利便性と趣味性の奥行きこそ“ポタオデ”の楽しみ。「ポタフェス 大阪 2026」徹底レポート
10月3日(土)に、関西圏最大級のポータブルオーディオイベント「ポタフェス 大阪 2026」が、中之島のグランキューブ大阪にて開催された。
会場は昨年に引き続いてグランキューブ大阪を使用したが、3Fのイベントスペースのホール数をひとつ増やし、さらにエリアを広げての開催となった。入口の前には11時の開場前から多くの人々が列をなし、開場をいまかいまかと待ち構えていた。
会場は天井も高く、ブースの間のエリアも広めに確保されており、非常に回りやすいように設営されていた。また今回初めて「立ちブース」が設けられ、テクニクスやHi-Unitなどでは立った状態で新製品を体験できるようになっていた(ちなみに海外のオーディオショウでは、立っての試聴スタイルのほうが主流という印象)。「立ちブース」は並びやすい、あるいは大型ポスターが展示できるなどおおむね好評のようで、今後さらに広げていくことも検討しているそうだ。
社長の岡田卓也氏も来場していたので関西の市況について尋ねると、「日本橋店の売り上げも非常に好調で、昨年より115%と伸長しています」とのこと。その理由について尋ねると、正確に分析したわけではないですが、と前置きしつつ、「新しいお客さんが来てくださっている印象があります」と、市場の広がりに手応えを感じている様子。
テクニクス、AVIOTなど注目ブランドのいま
開場直後から大きな列が形成されたのは、先般発表されたばかりのワイヤレスヘッドホン「EAH-A1000」が話題のテクニクス。完全ワイヤレスイヤホンの「EAH-AZ100」で採用された磁性流体ドライバーを引き続き採用しながらも、口径が40mmとイヤホンに比べて大きいことから、素材から改めて再検討したモデルとなる。“新世代”のテクニクスファンからも期待の高いモデルのようで、イベント終了時まで列が途切れず。
AVIOTのブースでは、凛として時雨のドラマー、ピエール中野さんもイベント応援に入っており、ファンとにこやかにオーディオ談義を交わしていた。もちろん注目は中野さんが音質監修をした“ピヤホン”こと「TE-W2-PNK」に、初のポータブルスピーカーの「WS-P1PNK」。日本ブランドとしての存在感を高め、ラインナップの拡大にも力をいれている。
エミライは、FIIOやiFi Audioなどの輸入商品に加え、自社ブランドemとしてイヤホン第3弾のプロトタイプを披露。USB Type-Cイヤホンの「NEXIEM Linear」は、今回も2パターンの音質で仕上げたものを用意して、来場者から「どちらが良いか?」という声を集めていた。
NEXIEM Linearの特徴はxMEMS社のMEMSドライバー「Montara Plus」をフルレンジ1発で使用するという点にある。MEMSならではの立ち上がりの良さを活かした設計を追求したいという考えがあるという。2パターンの違いは内部の構造の違いにあるようで、個人的には「空気が通る部分」がある方が好み。とはいえ今後さらに音質を練り込んでいく計画だそう。
finalからは「ZE3000」をベースにしたASMR専用イヤホン「ZE3000 ASMR for TINGLE」と、「VR3000」をベースにしたゲーミング専用イヤホン「VR3000 PRO for Gaming」が登場。当日朝に発表されたばかりで、いち早く体験できる機会に来場者の期待も高まる。スタッフも、「あえて専用と謳うことで、みなさまに音質の新しい可能性を提案したいと思っています」と気合い十分。
CDプレーヤーやアナログ再生の広がりも
近年ポータブルオーディオのイベントで“増えてきた”実感があるのがCDプレーヤー。今回のショウでも、YBAのポータブル“SACD”プレーヤー「Design One」、オリオラスのブースではEvoAriaブランドの「EvoEra」が登場。
面白いのはFosi Audioの「DISC Nano」で、CDが「ちょっとはみ出して」回転しているのはなかなか不思議。いずれも3.5mmと4.4mmのヘッドホン出力を搭載。SHANLINGもラインナップを増やしており、懐かしくて新しいCD再生のカタチに期待。
