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「秋のヘッドホン祭2008」の出展にみる

岩井喬氏がオススメする今冬の“ベストヒット・ヘッドホン”

公開日 2008/11/26 21:17 オーディオライター・岩井 喬
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audio-technica「ATH-ESW10JPN」(写真右端)
■audio-technica「ATH-ESW10JPN」
この秋、同社から発表されたばかりの新製品で、筆者も個人的に気に入っているモデル。1000台限定となる、木のヘッドホン「ATH-ESW10JPN」である。形状とスタイルは人気の「ATH-ESW9」を踏襲してはいるが、ハウジングがブラックチェリー材となり、越前漆による塗装が施された、高級感溢れる仕上げが魅力の一台となっている。ESW9と較べ、低域の解像度が向上し、締まりあるサウンドになっているが、木の豊潤な響きも充分に感じさせるバランス良い音作りがなされている。音ヌケも密閉型としてはかなり良いもので、屋外ではもちろん、室内でじっくり楽しむのにも向く、豊潤な響きを内包するモデルとなっている。今回のイベントでは残念ながら“アート・モニター”のフラッグシップ機「ATH-A2000X」を目にすることはなかったが、本機も相当健闘した内容のモデルとなっており、解像度の高いサウンドと、心地良い装着感を生む軽量なチタンハウジングや、マグネシウムフレームを用いたボディが魅力的な一台である。


ULTRASONE「PRO900」
■ULTRASONE「PRO900」
PROシリーズの最上位機種として新たにS-LOGIC plusを搭載、より自然で広大な音場の広がりを獲得している「PRO900」。プラグもノイトリック製のものを採用し、耐久力とメンテナンス性の良さを持たせている。外観上はこれまでの紺色ベースのものから黒ベースの精悍なデザインになった。これまで同シリーズが追求していた高域ディティール表現能力の高さに加え、低域の量感増強を行っている。むっちりと押し出しあるベースサウンドはこれまでのPROシリーズにはないもので、とても新鮮に感じた。この低音の量感アップはPROシリーズを使っている海外の録音エンジニアたちから寄せられた意見を中心にして反映させたものだそうである。そして本機でも充分感じられる音場の広さ、各パートの楽器の浮き上がり感の良さは同社ヘッドホンならではのもの。今後、この日お披露目された「edition8」(関連ニュース)とともに、ブランドを引っ張っていく存在になるであろう。


Klipsch「Image X5」
■Klipsch「Image X5」
すでにスピーカー・ラインナップのいくつかが国内でも販売されている同ブランドであるが、カナル型ヘッドホンのラインナップが一斉に国内で発表された。その中でもフラッグシップ「Image X10」のゴージャスなサウンドに人気が集まっているが、追って発表された下位モデル「Image X5」もバランス重視型の非常にまとまり良いサウンドが魅力の一台となっている。X10に比べ、低音チューニング機構によって多少太いサイズになっているが、それでも充分軽量でスリムなボディとなっている。中低域の無理なく伸びるサウンドは嫌味がなく、ソリッドでヌケの良いサウンドが特徴となっている。別ラインアップの“Custom”シリーズと共に、今後注目の製品群である。


CEC「HD53N」(写真左端)
■CEC「HD53N」
ヘッドホンアンプの分野では早い時期から製品を発表していた同社から、装いも新たな新製品が発表された。従来機よりも奥行きが増したが、新たにバランス型ヘッドホンにも対応できるようにした「HD53N」(関連ニュース)に注目が集まっていた。前モデルの「HD53R Ver.8.0」に較べ、重心が下がり、押し出し感が増したサウンドになっているようであるが、SN感も向上し、より質感表現が滑らかになっているようである。国内の主要メーカー品としては初のバランス型ヘッドホンに対応したことも大きいが、今後は対応するヘッドホンの拡充にも期待したいと思う。バランス型のサウンドとしては音像のクリアさが増し、音場の見通し、空間表現が一気に向上し情報量が増す。ヘッドホンアンプの新しい魅力に気付くことができる一品である。同時にリニューアルされたDAC「DA53N」のサウンドも鮮やかで、PCからのUSB接続とは思えないものとなっていた。CDプレーヤー「CD3800」には同社製のヘッドホン「HP-53」を接続して試聴したが、非常に滑らかで質感が高く、重心の下がった深みのあるサウンドに驚いた。ヘッドホンアンプがなくともここまできちんと鳴らしこめるヘッドホン出力を持った機器の存在は今や貴重である。


NuForce「icon Mobile」
■NuForce「icon Mobile」
「icon Mobile」は、この冬に発売を予定しているという薄型の小型ヘッドホンアンプである(関連ニュース)。今回は筆者の所有するiPod nanoを接続して試聴してみたが、コンパクトでもドライブ力のある低域や、一気に広がる音場感にモバイルにおけるヘッドホンアンプの魅力に改めて気付かされた。これだけ小さい存在ならば、かさばることなく持ち運べ、便利である。携帯プレーヤーのヘッドホン出力はあまり強力ではないことは重々承知はしているものの、なかなかヘッドホンアンプを用意する気にはなれない、という方にとっても喜んで使うことができるモデルとなりそうだ。


Entry Japan「Comply FoamTips」
■Entry Japan「Comply FoamTips」
ヘッドホン・アクセサリーの中で注目したいのが、この「Comply FoamTips」だ(詳細はこちら)。業務機や補聴器などにも用いられる技術を応用した製品で、通常のシリコンチップ製品よりも30倍柔らかい、独自の低反発ポリウレタン素材からできているという。カナル型ヘッドホンを用いるとき、付属の低反発素材のフォームを用いることが多いのだが、密閉度が高まり、遮音性能が高くなる点は気に入っているものの、耳の穴が圧迫される感覚はなかなか消えるものではなかった。個人的にSHURE「SE420」やSONY「MDR-EX90SL」に取り付けて使ってみたのだが、長時間つけていても全く疲れないソフトな着け心地に驚いた。テープおこし等の作業でもヘッドホンを用いることが多いのだが、そうした長引く作業でも疲れないイヤーチップであり、大変仕事上でも重宝しそうである。

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