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“いい音・いい部屋”をトータルコーディネート

“音のDAIKEN”ショールームで学べる「音の良い部屋」を作るポイントとは!?

2012/09/18
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音環境を創造するトータルソリューションメーカーとして知られる大建工業。同社の東京ショールームに設置されたふたつの防音室には、「いい音・いい部屋」のための技術が凝縮されている。同社では年に数回、防音室の効果を味わえる体感ツアーを開催し、DAIKENのソリューションを体感できる機会を設けている。同社ショールームで学べる「いい音・いい部屋」作りのポイントとは!?

“音のDAIKEN”東京ショールームには、防音レベルの異なる2つのタイプの防音室が設置されている。ホームシアター専用室に最適な50dB音を低減する〈プレミアム★★★防音〉(左)と、40dB音を低減する〈スタンダード★★防音〉(右)。自分が必要とする防音性能を確認することが可能だ。また、各種建材・吸音材なども実際に体感できる。音に関するランドマークだ

■「ホームシアターを作る目的」は何なのか?


ーー まず、“音のDAIKEN”のホームシアターに対する姿勢、取り組みについてお話しください。

竹森 ホームシアターの本場であるアメリカには映画を楽しむ文化が根付いていて、「自宅に映画館をつくる」という傾向があります。要するにホームシアターは映画館のミニチュア版です。

大建工業(株)マーケティング部 竹森元史郎氏

しかし、日本のホームシアターの場合は、映画だけでなく、音楽を聴いたり、スポーツを楽しむなど、多目的な要素が部屋に求められます。ですから、日本におけるホームシアターの定義は、映画、コンサートホール、スタジアムで味わえる「感動を持ち込める空間」なのではないかと思います。

そうなりますと、住環境に制約のある日本のホームシアターでは、音環境を整えるうえでのさまざまな工夫が必要となってきます。よい音環境づくりのスペシャリストとして、機材のスペシャリストと一緒にホームシアターづくりに臨むのがわたしたちの基本的な姿勢です。

井上 さらに言うと、“日本のホームシアター”においても、昔と今では傾向が変わってきているように感じます。専用室を作って自分ひとりの趣味にとことん没頭する…という従来の楽しみ方に加えて、家族や仲間が集いやすいリビングシアターをあえて選択するというケースも増えています。

大建工業(株)建築音響部 井上直人氏

竹森 ホームシアターの導入目的が以前よりも多角的(多目的)になってきているということですね。ですので、良い機材を揃えて最高の画質・音質を追求するということももちろんですが、「その空間をどんなものにしたいのか」という、「住まい方」や「使い方」、つまりライフスタイルを考えることの重要性が高まっています。

ーー たしかにそうですね。例えばもし「部屋に友人を招いて大勢でホームシアターを楽しみたい」という人が、色々な機材を入れて画質や音質的に満足できるシアタールームを作ったとしても、あれこれ機材を入れたことで人を呼ぶスペースが削られてしまったとしたら…。

竹森 いちばん最初の目的とはかなり違ったものになってしまいますよね。せっかく良い機材を購入して素晴らしいシステムを作れたのに、その喜びもかなり小さくなってしまうのではないでしょうか。

井上 あらためて「なんのために部屋を作るのか」という目的をハッキリさせ、それを最後まで見失わないようにしなければなりません。

竹森 部屋のスペースという物理的な限界、部屋の特性構造、予算という制約が沢山ありますから、お客様のご希望されるすべてを実現させるのは現実的に難しいでしょう。そうなったときに、何を残すのか、何を捨てるのかという取捨選択を行うことになります。

ただ、その取捨選択をするためには、やりたいことのひとつひとつに対して、それが実現可能かどうかを判断する材料がなければ無理ですよね。その判断基準といいますか、部屋作りの「物差し」をお客様自身が知ること、また、そのきっかけをお客様に提供することが我々に求められているのだと思っています。

井上 例えば、最近は専用室だけでなく、前述のようにLDKなどでホームシアターを楽しむようになってきました。そうなりますと、専用室であれば左右に壁がしっかりとありますが、リビングですと、右側がキッチンかもしれない。いろいろな制約が考えられる。

