デノン、4年振りモデルチェンジのミドルクラスAVアンプ「AVR-X3900H」「AVR-X2900H」
デノンは、AVアンプの新たなミドルクラスモデルとして「AVR-X3900H」「AVR-X2900H」の2機種を6月26日に発売する。価格は、AVR-X3900Hが279,400円、AVR-X2900Hが202,400円(いずれも税込)。
デノンAVアンプのラインナップ中、AVR-X3900Hがハイミドルクラス、AVR-X2900Hがミドルクラスといった位置づけ。2022年に発売された「AVR-X3800H」および「AVR-X2800H」から4年振りのモデルチェンジとなる。
AVR-X3800Hは、同社のフラグシップAVアンプ「AVC-A1H」の設計思想を継承した全チャンネル同一構成のディスクリート・パワーアンプを採用しており、最大出力215Wの9chディスクリート・パワーアンプを搭載する。肉厚なアルミ押し出し材のヒートシンクに、9chアンプを2枚の基板に分けて組み込んでおり、効率的な放熱と振動の抑制を実現している。
AVR-X2900Hにも、Hi-Fiオーディオアンプの設計思想を受け継いだ全チャンネル同一構成のディスクリートアンプとしており、最大出力185Wの7chディスクリート・パワーアンプを搭載。最大チャンネルプロセッシングは、AVR-X3900Hが11.4ch、AVR-X2900Hが7.2chまでカバーしている。
立体音響フォーマットは、AVR-X3900HがDolby Atmos/DTS:X/IMAX Enhanced/Auro-3D/MPEG-4 AAC/MPEG-A(360 Reality Audio)、AVR-X2900HがDolby Atmos/DTS:X/MPEG-4 AACに対応する。加えて、バーチャル3Dサラウンドテクノロジーの「Dolby Atmos Height Virtualizer」と「DTS Virtual:X」をフォローする。
AVR-X3900Hは、ラインナップとしてはハイミドルクラスながら、「最初のハイエンドAVアンプ」というコンセプトを掲げており、設計チームがサウンドを磨き上げたことで “ハイエンドの香り” がする高音質を実現していると、担当者は力強く説明する。
もう一方のAVR-X2900Hのコンセプトは、「AVアンプで始める初めてのオーディオ」。ホームシアターサウンドの再定義を謳い、“サラウンドだけではなく、ステレオの音源も含めたあらゆるコンテンツを、AVアンプの音質という概念を一新したサウンドクオリティに仕上げている” とアピールする。
AVR-X3900H、ならびにAVR-X2900Hに共通して採用された高音質技術として、32bit対応の「電流出力型DAコンバーター」を新搭載。加えて、周辺回路やカップリングコンデンサーも再検討し、さらにIV変換に薄膜抵抗を使用することで、デノンブランドが理想とするサウンドコンセプト “Vivid & Spacious” をより一層突き詰めたという。
具体的なスペック向上として、電流出力型DAコンバーターの変更により、プリアンプ部のS/Nは15dBも改善したそうだ。再生可能な最大サンプリング周波数/量子化bit数は、PCM 192kHz/24bit、DSD 5.6MHz/1bit。WAV/ALAC/WMW/FLAC/DSD/MP3といったフォーマットをサポートする。
コンデンサーの内部の電解紙、固定材なしの基本設計、箔の引っ張り強度、巻きテンションの微調整など、構造にもAVR-X3900H/AVR-X2900H専用のこだわりが施されているのも特徴だ。
パワートランジスターについては、AVR-X3900H/AVR-X2900H両機の開発を開始する前から検討を進めていたとしており、共通してゆとりのあるパワートランジスターを導入した。
さらにAVR-X2900Hでは、電源トランスもブラッシュアップ。電源トランスはノイズの影響や振動を与える要因にもなるパーツであるが、今回「7.1chアンプで1番のものを」との号令のもとコストをかけて製作。
珪素銅板とショートリングを追加したことでノイズ漏れを最小化しており、さらにメイントランス内の振動を抑制するための追加プレートも投入するという力の入れようだ。
最注目の新機能が「ワイヤレスサラウンド」だ。発売後のソフトウェア・アップデートにて追加される機能で、同社のワイヤレススピーカー “DENON HOMEシリーズ” を、サラウンドスピーカーおよびサラウンドバックスピーカーとしてワイヤレス接続できるというものだ。
本機能に対応するDENON HOMEシリーズは、Dolby Atmosをサポートする新世代モデル「DENON HOME 200」「DENON HOME 400」「DENON HOME 600」の3機種となる。
