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2005年半導体売上高は約1.3兆円を記録 − TI・テンプルトン社長来日記者会見

公開日 2006/03/30 16:30
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テキサス・インスツルメンツ・インコーポレイテッド リッチ・テンプルトン氏
日本テキサス・インスツルメンツ(株)は30日、同グループの事業戦略に関する記者説明会を開催した。会場には米テキサス・インスツルメンツ・インコーポレイテッドより社長兼CEOのリッチ・テンプルトン氏が足を運び、事業戦略の詳細を語った。

世界25ヶ国以上に製造・販売拠点を構えるテキサス・インスツルメンツは、2005年度において134億ドルの売上高を記録した。中でも同社のビジネスにとっての中核となる、半導体部門の売上高については117億ドル(約1.3兆円)を記録した。この成果についてテンプルトン氏は「2005年の売上高は過去最高の成績をあげるとともに、4年連続で業界シェアをアップすることができた」と自信をあらわにした。

半導体製品の売上げの内訳については「DSP製品」が40%、「アナログ製品」が40%、DLP製品やマイコン、汎用ロジックなどが含まれる「その他」が20%となる。2005年に大きな成長を遂げた製品分野については、3G携帯電話などモバイルデバイス向けの「OMAPプラットフォーム」や、ハイパフォーマンスアナログ製品などがテンプルトン氏より挙げられた。


日本テキサス・インスツルメンツ(株) 山崎俊行氏
テンプルトン氏はグループ全体のビジネスにおいて、日本市場は「グローバルな成長の中で特別に重要である」と位置づける。日本テキサス・インスツルメンツ(株)は、2005年度の売上高として3039億円を記録した。本日の記者説明会に出席した、同社代表取締役社長の山崎俊行氏はその挨拶の中で、「2005年に75周年を迎えたテキサス・インスツルメンツの節目の年に、良い業績を上げられたことをうれしく思う」と語り、同社の好調ぶりをアピールした。

2005年度はワールドワイドで大きな成長を遂げたテキサス・インスツルメンツだが、同社のビジネスポリシーのキーポイントとしてテンプルトン氏は「業界をリードする製品の開発と、サポート体制の充実」、「R&Dへの積極的な投資」、「カスタマーとの深く、永続的な関係の確立」を指摘した。このポリシーを基本に、ここ数年に大きな成長を遂げたDSP市場の製品について、さらに詳しく説明したテンプルトン氏は、今後の成長のキーポイントとして、「OMAPプラットフォーム」と「DaVinciテクノロジーの新製品」を強調した。


TIのDSP市場シェア解説
「OMAPプラットフォーム」についてテンプルトン氏は、3G携帯端末の世界のリーダー企業が次々と採用を決めたことによって、現在世界で出荷されている製品の110種類以上に採用されるに至ったという。今後、同分野においては低コスト・ローエンド端末の開発にさらなる貢献ができるとしながら、インドや中国、ブラジルといった携帯端末の新興市場の成長に期待を寄せる。また「DaVinciテクノロジー」については、現在、音声・オーディオ部門で既に大きなシェアを獲得している同社が、今後映像エンターテインメントや医療・産業のビジネスでも優位に立っていく際に、カスタマーに様々なソリューションを提供できる強力な商材であると語った。


TIが提供するシグナル・チェーンのイメージ
今後もテキサス・インスツルメンツは、業界のリーディングポジションを確保していくため、より上質な製品を幅広く展開していくためのシグナル・チェーンを実現していくという。テンプルトン氏はDSP製品、およびアナログ製品で「ベストを尽くす」ことが大事であり、殊にアナログ製品においては「当社が大きな強みとして認識している“パワーマネージメント”の分野に最も高い成長率が見込まれるとともに、そこに注力して高いレベルの製品を全世界に投入していきたい」とした。

またカスタマーに同社の最先端の製品やサービスを提供していくために「製造、R&Dを独自に行うことができる環境を充実させていくことがとても大切だ」とテンプルトン氏は語る。そのために、同社としては約30億ドルを投資し、米国テキサス州リチャードソン工場を建設し、現在稼働に向けた準備を進めている。本施設では65nm製品の量産化と、それ以上の微細化テクノロジーへの対応とともに、デジタル家電製品向けの広範囲なDSP、およびアナログ製品の製造が行われる予定だ。


TIのテクノロジー提供イメージ

TIの米国テキサス州リチャードソン工場イメージ
記者会見の最後にテンプルトン氏は、同社にとって独自に魅力的な製品を開発し、R&Dに力を注いで行くことよりもさらに重要なことは「カスタマーとの深い信頼によって結ばれた、強い関係を築き上げることである」としながら、今後も顧客ニーズへの的確で迅速な対応と、マーケティングリサーチに全力を挙げていきたいと意気込みを語った。

以下に本日の会場で執り行われた質疑応答の模様を紹介する。

【質疑応答】

Q:DaVinciテクノロジーを採用した最初の製品はいつ頃発表されるのか。今後のOMAPとDaVinciの売り上げへの期待値はどれほどか。
A:当社は既にDaVinciの技術を採用したDSPをサンプル出荷している。現在はそれらを採用いただいたカスタマーが新しい製品の開発に着手されている頃だろう。DaVinciは、これを応用できる製品の幅が極めて広いのが大きな特長だ。DaVinci、OMAPともに世界の多くのカスタマーに使っていただける魅力を持っていると信じている。

Q:2005年度に大きな売り上げの伸びを達成するにあたって、日本市場では何か特別なことを行ったのか。
A:当社の事業戦略は世界共通であり、日本で何か特別なことをやったわけではない。優れた製品を各分野で実現していくことだけだ。

Q:2006年度は、DSP製品のワールドワイドでの成長はどれくらいになると期待しているのか。
A:2006年度については直近の目標数値はまだわからないが、全般的に長期に渡って年間20%の成長が期待できると考えているし、そうなっていくだろう。

Q:アナログ製品でのパワーマネージメントの成長率が高いのはなぜか。
A:パワーマネージメントの技術は今、世界全体で成長を続けているが、その大きな理由のひとつは何よりポータブル機器がこれほどまでに普及してきたことだろう。これらポータブル機器の中に使われているパワーマネージメントに、昨今高いテクノロジーが必要とされている。

Q:アナログ製品の成長にとって、特に日本市場は多くの有力なコンペティターも存在する激戦区だが、今後はどのようにビジネスを展開していく考えか。
A:日本だけでなく、私たちは世界中で良きコンペティターとともにビジネスを展開している。幸い、当社は過去3年間で大きな成長を遂げることができた。プロダクトの進化にも力を入れてきたが、カスタマーとの関係をしっかり築いてきたことにより、成功をおさめることができた。バーブラウン社の買収なども、途中大きなポイントとなったように思う。

Q:製品の製造・開発を他社とのコラボレーションで行う方法は「ベストではない」とされているが、御社では単体での製造・開発能力を高めようとしているのはなぜか。
A:製品の製造・開発、そして量産を1社で全て管理して、プロセス開発を行うことが最先端技術のフィールドでベストのソリューションだ。当社は過去5年間に渡って自社単体でやってきた。今後65nmで成功していくために、お客様のサポートを充実させていく上でも自社単独で行っていくことがベストであると考えている。

(Phile-web編集部)



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