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インターネット社会実証(第二期)の結果を公表

NHK、“テレビを見ない人にネットでサービス提供”実験。「放送と同様の効用をもたらすことが確認された」

公開日 2023/05/23 19:46 編集部:小野佳希
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NHKは、テレビを全く、あるいはほとんど見ない人を中心に実施した「インターネット社会実証(第二期)」の結果を公表。インターネットを通じたNHKの情報提供が、「テレビを見ない人に対しても放送と同様の効用をもたらすことが確認された」との見解を示した。

■災害時の取材映像を地図上に表示。避難しない人の行動変容を促す



今回の実験は、2月10日から2月24日の期間で、テレビを持っていない人々や日常的に利用していない人々約1,400人を対象に実施。「災害マップ」「一望・連続再生」という2種類のサービスを、インターネットで提供した。

災害マップサービスのイメージ画像

「災害マップ」は、2020年に熊本県の球磨川流域を中心に発生した豪雨災害を例に、NHKが取材・裏付けをした被害状況の映像などを地図上で時系列に可視化して提示。防災・減災の具体的な課題として、放送で呼びかけても避難行動を起こす「避難のスイッチ」がなかなか入らないということが指摘されていることから、災害を追体験することで、「もしも」の時に避難の “行動変容” を促せるかを検証した。

このサービスに対しては、「今後避難指示が出たときに、避難の気持ちが強まる」 との回答が91.6%にのぼり、今後サービスが一般に提供されるようになった場合には88.5%の人が利用意向を示したとのこと。事前調査での避難率は13.2%と低かったことから、サービスによって避難の “行動変容” を促せることが確認できたと結論づけた。

■自分の興味ある情報しか見ない「エコーチェンバー」を解消できるか



「一望・連続再生」は、様々なニュースや番組をサムネイルで一覧で提示するというもの。様々な方法でコンテンツを一覧提示することで、放送が担ってきた多様性を提供する機能を具体的に示し、どのように受容されるかを検証したという。

一望・連続再生サービスのイメージ画像

この実験では、「総覧視聴」「番組リスト・ニュースリスト」「検索」という3つの手法を提示。例えば「総覧視聴」では、提示するコンテンツの内容を「NHKが選んだ主要ニュースと番組」を一覧表示するか、「自分が設定した地域ニュースと興味ジャンルの番組」を表示するかを選べるようにした。

「番組リスト・ニュースリスト」と「検索」では、リストの分野やジャンル、検索のキーワードとは直接関連しないコンテンツをリストの内容や検索結果に混ぜてあわせて提示。上記「総覧視聴」同様に「NHKが選んだ主要ニュースと多様なジャンルの番組」と「自分が設定・選択したニュース・番組」の提示とをいずれも利用できるようにして、どのように受容されるかを検証した。

近年、「フィルターバブル」「エコーチェンバー」などと呼ばれるように、自分が興味・関心のあること以外には目を向けない傾向が特にネットで問題視されている。今回の実験は、そうした課題に対する手法を検証するものだったという。テレビ放送においては、例えば報道番組だけ、娯楽番組だけなど特定のジャンルに偏らず様々なジャンルの番組を一定比率で混ぜて編成しなければならないが、インターネットのコンテンツにおいても同様の考え方で情報提供しようと試みた格好だ。

この実験では、「NHKが選んだコンテンツを表示」したパターンのほうが、「自分で選んだコンテンツを表示」したパターンよりも「思いがけないコンテンツなどに触れるなど広がりを実感した」と回答した人が多かったとのこと。もし今後実際にサービス化された場合の利用意向も高く、「NHKならではのバランスの確立をできる見通しが確認できた」と説明。

そして、「災害マップ、一望・連続再生のいずれも、 放送の効用を企図したサービスで、同様の効用をもたらすことが確認されたと言えるのではないかと考えている」とした。

■調査は「ネット活用業務拡大の根拠などに利用するものではない」



なお、今回の実験はテレビを見ていない人、つまり受信料を払っていない可能性の高い人が対象だとも考えられることから、説明会に出席したメディアからは「ふだん受信料を払っていないのにこうしたサービスが受けられるのだとしたら、評価も自ずと高くなるのではないか」などといった質問も。

別のメディアからも「効果検証のための質問項目が恣意的なのではないかとも感じる。(好評な声が多く出た)この調査結果を、今後のインターネット活用業務拡大の根拠にしようとしているのではないか」といった質問が出た。

こうした声に対しNHKは、調査の専門家にも確認した上で実施していること、そして、昨年行った第一期実験で高い評価を集めたことから、今回はより具体的なサービス内容について確認するための実験だったことを説明。「何か特定の目的に使うための調査というよりも、社会実証の要請に応えるための純粋な調査だ」と回答した。

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