そうした状況でベースになる音づくりをどうするかということで、当社のように建材メーカーとしてパーツをいろいろと持っていれば、「どの製品(建材)を」「どこに」「どのように」使えばよいのかと、パーツをチョイスして組み合わせていくことができます。こうしたことは、音の研究を重ねてきた建材メーカーである我々だからこそできることだと自負しています。

竹森 意外と見落とされているかもしれませんが、過去に我々が「防音/調音クリニック」(関連記事)で訪問させていただいたお客様のケースなどは、この取捨選択における格好の参考例と言えます。

例えばリフォームで4.5畳の部屋ふたつを繋げてシアタールームを作ったNさん(関連記事)は予算的な事情からプラン変更を余儀なくされましたし、家全体のリフォーム・リノベーションの一環として、住まいの耐震化とあわせてシアタールームも作ったMさん(関連記事)は「隣の和室と繋げて、ひとつの大きな部屋としても多目的に使える余地を残したい」というご希望がありました。

このように、リフォームやリノベーション、そして新築でも、お客様のご要望と数々の制約条件とのせめぎ合いというのは常に存在しています。繰り返しになりますが、こうしたときにどう優先順位を付けるのかという判断基準をお客様自身に持っていただけるように我々は活動していかねばならないと感じています。

<DAIKENが提案する「いい音・いい部屋作り」の3ステップ>
DAIKENでは、部屋作りを「防音/遮音」→「吸音」→「音響コントロール」という3段階で捉えることを提案している。ショールームにはその3ステップに基づいた様々な製品が展示されており、製品の効果を実際に体験できる仕組みが用意されているのだ。


【防音/遮音】
防音(遮音)はよい音環境づくりの基本。ホームシアターの音を漏らさないという目的のためだけでなく、外からの音を入れず、SN比の高い部屋をつくること、静寂な音環境をつくることを目的にしている。
 
〈プレミアム★★★防音〉の防音室では、2種類の防音ドアを2重に設置して、それぞれの防音性能、及び両者を合わせた防音性能を確認することができる 〈スタンダード★★防音〉の防音室では防音ドアと普通のドアを2重に設置。内側が一般的なドア、外側が防音ドア。それぞれの防音性能と両者を合わせた性能を確認できる
 
 
音漏れを防ぐにはサッシの2重化・3重化が必要だ。右が〈プレミアム★★★防音〉、左が〈スタンダード★★防音〉。〈プレミアム★★★防音〉は3重サッシ、〈スタンダード★★防音〉は2重サッシ。サッシはYKK APの内窓を使用 

 
換気扇も防音タイプを採用する。左が〈プレミアム★ ★ ★ 防音〉の換気扇、右は〈スタンダード★★防音〉の換気扇の防音フード

【吸音】
遮音の次に必要となるのは吸音だ。ホームシアターのメインコンテンツである映画には、あらかじめ残響等が加えられている。そのため、ホームシアターにはデッドな音環境が求められ、吸音が必須である。
 
〈プレミアム★★★防音〉の壁の様子。遮音パネル、吸音ウール、石膏ボードを2重にした上に、吸音性能の高いオトカベを設置。オトカベで幅広い帯域を吸音する

 
一般的に石膏ボード+クロスで仕上げられた天井と吸音天井材の効果を比較できる。オトテンを使ったセットの中で手を叩くと、その吸音効果の高さに驚くことだろう


【音響コントロール】
防音(遮音)→吸音の次に来るのが音響コントロール。音の味付けだ。防音と吸音で、部屋の音環境のベースをつくり、後は室内環境や好みに合わせて、各種音響アクセサリーで微調整を図ろう。
「ホームシアターグランプリ」を2年連続で受賞した音響壁材サウンドデザインウォール。〈プレミアム★★★防音〉に設置。音の響きを調整するパネルであり、5ラインアップ9モデルが用意されている。表面の化粧パネルは脱着可能なため、部屋のインテリアや音響特性にあわせて変更できる。ラインアップやカラーリングが豊富なので、目的にあわせてセレクトできる

 
両防音室に設置されているアコースティックツリー 部屋のコーナーに取り付ける新製品の中・高域吸音用の後付け音響壁材オトピタ03

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