山之内 正が“新生PS3”を検証 − 24p出力対応で最高水準のBDプレーヤーに進化

2007年05月25日
プレイステーション3(PS3)のシステムソフトウェア ver.1.8が5月24日に公開されたので、早速アップデートを実施した。今回のアップデートの内容はこれまで以上に中身が濃く、特にPS3をBDやDVDの再生機として使っているユーザーにとっては重要な新機能が含まれているので、これまでアップデートを見送ってきたとしても、今回ばかりは無視することはできない。

画質面で最も注目すべきバージョンアップは、BDの24p出力をサポートしたことである。市販のBDレコーダー、BDプレーヤーで同機能を実現している製品はなく、来月下旬に発売されるパイオニアの「BDP-LX70」が当面は唯一の製品とみなされていた。ここでPS3が24p出力をサポートしたことで、BDプレーヤーとしての商品価値は一気に評価が高まることになるだろう。

24p出力に加えてDVDのアップコンバート出力も同時に実現した。最大で1080pを実現する今回の更新によって、DVD再生時にも画質の大きな改善が期待できるのである。そのほか、DLNAクライアント機能の追加もメリットが大きい。これらのバージョンアップのなかから、今回はBDの24p出力に絞ってアップデートによる画質改善効果の有無を検証し、第一報としてお届けすることにしよう。

DVDのアップコンバート出力(1080p)にも対応

DLNAクライアント機能も追加された

アップデートの作業自体はこれまでと変わらず、画面に表示されるメッセージにしたがって操作することにより、20分程度で無事に完了する。再起動後の画面で「設定」メニューから「BD/DVD設定」を選択すると、「DVDアップコンバート」の2つ下に「BD 1080p 24Hz出力(HDMI)」という項目が追加されている。これが、今回最も注目したい新機能である。PDP-5000EXと接続した状態でこの項目を「自動」に変更すれば、準備は完了だ。

「BD 1080p 24Hz出力(HDMI)」がメニューに追加された

BDの映画タイトルの多くはフィルム素材に準じて24コマ/秒の画像が記録されているのだが、通常はディスプレイのリフレッシュレートに合わせて、2-3プルダウン処理を経た60コマ/秒で出力している。

一方、24p出力はBDに記録されている信号をダイレクトに出力するモードで、BDの規格にあらかじめ盛り込まれた仕様の一つである。ディスプレイ側で48コマ/秒または72コマ/秒で表示するすることにより、2-3プルダウンの不規則性を排除できるほか、同処理の過程で生じるノイズなどの発生を抑える効果が期待できる。実際に前述のBDP-LX70とPDP-5000EXの組み合わせでは画質が一変するほどの効果があり、フルハイビジョンのプロジェクターでも著しい画質改善が期待できる。

従来の設定と24p出力を切り替えて「カジノ・ロワイヤル」や「パイレーツ・オブ・カリビアン」を再生すると、両者の映像の違いの大きさに驚かされる。ひと目でわかることは、画面全体のノイズ感が一掃され、色の純度やディテール再現に文字通り磨きがかかることである。十分に画質を吟味したAVC方式でエンコードされたソフトということもあり、もともとS/Nはきわめて優秀なのだが、それでも24p出力に切り替えると印象が一変するほど透明感が向上し、遠近感が浮かび上がってくる。

レンズのフォーカス精度まで見きわめられるほどの高解像度なので、どのシーンを見ても顔の立体感や表情の変化が面白いように浮かび上がってくるし、《デッドマンズ・チェスト》の島の追跡シーンのような動きの激しい場面でも、映像がディテールを失わず、キリッと引き締まっている。

「カジノ・ロワイヤル」後半に登場するヴェニスのサン・マルコ広場の映像は、これまで見た既存の録画機・再生機の映像に比べて遠近感が際立ち、見通しの良さと空気感の描写は目を見張るものがある。S/Nの良さと立体感の両方で、これまで最も画質の水準が高かったBDZ-V9の映像を明らかに超えている。

今回のアップデートソフトが公開された24日は、BDのビッグタイトルとして期待を集めていた3作品(「カジノ・ロワイヤル」、「パイレーツ・オブ・カリビアン 呪われた海賊たち」、「パイレーツ・オブ・カリビアン デッドマンズ・チェスト」)が一斉に発売された日の翌日に当たる。まるで発売日に合わせたかのようなタイミングの良さであり、絶好の機会をとらえて公開されたといってよい。

実は筆者はGW直前に取材でSCEを訪ねた際に、PS3の設計陣に24p出力の話を切り出してみた。24p表示に対応するプロジェクターやディスプレイとの組み合わせで顕著な画質改善効果が期待できるので、ぜひソフトウェアのアップデートで実現して欲しいと要望したのである。すると、「すでに検討事項に入っているので期待してください」という返事が即座に返ってきた。それがこんなに早く実現するとは思っていなかった。

ソニーがブラビアの春モデルで24p表示に対応したのは、近いうちに24p表示のBDプレーヤーが発売されることを前提にしていたと思われるが、それよりも早くPS3が対応することもあらかじめ想定していたのかもしれない。国内市場に導入される再生専用機で24p出力に対応するモデルはパイオニアのBDP-LX70が一番早いと考えられていただけに、それよりも約1ヶ月早いタイミングでPS3が同機能をサポートしたことには正直驚かされた。しかし、これは大いに歓迎すべき嬉しい誤算であった。なにしろPDP-5000EXやDLA-HD1に表示する高画質ソースとして、一気に最上位の信号が居ながらにして手に入ったのだから。


(山之内 正)

山之内 正 プロフィール
神奈川県横浜市出身。東京都立大学理学部卒。在学時は原子物理学を専攻する。出版社勤務を経て、音楽の勉強のためドイツで1年間過ごす。帰国後より、デジタルAVやホームシアター分野の専門誌を中心に執筆。また年に数回、オペラ鑑賞のためドイツ、オーストリアへ渡航。音楽之友社刊の『グランドオペラ』にも執筆するなど、趣味の枠を越えてクラシック音楽の知識も深く、その視点はオーディオ機器の評論にも反映されている。

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