DENON HOME 200はモノラルスピーカーとして2台、DENON HOME 400とDENON HOME 600はステレオスピーカーとして1台、AVアンプに接続することで「ワイヤレスサラウンド」機能が使用できる。
例えば、フロントLR/センタースピーカー/サブウーファーはAVアンプと有線接続している場合、サラウンドスピーカーとしてDENON HOME 200は2台、DENON HOME 400とDENON HOME 600は1台接続した、「5.1chワイヤレスサラウンド」システムが構築できる。
「7.1chワイヤレスサラウンド」システムの場合は、フロントLR/センタースピーカー/サブウーファーに加え、サラウンドバックスピーカーは有線接続、そこにDENON HOME 200の2台をサラウンドスピーカーとしてワイヤレス接続したシステムが構築可能。
また、フロントLR/センタースピーカー/サブウーファー/サラウンドスピーカーは有線接続として、サラウンドバックにDENON HOME 400やDENON HOME 600の1台をワイヤレス接続したシステムなどが構築できる。
ただし、フロントLR/センタースピーカー/サブウーファー/サラウンドバックスピーカーを有線接続しているシステムに、DENON HOME 400やDENON HOME 600をサラウンドスピーカーとしてワイヤレス接続することはできない模様。
「ワイヤレスサラウンド」機能については、デノンの担当者も「ついに待望のワイヤレス機能が入った」と意気込みを語っていた。
AVR-X3900Hのみ、新機能「チャンネルエキスパンダー」も搭載する。Dolby Atmosのコンテンツを再生する際、音声信号の内容によっては、特定のハイトスピーカーから音が出力されないコンテンツが存在するという。
特に、高さ方向のスピーカーアサインに「トップミドル」が入っていて、そこに「フロントハイト」や「リアハイト」といったスピーカーが追加されている場合、コンテンツによっては、トップミドルから音は出ているが、フロント/リアハイトからは音が出ていない状態になってしまうことがあるようだ。
その場合、せっかく高さ方向のスピーカーとして4ch分組んでいても、持っているスピーカーのメリットを最大限に活かせていない状況になってしまう。そこで活躍するのが「チャンネルエキスパンダー」機能だ。
例えば、トップミドルとフロントハイトのシステムの場合、「チャンネルエキスパンダー」機能をオンにすると、フロントスピーカーとトップミドルに出力されている信号をデノン独自のチューニングでミックスさせ、その音をフロントハイトから出力させる。つまり、ユーザーが組んでいるスピーカーシステムをフル活用することができるのだ。
加えて、「センターチャンネルバイアンプモード」もAVR-X3900Hのみに搭載。前モデルのAVR-X3800Hでは、フロントLRのバイアンプ接続に対応していたが、新モデルからはセンタースピーカーもバイアンプで接続可能となった。駆動力が向上し、さらにウーファーが生成する逆起電力がトゥイーターに与えるノイズも回避できるのが、バイアンプならではの特長だ。
ゲーミング関連の機能では1440pパススルー、さらにGPUが出力するフレームレートに合わせてモニターのリフレッシュレートを調整して、フレームの完全同期を図る「AMD FreeSync」もカバーする。
ワイヤレス機能は、Wi-Fi(5GHz/2.4GHz)、Bluetoothに対応する。Bluetooth音声コーデックは、SBCのみ再生が可能。ネットワーク再生機能の「HEOS」に対応しており、Amazon Music/AWA/Deezer Hi-Fi/Qobuz/Spotify/SoundCloudといった幅広い音楽ストリーミングサービスが利用できる。加えて、Air Play 2対応、ワイドFM対応FM/AMラジオチューナーも内蔵する。
自動音場補正機能は、AVR-X3900Hが「Audyssey MultEQ XT32」、有償でDiracが提供する「Dirac Live」に対応。Diracの機能である「Room Correction」「Bass Control」「ART(Active Room Treatment)」も利用できる。AVR-X2900Hが「Audyssey MultEQ XT」と有償で「Dirac Live Room Correction」に対応。
デザインも刷新されている。AVR-X3900H/AVR-X2900Hは、新世代の “Xシリーズ” として、上位機種の “Aシリーズ” で採用してきたデザインを踏襲している。フロントパネルが前に押し出されたデザインとなっており、触感に優れたボタンによって、ユーザーに確かな操作感を提供しているとのこと。付属リモコンには、バックライト機能が追加され、暗室でもボタンが確認しやすい仕様となった。
