街のでんきやさんにも迫る「2025年問題」とは? 地域電器専門店「S-LINKグループ」方針発表会レポート
各々の店舗の成長がグループ全体の成長へ
埼玉県の地域電器専門店17店で構成される組織ショップ「S-LINK(エスリンク)グループ」は、2025年経営方針発表会を開催した。同グループならではの特徴を活かした取り組みを強化し、エアコン・テレビ・冷蔵庫・洗濯機の4大商品に加え、補聴器とLED照明を増客への足掛かりと位置付け積極推進。「増客」および「活動」を取り組みの柱に据え、お客様のランクアップと稼働率アップを目指す。

同社代表取締役 兼 本部長・星和彦氏は、「S-LINKはそれまでの法人格を持たない販促集団という団体ではなく、パナソニックマーケティングジャパンと直接取引を行う認定組織ショップとして9年前に発足しました。最初は12店舗・13拠点でしたが、その後、加盟店が増え、現在は合計17店舗となり、首都圏地区ではトップクラスの規模で活動を行っています。多くの仲間と共同で法人を設立し、自主自立で運営することは、今までの販促集団とは次元が数段違うものです」と節目となる10周年を前に、ここまでの活動成果をアピールした。
その強みについて、世界的なブームを巻き起こしたK-POPを引き合いに出しながら、「グループの個と全体の調和を生かしたそのパフォーマンスは、私たちS-LINKが目指すものに近いのではないかと感じています。それぞれの地域において、パナソニックの優れた商品に各店の優れたサービスを付加してお客様に提供し、暮らしを豊かにしていきます。その相乗効果がグループ全体の次元をさらに高めていきます」と力を込めた。

さらに将来を見据えて、「グループ成長の中心は今後、現在20歳代から40歳代の従業者と加盟店社長です。 私たち年長者はその環境を整え、この素晴らしい仕事を次の世代へ承継することが、恐らく最後のミッションになるでしょう。それぞれの持ち場でベストを尽くしていただき、この一年を次の十年の大切な準備期間としていきたい」と訴えた。
人口動態の変化に注視する星氏は、団塊世代が75歳以上の後期高齢者となり超高齢化社会を迎える「2025年問題」に触れ、「当店は既存客へのサービスで手一杯というご主張もご理解できますが、団塊の世代のお客様が、医療費の負担増や物価高騰で家電製品を購入する予算が減少する、また、場合によっては別の世界へ旅立ってしまうこともあります。こればかりは誰も避けて通ることはできません」と地域電器専門店が直面する課題を指摘する。
これに対し、「しっかりと未来を見据えて新規客の獲得の活動をしていただき、それぞれの加盟店の持続成長を今後も目指していただきたい。 皆さんのそれぞれのお店の成長がグループ全体の成長となります」と節目となる10年へ心新たに、気を引き締めた。
女性が共感できる女性目線の販促企画を重視
2025年度の活動計画を、副本部長・上原武氏(S-LINK ファミリー)が発表。「あなたの街のでんきやさんS-LINKにしかできないことをしよう」をスローガンに、「どんな時代でも地域に寄り添った活動で、社会貢献と持続成長の両立を目指す」「私たちにしかできないリアルサービス+適切な販売価格で新規客を増やす」「変化する環境に順応し、次の10年を見据えた活動でこの先の発展を目指す」という活動方針を示した。

7カテゴリー・計30項目にわたる具体的な取り組みが挙げられ、そのなかのいくつかを取り上げて説明。「お客様づくり」で示されたSNSやホームページの活用強化に対しては、「情報を発信する場はたくさんあります。アクセス増へ頑張りましょう」とつい疎かになりがちな取り組みを鼓舞。新しいお客様との接点を創造できる重要性を訴えた。
「店づくり」においては、商圏内のニーズや売り場面積に合わせた展示の工夫に対し、「狭くても小さくても何かできることがあります。お互いにアイデアを出し合いましょう」とさらなる創意工夫を訴えた。
各加盟店より具体的な取り組みが発表された後、グループをより一層盛り立てる目的から、所属する従業者への福利厚生の一環として昨年度より導入された社員表彰制度の表彰式が行われた。「功労賞」として表彰されたのは女子販促検討委員会のメンバー。

星氏は「数年前から、女性による女性目線の販促企画を重視し、お客様に楽しんでもらうということで、委員会を設けました。実際の会議は大勢で行っていますが、今日表彰された4名は、事前の会議や準備に非常にご尽力いただいています。いまや年2回の共同販促ではこの方々がいないと運営できません。また、我々のお客様も高齢者の方は女性の方が多い時代ですので、女性に共感いただけないと生き残れません」とその活動を称えた。
“増客” “実需” で語れる販売促進会社へ進化
来賓として出席したパナソニック マーケティング ジャパン株式会社 首都圏社 専門店営業担当 常務・菅谷信一氏が、同社の取り組みについて説明した。
首都圏および埼玉県の人口動態の変化とその対応について菅谷氏は「いずれも人口減少は進みますが、世帯数は増加傾向で、一人暮らしをはじめ少数の世帯が増えています。そうしたお客様に刺さる少数世帯向けのパーソナル家電製品の開発も粛々と進めています」と変化するニーズの最適化を進めていると説明した。

地域電器専門店の稼働客シェアは全国で4.9%、首都圏は3.0%。ローカルの方がやはり高く、一番高い鹿児島では14.1%、次いで和歌山13.3%、山形12.9%となる。店数・売上金額ともに逓減傾向にあるなかで、「稼働客を増やすことで受注金額が上がってくることは明確です。それと並行し、新規のお客様もしっかり増やさないと売上げは上がりません」と “創客” “増客” に視点を合わせた活動の一層の強化を訴えた。
25年度の取り組みでは、基本方針として「販売(仕入れ)を基軸とした提案から、販促活動による増客=販売(実需)を基軸とした提案へ。増客・実需で語れる販売促進会社への進化」を掲げる。増客のポイントのひとつと例を挙げたのは催事の開催回数。回数が増すに比例して稼働客数が増加するデータを示し、「やはり催事回数を増やすこと、“販促の手数” を増やすことで、稼働客が上がり、販売も上がります」と説明した。
2025年度のスローガンは「専門店PRIDE Again〜変化・進化・成長・チーム力、心身健全」。「最後に心身健全とありますが、やはり健康でないといい仕事はできません。皆さんとしっかりタッグを組んで取り組んでいきたい」とあいさつを締めくくった。