Switch 2のビジュアル機能は? ディスプレイが優秀、メディアプレーヤーとしても使いたくなる完成度
ついに発売された任天堂の新ハード「Nintendo Switch 2」(以下、Switch 2)。本体の名称がナンバリングされていることからもわかるとおり、基本的なコンセプトは初代「Nintendo Switch」(以下、初代Switch)を引き継いでいる。
携帯モード、テーブルモード、TVモードの3つのスタイルで遊べる、本体とコントローラーを脱着できるといった基本機能は共通していながら、より強力なプロセッサーを搭載して処理能力を高めたり、コントローラーをマグネットで脱着できるようにして使い勝手を高めたりなど、進化ポイントは数多い。
すでにオーディオの細かな機能については発売日当日に記事化している。本稿では、主にビジュアル面の機能を中心に、実際にゲームをプレイしたインプレッションをお届けしよう。

大きくなったけど重くない。放熱もより静か
まずは本体を持った感覚、サイズ感などをかんたんにチェックしていこう。
本体の画面は7.9型なので、かなり大きい。「iPad mini」の画面サイズは8.3型だが、それとほとんど変わらない。手持ちの「iPhone 16 Pro Max」と比べてもかなり大きく、タブレット並のサイズと言える。
だがSwitch 2は、Joy-Con 2を装着した状態の質量が約534g。これは初代Switchの約398gと比べるとかなり重いが、重量バランスが良いのか、手に持ってもあまり重いと感じない。

画面サイズが大きくなっても、それとトレードオフになるはずの重さや圧迫感をあまり感じないのは、本体の厚さが13.9mmと、初代Switchと同等程度に抑えられていることも寄与しているはずだ。
たとえば、ポータブルゲーミングPCの代表格である「ROG Ally」と比べてみると、ROG Allyの厚さは21.22〜32.43mmと、結構厚みがある。質量も608gと、持つとズシリとした感覚がある。幅についてはJoy-Con 2を着けたSwitch 2の方長いが、そのぶんSwitch 2は本体が薄い。全体が薄く、極端な重量バランスの偏りもないので、Switch 2はかなり軽く感じられるのだ。
本体が薄いと、それだけ放熱や排熱が不利になる。発熱やファンの騒音が気になるところだが、これも、たしかに熱くはなるものの、ROG Allyと比べると遙かに低いレベルに収まっている。ROG Allyでは、『サイバーパンク2077』など負荷の高いゲームを遊ぶと、すぐに本体がかなり高熱を持ち、ファンがガンガン回って、ファンの騒音がかなり不快だった。
一方、Switch 2の携帯モードで同じ『サイバーパンク2077』を遊んでみると、本体はほんのり温かくなる程度。本体のファンは回っているのだが、耳を本体にかなり近づけないとわからないほど音が小さい。初代Switchもファン音がうるさいときが時折あったが、これだけ重めなゲームを遊んでもファン音がほとんど聞こえないのは優秀だ。

もちろんWindowsを走らせなければならないROG Allyとまったく同列に論じることはできないが、Switch 2の熱処理の巧みさとともに、ソフトを単一ハードに最適化できる家庭用ゲーム機の優位性を実感した。
本体ディスプレイの画質からして“充分以上”。ゲームだけではもったいない
Switch 2本体のディスプレイはとても高画質だ。解像度は1,920×1,080で、解像感は非常に高い。肉眼でドットを識別することは難しい。
視野角は十分に広く、真横や真上、真下から見ても色がシフトしない。横や上下から見たときの輝度落ちもかなり抑えられており、テーブルモードで複数人がプレイしても不満を感じることはないはずだ。

色再現性も高い。Switch 2の仕様表を見ると、ディスプレイ部に「7.9型 広色域液晶ディスプレイ」と書かれているが、わざわざ広色域と謳っているくらいなので、色域は非常に広い。パキッとした赤、朱色がかった赤など、色の微妙な違いを繊細に描き出すことができる。
HDR表現も、TVモードで自発光デバイスに接続した場合と比べおとなしめの表現ではあるが、たしかに実感できる。『ゼルダの伝説 ティアーズ・オブ・キングダム』のSwitch 2バージョンを遊んでみると、夜の村の中に、街灯が煌めくという表現がより美しく表現される。HDR対応ということで、なぜ内蔵ディスプレイを有機ELにしなかったのかと訝しんでいたが、実際の映像を見ると、これで必要十分と思えた。
これだけ素晴らしいディスプレイを備えているのと、テーブルモードや携帯モードでも、本体画面で映像作品を楽しみたくなるが、現段階ではその方法がほとんど用意されていないのが少し残念だ。
まず、現段階ではYouTube公式アプリがSwitch 2には対応していない。ニンテンドーeショップの動作確認状況には「ゲームの進行に支障がある問題を確認しました」とある。Googleもこの問題は認識しているようで、今後Switch 2でも動作するアプリが配信される可能性は高い。初代SwitchでYouTubeアプリを使っているユーザーはかなり多かったようだから、今後の動向に期待したい。


