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<短期集中連載>お蕎麦屋さんでも見られる!「大地の芸術祭」ショートビデオフェスティヴァル大賞決定(補遺)

2003/09/04
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ワン・ゴンシン作品「米雪」
●現代美術の新しい作品には、映像を使用するものがきわめて多い。今回の越後妻有アートトリエンナーレに出品された作品の中にも、映像を使用したものがいくつも見られた。その中のいくつかを紹介しよう。
 
○ 長澤伸穂(日本・アメリカ)作品「透けて見える眼」
十日町市の郊外の小学校脇。緑の稲がそろう田んぼとならんで建つ古い民家でおこなわれたインスタレーション。
空家となっているこの家の一間ずつに、走馬灯がおかれ、そこに、光を通して、この地方に住みつづけて、親子三代がそろう家族の顔写真が映し出される。走馬灯内部の回転する映像と、外側の映像が重なり合い、観客は、家族が、この地方で重ねてきた歴史的な時間をこの土地の空間の中で感じることになる。
外側からだけ見ると古い板張りの暗い家だが、内部に入って、あたたかい走馬灯の光と、そこに映される人々の顔の温かい表情にあっと、息を呑む。美しい光景だ。

○ サビーナ・カマール(ドイツ)作品 「出現−消失」
十日町市内の交差点。昼間歩いていて、そのビルの一角に白い着物が下がっているなあと思っていたら、夕暮れ時から、そこに、人の姿が写っていた。洋装に移行して伝統的な和服を着る機会がない現代人の姿が白い着物に投影されている。着物の町、十日町の伝統を生かしたインスタレーション。

○ ワン・ゴンシン(王功新・中国)作品「米雪」(写真↑)
十日町本町通り沿いにある、新潟でも三軒しか残っていないという木造三階建ての古い商家。窓を閉めて暗くした二階の日本間におかれた螺鈿入りの4つの和机には、十日町の通りや、そこにいきかう人々の映像が映し出される。やがて白い雪のような米が、人々のイメージを消してゆく。部屋の奥には、米が円錐形に盛り上げられ、それをさするように、手の映像が映される。有名な米どころでもあるこの地方の暮らしのイメージが、しっとりと美しく投影されていた。この作品は絶対日本人が作ったのだと思ったら、作家は中国の人だ。自分たちの文化は自分達しかわからないだろうという思い込みがあったことに気付く体験だった。
 
 
(山之内優子)

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