R-2R DACや筐体強化などDAPの最新トレンドチェック
ハイレゾを含む音源を内蔵するDAPも新製品が多数登場。特に注目度が高かったのはAstell&Kernの「PD5」。AKブランドの中ではエントリークラスの製品で、従来モデル「SR35」の後継機的な位置付けとなる。ハイエンド製品を多くリリースしているAKの久々の小型/エントリー価格帯ということで、こちらも試聴列が途切れず。
またミックスウェーブ取扱のHIBYからはR-2R方式のDACアーキテクチャを採用した「RS2 II」が登場、グリーンのアルミ筐体とゴールドの真鍮筐体の2モデルを並べた。エミライ取扱のFIIOからは「M25」と「M25 R2R」とDAC違いのDAPを2機種用意。R-2RのディスクリートDACによる独自の音作りの追求はいまのDAPのトレンドのひとつだ。
またMUSIN取扱のONIXの「Tocata XM2」、SHANLINGの「M8T Copper」からは黄金のボディ煌めくコッパーモデルが登場。筐体そのものを強化して高音質を狙うアイデアも各社がしのぎを削っている印象だ。
老舗ブランドのイヤーカフ型に参入
ガジェットアイテムとして最近多くのブランドから登場しているイヤーカフ型。耳たぶにつけるイヤリングのようなスタイルで、ファッション的な側面からも注目されている。
オーディオの老舗SENNHEISERも先日、ブランド初のイヤーカフ型「ACCENTUM Clip」をリリース。担当者によると、「イヤーカフ型はアジア圏、特に中国の市場からの要望が特に大きいです」と教えてくれた。SENNHEISERとしても、アジア圏からの声を受けて新規参入したとのことだ。
会場ではJBLの「SOUNDGEAR CLIPS」やShokzの「OpenDots 2」、EDIFIER 「Comfo bass pro」を見かけた。今回は出展していないが、レグザやCMF by Nothingといったブランドも相次いで参入しており、イヤーカフ型は、いま一番ホットなカテゴリーといえそうだ。
ワイヤレスヘッドホンとしては、山崎賢人をアンバサダーに迎えたEDIFIERが、大型ポスターと「WH950NB Gen 2」にてお迎え。またブライトーンは参考出品として北欧ブランドの「Kaiku Acoustics」のワイヤレスヘッドホンを展示していた。
再評価進む有線イヤホンの世界
ワイヤレスの利便性の一方で、有線モデルへの再評価も広がっている。「紛失しにくい」「バッテリーを心配しなくても良い」といった実用面に加えて、“平成レトロ”という文化的背景もある模様。またiPhoneの端子が「15」からUSB Type-Cに変更されたことから、USB Type-Cモデルの有線イヤホンの需要が再び上昇しているという。
“イヤモニ”の流れを汲む業務用モデル、高級モデルも盛況だ。ソニーのプロ向け「IER-M500」は、有線のメリットである低遅延や安定性に加えて、耳からの“落ちにくさ”もアピール。スケルトンカラーの他、左右が赤と青で異なるモデルも用意。暗めの現場でも左右がわかりやすいと好評だとか。
Nostalgia Audioからは、日本企画の新イヤホン「NA」のプロトタイプが初披露された。1DD+2BA+2 Planarという構成だそうで、来場者の声をきいてさらに音質をチューンアップしていく予定とのこと。価格も6万円以下を目指しており、新しいノスタルジアファンを増やす狙いがあるという。
MaestroAudioからは、新素材のパッシブ型トゥイーターRST(Reactive Sympathetic Tweeter)を搭載した「MAPro2000」、qdcからは代理店アユートとの共同企画となる「BASALT」「EVOLVER」が登場。MUSINは中国の新ブランドOASEAR(オースイヤー)の取り扱いを開始した。アコースチューンは得意のコンバーチブルシステム「XHS1400」を披露。有線イヤホンの“趣味性”の可能性はまだまだ尽きない。
隠れた大ヒットアイテム、イヤーピース