そのほか、ABEMAやHulu、ニコニコ動画など、従来の初代Switchで動作した動画視聴アプリも、Switch 2では動作しない。今後Switch 2対応版が出るかどうかも不明だ。
こういう状態なので、せっかくの高画質ディスプレイも、もっぱらゲームを綺麗に映し出すことにしか使えない。これまでの方針を考えると、今後任天堂がメディアプレーヤー機能に力を入れる可能性は低いと思うが、たとえばNetflixやU-NEXTアプリが用意され、Switch 2の高画質ディスプレイで見られたら最高だ。今後の展開に期待したい。
またもう一点加えると、画質調整も一切行えない。唯一調整できるのは輝度だけだ。ガンマカーブや色温度を調整させろとは言わないが、もう少し設定できる項目を開放してもらえないものだろうか。
音声についても触れておこう。携帯モードやテーブルモードでは、対応ソフトの場合、内蔵スピーカーでのサラウンド出力が行える。当然ながらバーチャルサラウンドということになるが、この効果がかなり高い。また、内蔵スピーカーの音質もとても良い。『サイバーパンク2077』を携帯モードで遊ぶと、周囲のNPCが話している声の方向までしっかりと伝わってくる。グラフィックの美しさもあいまって、時折ゲームを遊んでいることを忘れるほど没入感が非常に高い。

レグザで入出力信号を確認しながら、Switch 2の映像を体験
続いて、ドックに接続して、TVモード時の映像についても確認してみた。接続したのは、4K有機ELレグザの最新機種「55X9900R」だ。

まず、かんたんにSwitch 2のTVモード出力時の仕様を整理しておこう。まずフレームレートを重視する場合、フルHDまたはWQHDで、最高120Hzの出力が可能だ。逆に解像度を重視する場合、4Kで最高60Hz出力が可能。これらは、もちろんソフトが対応していなければならない。たとえば『ストリートファイター6』はフルHD/120Hz出力が可能だが、『マリオカートワールド』の映像は4K/60Hzまでだった。
レグザは映像信号の情報を表示することができるが、それを見るとHDRオン時の色空間はBT.2020で、色深度は30bit(各色10bit)。なお、TVモード時はVRR(可変リフレッシュレート)は使えない。

まず『マリオカートワールド』で実際の4K映像を見てみる。4K映像にはNVIDIAのDLSS(ディープラーニング スーパー サンプリング)、AI技術を使ったアップスケーリング技術が使われているはずだが、とても自然な仕上がりで、PCなどから出力する4Kネイティブ出力に近い精細感が得られる。今回はテレビの性能も非常に良いので、HDR表現も非常に美しい。今後増えてくるであろうレイトレーシング対応ソフトなども楽しみになってくる。
120Hz表示に対応するゲームでは、映像がより滑らかに表示され、高速で動く物体がとても目で追いかけやすくなる。Switch 2のデモンストレーションソフト『Nintendo Switch 2のひみつ展』のコンテンツ「フレームレートクイズ 120fps見極め」では、その効果をこの上なくハッキリと体感できた。

また映像の滑らかさだけでなく、操作遅延、つまり自分の操作が実際の画面に反映されるまでのレスポンスも早くなるような傾向がある。上述した『ストリートファイター6』のメインとなる対戦画面は、グラフィック性能が大幅に上回るPC版においても60fpsで固定されている。しかしSwitch 2では、体感ではあるが、4K/60Hzよりも120Hzの方が操作が画面に反映されるまで、ほんの少し機敏になった印象があった。勝敗を競うゲームで操作レスポンスが改善されるのであれば、僅かな差かもしれないが、120Hz表示が行えるようになったのは大きい。

またSwitch 2では、ドックに内蔵したファンの回転音もかなり抑えられている。ラックの中に入れてしばらく遊んでみても、ファンが盛大に回ってうるさくなることはなかった。PS5などは、少し密閉した場所で遊ぶとかなりの騒音が発生していたので、快適な使い心地を追求する任天堂の設計思想がここでも感じられた。
使用感は快適、映像もキレイに。ソフトが揃えば人気は約束されている
美しいディスプレイ、そして高画質な4Kアップスケーリング。HDR10にも対応し、より臨場感のある映像が楽しめる。音声についてのアップグレードは小幅だが、それでもBluetoothオーディオがSBCだけでなくAACにもようやく対応するなど、これまで不満点として挙げられていたところを着実に改善した印象だ。本体内蔵スピーカーの音質やサラウンド効果も素晴らしい。
本体を手に持って遊ぶだけでも、細部へのこだわりがそこかしこに感じられ、とても丁寧に作られたプロダクトであることが伝わってくる。初代Switchと同じコンセプトではあるが、中にちりばめられた工夫が膨大であることが、自然に理解できるのだ。
まだ手に入らない方も多いようだが、据え置き型ゲーム機としても携帯ゲーム機としても、とても練られており優秀。本体価格は安いとは言わないが、海外での価格と比べ相対的には割安だし、色々な使い方ができることを考えると、コストパフォーマンスは悪くない。あとはソフトさえ順調に増えていけば、Switch 2の人気はさらに揺るぎないものになるだろう。その過程でオーディオビジュアル機能もさらに進化することを期待したい。