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飯塚克味の「2003年、僕が見た映画祭についてあれこれ…」その1

公開日 2004/01/02 00:34
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山口雄大監督作品『ババアゾーン』/井口昇監督作品『中身刑事』
●1985年の開催以来、毎年行われてきた東京国際ファンタスティック映画祭。これまでのメイン会場だった渋谷パンテオンが6月いっぱいで閉館となったので今年は同様の規模を誇る新宿ミラノ座での開催となった。開催期間は10月30日から11月3日の5日間。古今東西、SF、ホラー、ファンタジー、アニメーションとジャンルを問わない作品選定には数多くの映画ファンが支持をしてきている。今年はオープニング作品に韓国の『ロスト・メモリーズ』、クロージングに『バレット・モンク』が選出された。両作品とも主演のチャン・ドンゴン、チョウ・ユンファが来日し、会場は異様なまでの熱気に包まれた。また『片腕ドラゴン対空とぶギロチン』では伝説の香港スター、ジミー・ウォングが会場に登場、作品上映後の舞台挨拶だっただけにファンの興奮は計り知れない物だった。

また東京ファンタの特徴として挙げられるのがDLPを駆使した最新作の上映だ。従来はフィルムという形態にならなければミラノ座クラスの劇場での上映は難しかった。しかし、DLPの登場によりビデオ素材が大スクリーンに映し出せるようになったのだ。東京ファンタでは数年前からデジタルシネマ特集として斬新な作品を発表し続けてきたが、最近では『AKIRA』や『クン・パオ 燃えよ鉄拳!』『ファントム・オブ・パラダイス』のクオリティに驚かされた。下手なフィルム上映より遙かに高品質な映像はこれからの映画そのもののあり方を確実に変えると思われた。

今年はスプラッター作品を集めた『ゴア・ゴア・ナイト』やセックス&バイオレンス映画の巨匠、ラス・メイヤー監督作品の特集『女性上位ナイト』、新作アニメを集めた『ファンタ・アニメセレクション』などでDLPが使用された。しかし使用頻度は確実に上がったが映像クオリティについてはかなりばらつきが出る結果となった。特に『ゴア・ゴア・ナイト』で上映されたアクション映画『レコニング・デイ』の画質は大画面ではかなり厳しく、アクションそのものは激しいものの感動までに至らなかったのは残念だ。また同時上映の『ブラッド・フィースト 血の祝祭日2』はスプラッターの始祖、ハーシェル・ゴードン・ルイス監督だけに作品内容は凄まじいものだった。しかし上映されたマスターがレターボックスの黒味部分に字幕が1行乗ってしまい、せっかくの大スクリーンにわざわざ画面を小さくすることになってしまったのはワイドテレビで気の利かないDVDを見ているようでむずがゆかった。

『アニメセレクション』ではさすがにどの作品も十分な鮮度で美しい映像が映し出されたが、内容面でいずれも食い足りなく1本の映画をこの環境でしっかり見たいと思えた。

こう書いていると悪かったことばかりのように思えるが収穫もあった。それは短編作品を集中的に上映した『600秒デジタルショートアワード』だ。600秒=10分の短編をプロアマ問わず3夜連続で上映し、今までにない衝撃を受けた。中でも今年『地獄甲子園』で注目された山口雄大監督の『ババアゾーン』と井口昇監督の『中身刑事』は完成度がずば抜けており大感動!自主制作の作品も極めて質の高い作品ばかりで来年のこの部門の開催に期待せずにはいられない。来年はいよいよ20回記念となる東京ファンタだが、来場者の心に残るような作品をもっともっと上映してもらいたい!(飯塚克味)

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