ポータブルオーディオの趣味性で言えば、アクセサリーの存在も忘れてはならない。社長の岡田氏によると「イヤーピースが大ヒットしています!」との由。
「完全ワイヤレスイヤホンが主流になって、なかなかいじれるところが少なくなってしまったので、イヤピで音を遊びたい!というお客さんがより増えているのだと思います」と分析する。
e☆イヤホン輸入事業部が手掛けるELETECHからは、軸がカラフルなイヤーピース「ROCOCO」が初登場。指先で軽く潰すと硬めの弾力となっており、先に登場した「BAROQUE」とは触感がだいぶ異なる。音の傾向も変えており、「より芯のあるサウンド」を狙ったとのこと。軸色の違いはサイズの違いということで、来場者も手持ちのイヤホンと組み合わせて聴き比べを楽しんでいた。
あらゆるケーブルのお悩みをサポートするブリスオーディオからは、Grell Audioの「OAE2」のリケーブルが初登場。通常は片出しで使用できるヘッドホンだが、音質面を考え“両出し”リケーブルとなっているのも大きな特徴となる。
高額ヘッドホンもじっくり楽しめる
なかなか試聴機会の少ない高額ヘッドホンやヘッドホンアンプが試聴できるのもポタフェスの楽しみのひとつ。
今回は、100万円という価格が正式発表されたMeze Audioのフラグシップ「ARTA」が大阪初登場。林製作所の“調音パネル”で囲われた空間で、じっくり音を確認できる環境が用意された。
またオーディオテクニカは開放型フラグシップ「ATH-ADX7000」と、開放型かつノイキャン搭載という新提案のワイヤレスモデル「ATH-AL5NC」の2機種を用意。こちらも簡易の防音ブースを用意し、落ち着いた環境で音を確認できるようになっていた。
また7月よりULTRAZONEの代理店を引き継いだキクタニミュージックも、プロ向けラインの最上位モデル「Signature QUANTUM」、そして既存モデル「Signature PRO」と「Signature MASTER」のコンセプトを統合した「Signature MASTER PRO」などを展示。
K-Garageという新規事業部でコンシューマー向けのオーディオを強化していくことを考えており、Nakamichiの平面磁界ヘッドホン「mirai P800J」も取り扱いを開始。平面磁界&ダイナミックのハイブリッドイヤホン「mirai P8J」も発売予定としている。老舗ブランドの新展開にも期待したい。
エソテリックはネットワーク/DAC/プリ「N-05XE」を展示。前作「N-05XD」がヘッドホンファンに“想定以上”に大ヒットしたことを受け、さらなる音のブラッシュアップをアピールする。ヘッドホンにはオーディオテクニカ、ファイナル、Meze Audioなど多数用意し、じっくり聴き比べる来場者の姿も見られた。
マルチウェイイヤホンを、専用クロスオーバーとアンプで駆動するスタイルは、ブリスオーディオ「FUGAKU」の世界的な成功を受けて、一層の広がりを見せている。オリオラスからは、25周年モデルとして「EJ01」が登場。4EST+5BA+1DDの5ウェイ・クロスオーバーとなっており、日本円では約50万円。「予約でほぼなくなってしまうと思うので、ご興味のある方は早めにどうぞ!」と案内していた。
創業20周年を迎えるe☆イヤホン
e☆イヤホンを運営する(株)タイムマシンは、来年創業20周年を迎えると言う。ちなみにe☆イヤホンの1号店は大阪・日本橋で、大阪からヘッドホン/イヤホンの文化を全国に強く発信してきた。ポタフェスの今後についても、秋葉原を年2回で開催しつつ、大阪は必ず年1回は開催、札幌や広島など、重要都市での開催も今後積極的に仕掛けていく予定だという。
来年の大阪は「さらにグレードアップしたい」と運営スタッフの熱量も高い。ポタフェス大阪を1日ぐるりと回ってみて、“ポータブルオーディオ”と呼ばれるカテゴリの豊穣さと新提案に改めて驚くとともに、もはやポータブルではなく自宅でじっくり腰を据えて楽しみたいものまで、その幅広さに圧倒された。
利便性の追求と趣味性の奥行き、その両輪にこそヘッドホン/イヤホンの楽しみがあるのだと改めて教えてくれた。

