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航続距離は1,000km以上

ドイツで100%水素燃料電池の旅客鉄道が運行開始。今後各国で導入へ【Gadget Gate】

公開日 2022/08/26 13:49 Munenori Taniguchi
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仏の鉄道車両メーカー、アルストムが、同社いわく「世界初の水素燃料100%で走る旅客路線」の運行を、独ニーダーザクセン州で開始した。

Image:Alstom

アルストムが製造するディーゼル機関車「Coradia Lint」を水素対応させた「Coradia iLint」を導入し、水素の調達方法などによっては温暖化ガス排出量も100%削減可能としている。

電化されていない長距離鉄道路線では、非常に安価かつ唯一の選択肢であるディーゼル機関車が、世界各国で長年利用されている。

鉄道の電化は排出ガス削減にも有効なはずだが、都心部以外の路線では大きなコストが必要になるため、利用客の増加が見込めない路線を今後も維持するにはディーゼル方式を使い続けるほかないというのが、多くの路線に共通する事情と考えられる。

しかし、ディーゼル機関そのものを排出ガスのない仕組みに置き換えることができれば、この問題は解決する。そこで浮上したのが水素燃料電池方式だ。動力を電車と同じモーターに切り替え、そのエネルギー源として水素を化学反応させて取り出した電力を供給する。

いま自動車業界で普及が進んでいる、完全なバッテリー式電気自動車(BEV)にすることもできるが、1,000km以上も走行する必要がある鉄道の場合、充電に時間がかかり、航続距離の短いバッテリー式は難しい。大容量が必要となるため、電池パックが車両よりも大きくなるかもしれない。一方で水素燃料電池なら、水素を補充するだけで継続して走行が可能で、温暖化ガスの排出もない。

また複雑な機構を持つエンジンではなくモーターによる駆動になるため、維持費も大きく下がる。アルストムによると、iLintはモジュール方式の設計を採用しているため、故障発生時もその部分の部品を交換すれば良い仕組みになっているという。

アルストムはおよそ4年にわたって、水素燃料電池方式を採用したCoradia iLintの試験運用を実施してきた。この車両は搭載する水素タンク1本で1,000kmの走行を可能としており、これまでディーゼル機関車が担ってきた15両編成の列車を置き換える準備が整った。

Coradia iLintは、ニーダーザクセン州の鉄道運行会社EVB Eisenbahnen und Verkehrsbetriebe Elbe-Weser(EVB)が運行する路線に投入され、80 - 120km/hの速度で走行する予定。車両そのものの最高速度は約140km/hとなっている。

今回の100%水素路線の誕生を皮切りに、ドイツでは未電化路線が水素燃料電池方式に置き換わっていくことになりそうだ。

アルストムはドイツ国内の複数の鉄道事業者と契約を結び、今後5年間で水素燃料電池方式の機関車60両を製造する予定だ。そして将来的にはさらに増やしていく予定としている。またイタリア、フランスの鉄道会社とも水素燃料方式の導入で契約を結んでいる。

Source: Alstom
via: Engadget,Railway Technology

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