飯塚克味の「2003年、僕が見た映画祭についてあれこれ…」その2

2004年01月05日
●2003年12月13日から21日までの9日間、東京・恵比寿にある東京都写真美術館で『第5回NHKアジア・フィルム・フェスティバル』が開催された。この映画祭はNHKがアジアの各国の映画製作を支援し、そこで生まれた作品を上映していくというものだ。映画製作そのものとリンクしているため毎年開催とは行かないものの毎回、魅力的な作品が選出され観客の信頼は厚い。今年は新作5本の他、以前上映された作品や特集上映が行われ、例年にないほどの観客を集めることに成功した。またこの映画祭の特徴として参加作品がいずれもハイビジョン制作され、ハイクオリティな状態で観客に作品が届けられることを挙げておきたい。海外の現像では撮影時の質を維持できないことも多く、こうした環境で各国の作品を見ることができるのは実に貴重な機会なのだ。

まず何と言っても紹介したいのがタリバン政権から解放されたアフガニスタンが生んだセディク・バルマク監督の『アフガン・零年:OSAMA』。舞台となるのはまさにタリバン政権時のアフガニスタン。主人公の12歳の少女は生きるため髪を切り、男の子として働きに出ようとするがタリバンに捕らえられ想像を絶する体験をしていく。その壮絶な姿に今年のカンヌでも絶賛された話題作だ。本作のメイキングとなるNHKスペシャルも上映され作品を多角的に捉えられた観客も多かった。

インドからはムラリ・ナイール監督の『ストーリー・ビギンズ・アット・ジ・エンド』が参加。唇の下に巨大化していく謎のホクロができた男の姿を寓話的に描き、『ムトゥ踊るマハラジャ』などとは違ったインド映画の側面を見せてくれた。

香港からは女性監督キャロル・ライの『戀之風景』が上映された。人気スターのイーキン・チェンが出演していることもあって会場は大いににぎわっていた。

めったにお目にかかれないカザフスタン映画としてセリック・アプリモフ監督の『ハンター』も注目の作品だ。村から逃げ出した少年と山で暮らす狩人が共同生活を始める。狩人はやがて宿敵とする狼と一騎打ちをする事になる。その姿を見つめた少年は自分の人生を見つめ直していく…。壮大な自然を背景に山で生きる人間の生き様を描いた本作は見る者全てに深い感動を与える。監督は「ハリウッド映画は観客に考えさせなくとも済むようにしているが、自分は考えてもらいたいと思い映画を作っている」と語っていた。

イランの巨匠アッバス・キアロスタミ監督は特別参加作品として小津安二郎生誕100年記念作『OZUトリビュート・by・A.キアロスタミ』を上映。独自の視点で小津監督にオマージュを捧げていた。

その他に上映された作品も必見の作品ばかり。監督とのQ&Aも行われ興味深いコメントも数多く聞くことができた。普段、ハリウッド映画ばかり見ている映画ファンにはかなり新鮮に見える作品も多いはず。行けば映画に対する視野が広がることは間違いなし。次回の開催を心待ちにして欲しい!(飯塚克味)