サステナブルな取り組みとして、パッケージに使用するプラスチックを削減。従来まで、12種類のプラスチックパッケージを利用していたが、全て廃止した。アクセサリー用パルプ製成形トレイをはじめ、リモコン用半透明紙包装、ACケーブル/マイク/AF・FMアンテナ用紙製結束バンドなど、すべてサステナブルな素材に切り替わっている。
主な入力端子は、AVR-X3900HがHDMI入力×6、HDMI出力×3、光デジタル音声入力×2、同軸デジタル音声入力×2、アナログ音声入力(RCA)×5、PHONO入力×1、11.4chプリアウト×1、ヘッドホン出力(ステレオミニ)×1、USB Type-A入力×2、LAN×1を装備。
AVR-X2900HがHDMI入力×6、HDMI出力×2、光デジタル音声入力×2、同軸デジタル音声入力×1、アナログ音声入力(RCA)×4、PHONO入力×1、サブウーファープリアウト×2、ヘッドホン出力(ステレオミニ)×1、USB Type-A入力×2、LAN×1を備える。
HDMI入力には、両機とも共通してジッターリダクション機能を導入している。
各モデルの消費電力/外形寸法/質量は、AVR-X3900Hが660W(待機時0.1W)/434W×167H×389Dmm(アンテナ寝かせた場合)/12.5kg、AVR-X2900Hが500W(待機時0.1W)/434W×167H×341Dmm(アンテナ寝かせた場合)/9.75kg。
試聴インプレッション
メディア向け説明会では、試聴室でAVR-X3900H/AVR-X2900Hの実機の音を聴かせてもらうことができた。
最初にAVR-X2900Hを試聴。ステレオ音源のフォープレイ「Bali Run」では、イントロのピアノをはじめ、ベースやギターといった弦楽器のひとつひとつの音が、前モデルよりもクリアに聴こえ、音の輪郭がとても把握しやすくなった印象だった。
ドラムのハットやスネアの音も鮮明に聴こえるが、キックの音はアタックと空気が揺れる音が前に出てくるように迫力あるサウンドで描き分けられる。4つのパートはまとまりながらも混ざり合うことはなく、適度な分離感をもって聴こえた。
映像ソフトとして映画『ワン・バトル・アフター・アナザー』のカーチェイスシーンを再生すると、上下をウネウネと車が進んでいくところでも、音の揺れに対して変化がとても鮮明で、それによって車に追われている感覚も強く感じられた。加えて、演者の息使いもクリアに聴こえてくることで、試聴室にも緊張感が満ちていくようだった。
映画『セッション』では、前モデルから高音質パーツを変更したことでS/Nが高まったことを実感できる箇所がとても多い印象を受ける。主役のドラムの一音一音をはじめ、サックス、トロンボーン、トランペットの音の特徴がダイレクトに伝わってきたのも、その効果が大きいようだった。
次にAVR-X3900Hに代わると、AVR-X2900Hよりも一気に音場が開けて、スピーカーの位置よりも広い空間が鳴っている感覚になる。それに伴って、各楽器の左右の位置、また同時に前後の奥行きも強く感じられるようだった。発音も速くなった印象で、ドラムのアタックがダイレクトになり、圧も力強く身体に響くよう。1段クラスがあがったことを実感できた。
映画『ワン・バトル・アフター・アナザー』に移っても、音場の広大さ、音の位置/空間の奥行きの広がりを共通して感じることができた。大音量も柔らかく聴こえ、それから静かになっていくにつれノイズフロアの少なさが印象付けられる。その静けさの中から、ライフルの銃声音や女優の絶叫など、一瞬で音のピークが再生される部分にも、音の立ち上がりの速さを体感できた。
次いで、映画『セッション』でもドラムからベース、ピアノから管楽器隊まで、音の位置が横にあるのか、それとも奥にあるのかが、とても掴みやすい。また管楽器の音色や響きの質感、ドラムの強弱や音の粒立ちといった音の細部の表現も、上位モデルたるAVR-X3900Hの面目躍如。楽器演奏の音だけでなく、演奏中の演者のセリフも明瞭になっていたのも特徴的だった。
最後にAVR-X3900Hに初搭載された「チャンネルエキスパンダー」の効果も試聴させてもらえた。
再生コンテンツは、Dolby Atmosで収録されている『トップガン マーヴェリック』のダークスターが飛び立つシーン。まずトップミドルスピーカーだけが鳴っている状態でも、聴き馴染みのある違和感のない高さ方向のサウンドであり、立体的な音の移動感も明確。
そこで「チャンネルエキスパンダー」をオンにして、フロントハイトスピーカーからも音が鳴るようになると、トップミドルだけだったとき以上にフロントスピーカーと高さ方向の音の繋がりがスムーズになり、Dolby Atmosの半球の音場に包まれる感覚が、各段に高まった印象を受けた。空間そのものが広がったかのような空気感の変化、映像への没入感アップを実感できるだろう。
