歩」にふさわしい製品と言える。

【筆者プロフィール】
高橋敦 Atsushi Takahashi
趣味も仕事も文章作成。仕事としての文章作成はオーディオ関連が主。他の趣味は読書、音楽鑑賞、アニメ鑑賞、映画鑑賞、エレクトリック・ギターの演奏と整備、猫の溺愛など。趣味を仕事に生かし仕事を趣味に生かして日々活動中。

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