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【特別企画】新たなステージを切り拓くAVアンプ

DENONオーディオアンプの思想を全て盛り込んだ ー 「AVR-4520」総力レポート【Part.1】

公開日 2012/10/17 11:00 レポート/大橋伸太郎
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「AVR-4520」のサウンドをチェック − SACD、CD、そしてBD映画を聴く

試聴はD&M川崎本社試聴室と音元出版試聴室の二カ所で行った。外装色は黒。天板表面がプレーンや梨地でなくエンボス処理が施された厚手の鉄板で、見るからにエネルギッシュな音がしそうな、立派な面構えである。


DBT-3313UDとのカップリングで音質検証。レファレンスはB&W「801」
新ステージの電源部とパワーブロックの恩恵のほどを確かめるべく、SACD/CDのステレオ再生から聴いたのだが、最初の第一音で鮮度と実在感が大躍進を遂げていることがわかった。この手応えはかつてAVR-A1XVを最初に聴いた時に比肩できるが、A1XVのデジタル臭さがAVR-4520にはない。デジタル回路と構造設計に隔世の感が感じられる。音質は一言でニュートラルそのもの。透明感というと繊弱な印象を持つかもしれないが、がっしりした強さがあってのびのびと開け放たれた大きな音の眺望がここにある。

ユジャ・ワンの弾く『ラフマニノフ・ピアノ協奏曲第二番』の弦楽の鋭敏な立ち上がりと大きな音のマッスが高速で動く、胸のすくような量感描写には一種のエクスタシーを覚える。ピアノに色付きがなく全音域に透き通るような解像感がある。音の輪郭ににじみがなく鋭利なのだが、音型を細やかに躍動させ、響きを空気に馴染ませていく音場描写に生々しいリアリズムがある。

AVR-4520は400MIPSの処理能力を持つシャークの32ビット浮動演算DSPを3基搭載する。従来4桁モデルは2基使用に止まり、3基使いはあのAVC-A1HD以来となる。その結果、HDオーディオのデコード、音場補正、AL32をそれぞれ同時に独立処理できるようになり、フルに全チャンネルをAL32で動かす。


D&M試聴室にて「DENON LINK HD」による音質評価を行う大橋氏
ドルビーTrueHDアドバンスド96/24アップサンプリングでエンコードされたBD『サンフランシスコ交響楽団センテニアルコンサート』(5.1ch)でその効果を確かめてみよう。四囲の壁や天井、床を取り去り本来の規模で音場を描き出していこうとする迫真の描写力。空気に突き刺さる楽音の立ち上がりを捉まえ、電気信号としてスピーカーに叩き込む俊敏さに、細部に渡る増幅段の改良が如実に現れている。

ここで注目の「DENON LINK HD」をオンにしてみよう。音場空間がさらに広がったばかりでない。音が返ってくるその「果て」が感知されて衝撃的だ。初期反射の質感があって、今年5月に聴いたばかりのS.F.シンフォニーホールの高い天井が幻のように現れた。HDMIの弱点の一つに、演奏者の足が消える土台の心許なさがあるが、ここにはステージの実在感がある。クライマックスの金管の強奏で歪みが極微なのも心地よい。

CDのリニアPCMをHDMIで送出する場合にも音質の改善効果がある。バックにコンボを従えたジャズボーカルの場合、オフで平板だった音場描写に立体感が生まれ、ボーカルの分解能も増す。アナログ入力に近づくといえばイメージできるだろうか。

映画BD『マーガレット・サッチャー 鉄の女の涙』はセリフの肉感や、細やかにミックスされたSEの定位のよさに本機の「柔」の側面を伺わせ、時の彼方から「シャル・ウィ・ダンス」がゆったりゴージャスに鳴る奥行き表現が耳を和ませる。


高品位な4Kアップコンバート機能も搭載

さて、最後に注目の4Kアップスケーラーに触れておこう。本機でアップコンバートした映像をソニー「VPL-VW1000ES」に入力(4K 30p/24p)した。

4Kアップコンバートの映像は、ソニーVPL-VW1000ESとのペアで確認

解像度と情報量という点ではプロジェクター内蔵のスケーラーに遜色なく、一方最適化が図られた後者に比べ、最高域の伸びを抑え込まない鮮鋭感という点でアンプのアップスケーラーの映像に面白みがある。4Kアーリーアダプターに使いこなしの喜びをもたらすのも本機である。

画と音のデジタルメディアが空前の多様化と高度化を遂げた今、それを受け止めるべく、アナログ構成の深い表現力を空前のレベルに研ぎ澄まして登場したアンプがデノン「AVR-4520」である。デジタルの情報量を受け止める現時点の最良はアナログディスクリート、というデノンの確信と、それに見合った製品の完成度がここにある。



【SPEC】DENON AVR-4520 ¥346,500(税込)

●定格出力:フロント150W+150W、センター150W、サラウンド150W+150W、サラウンドバック150W+150W、フロントワイド/ハイト150W+150W(負荷8Ω、20Hz〜20kHz、THD0.05%) ●実用最大出力:フロント220W+220W、センター220W、サラウンド220W+220W、サラウンドバック220W+220W、フロントワイド/ハイト220W+220W(負荷6Ω、1kHz、THD10%、JEITA) ●周波数特性:10Hz〜100kHz ●HDMI端子:入力7、出力3 ●映像入出力端子:コンポーネントビデオ入力×3、同出力×2、アナログ映像入力×4、同出力×3 ●音声入出力端子:アナログ音声入力×7、同出力×3、光デジタル入力×2、同軸デジタル入力×2、PHONO入力×1、11.2chプリアウト×1、7.1chEXT入力×1、ヘッドホン出力×1 ●外形寸法:434W×194.5H×422.7Dmm(フット、端子、つまみ含む) ●質量:16.5kg


大橋伸太郎
元AVレビュー編集長。映画、音楽、文学など広範な知識をベースとする批評が注目を集めている。趣味はウィーン、ミラノなど海外都市訪問をふくむコンサート鑑賞、アスレチックジム、ボルドーワイン。

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