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ハイブリッドカメラ「DZ-HS303」を増田和夫が試す<2> ハードウェア構造をチェック

2006/09/19
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●ハイブリッド化で活きるマルチDVDドライブ

今回は、世界初のハイブリッドカムを実現したハードウエアをチェックしてみたい。

まず、ドライブ周りから見てみよう。本機は日立製のマルチDVDドライブを搭載している。マルチ対応は日立の伝統ワザで、本機では8cmDVD-R/RAM/-RWのほか一層+RWの記録再生もサポート。このドライブを使ってDVDに直接撮影もできるが、ハイブリッド機能を使って、まずHDDに撮ってから、DVDにダビングすると良いだろう。こうすることでマルチDVDドライブをさらに活かせる。今までのDVDカムのように、撮る際にどのDVDにするかを決める必要がなく、DVDプレーヤーやPCなどの再生環境に応じた各種DVDにダビングできるのが本機ならではの使いこなしといえる。撮り直しのきかないDVD-Rに好きなシーンだけをダビングできる点も重宝するだろう。

●いち早く最新のMicrodriveを搭載


日立GST社製の最新8GB HDD「Microdrive 3K8」をいち早く採用。組み込み専用HDDということでCFカードよりも縦サイズが短く抑えられている
そして、本機の大きな特徴であるHDD搭載を実現したのが、日立GST社製の組込専用の「Microdrive 3K8」の採用である。3K8は世界初の採用で、1インチ(約2.5cm)のコンパクトさで8GBの大容量を実現している。「3K8は、CFカードのリムーバブル用途ではなく、機器に組み込んで使うために作られたHDDです。このため、CFカードより外枠をスリムにでき、さらに回路基板を小さくすることで、HDDの体積を従来より23%小型化しています」(日立 以下同じ)。HDDは内蔵固定になるが、その分だけコンパクトに設計されているわけだ。

8GBというHDD容量については「ユーザー調査では、一度の撮影で2時間撮れれば十分、という結果が出ています。今までの片面DVDだとFINEモードで約30分しか撮れませんでしたが、8GBのHDDを使えばFINEモードで約3時間、標準モードだと約6時間も撮れますから、Microdriveで十分行ける、と判断しました」。


HDDは熱の影響を受けやすいため、発熱の多い液晶モニターや回路基板から最も離れた場所、つまりDVDドライブのドア内部に内蔵されている
さらに、かけがえのない映像を記録するビデオカメラでは、HDDのデータ保護に万全の対策が求められる。この点に関しては「万が一カメラを落とした場合に備えて、3次元落下センサーと、記録ヘッドを待避させてデータを保護する機構をHDDに内蔵しています。今までの落下センサーは外付けでしたが、HDDにセンサーを内蔵することで検出速度を向上させています。また記録ヘッドを約半分に軽量化して、素早い動作を可能にしています。このため、15cmからの落下でも検出できるようになりました。さらに特殊ゴム製のダンパーでHDDを支えて保護しています」。本機のハイブリッド化は、Microdriveの進化をいち早く取り入れた成果ともいえるだろう。

●従来機並みのサイズと重さを実現


DVDドライブのドア内の補強構造を見直すことで空間を作り、そこに超小型HDDを内蔵。従来機のモードダイアルの高さラインに沿ってHDDが実装されているので横幅は同じだ
「設計目標は、前モデルと較べてサイズは同等、重さも限りなく同じにすることを目指した」という通り、確かに、カメラを実際に手にしてみると、ハイブリッド機でありながら、今までとほぼ同じサイズと重さであることが実感できる。ここまで小型化できた秘訣は「HDDのレイアウトに工夫を凝らした成果です。単純にメカ内にHDDを組み込んでしまうと、横幅が増えて持ちにくくなってしまいます。また、熱対策や飛び込みノイズにも考慮する必要もありました。こうした課題を克服するため、DVDドライブのドアの内部に空間を空けて、そこにHDDを埋め込む形で内蔵しています。この機構によって、前モデルと同等の横幅を実現できました」。DVDドアの背がHDDの分だけ僅かに盛り上がっているが、持ちやすさに影響はない。むしろHDD部が手のひらにフィットして、グリップ感が向上している印象だ。

重さは前モデル比で15g増となっているが、Microdriveの重量が13gなので、重さの増加をほぼHDD分だけに抑えている計算になる。一般的に考えると、HDDを搭載するには回路の追加が必要で、その分だけ重さも増えそうなのだが、「従来のDVDカムでも、カメラの記録インターフェース回路にパラレルIDEを採用し、PCのように2ドライブに対応可能にしてありました。このため、大幅な回路変更なしにハイブリッド化を実現できたのです。マスタードライブがHDDで、スレーブドライブがDVDという構成になっています」。


取材の様子
高画質回路については「高画質回路ピクチャーマスター for DVDカムを採用しています。画質設定のパラメーターを変えて、よりナチュラル指向に設定してあります」とのことで、記憶色に傾き過ぎたカメラの絵作りを見直した画質設定だ。「MPEG2記録のビットレート配分を最適化して、動画にも強いエンコード設定を実現」しているというから、手持ち撮影が多く、常に被写体が動いているビデオ撮影にふさわしいチューニングといえるだろう。

開発陣の話を聞いていると、日立らしいモノ作りへのこだわりが感じられて興味深く思える。次回は実際の使い勝手をレポートしてみたい。

(増田和夫)

バックナンバー
・第1回:「カメラ革命」は本当か

増田和夫 プロフィール
パソコン&ネット歴十数年のベテランPC使い。PC雑誌やデジタル映像関係のメディアで活躍中。デジカメにも精通し、写真誌にスチル作品を発表するフォトグラファーでもある。 AV歴も長く、VTRは黎明期からβ・VHS共に熱中した大の録画機ファン。自宅ロフトでプロジェクターを楽しむ映画ファンでもある。DVDなどの記録媒体の記事にも強い。取材は現場主義で、ジャーナリスティックなインタビュー記事も得意としている。

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