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ソニーマーケティング社長・小寺 圭氏に聞く!<後編>

2001/12/29
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インタビューに応じる小寺社長

●■■■ハードウェアに様々なサービスを結び付けながら事業を展開しているソニーでは、日本で構築した質の高いビジネスモデルを世界へ展開していくという。その場合、ソニーマーケティングはグループのなかでも先頭を切っていかなければならない重要なポジションを担うことになる。ソニーマーケティングが担った重要な役割について、代表取締役社長の小寺 圭氏に聞いた。インタビュー後編記事をお送りする。(インタビュアー/音元出版代表取締役社長・和田光征 記事構成/SENKA21編集部)

「トップの信念が生きる徹底する力が流通の再編には大きく影響する」

●流通に求められているのは規模の大小よりも特長付け
 ―― 流通に目を移すと、2002年も再編がさらに進むものと思われます。すでに様々な形の提携が行われていますが、プライベートブランド(PB)も沢山出てくるのではないかと思いますが。

 小寺 再編ということでは、完全な合併や事業統合が行われればさらに大きな効果も出てくると思われます。ブランディングやシステムを統一するということになれば、効果も大きいでしょうね。
 PBということでは、どちらかと言うと白モノが中心で、AV機器などではお客様もあまり慣れていませんし、大量に買い取らなければなりませんから、それを売り切るためにある程度の時間が必要です。AV機器は商品のサイクルが短く進歩も早いですから、商品を選んでやっていくことが重要でしょうね。お客様に『PB=安物』と思われてしまっては意味がありませんから、そうではないものを作らなければならない。そこにブランド戦略までをも持ち込まないと、本当に成功はしないと思います。

 ―― いずれにしても、流通ルートが統合されようとしているなかで、AVの販売そのものは変わらなければならない。

 小寺 いくつに統合されても、個々の流通にそれぞれに特長がなければ難しいと思います。逆に、小さくても特長があれば十分に生き残れると思います。そう見ていくと、米国の流通の歴史が辿ってきた同じ道を日本も辿っているような気がしますね。サーキットシティ、ベストバイといったお店は、それぞれに生き残るための工夫があるんですね。

 例えば、接客ひとつとっても両者は特長を持っています。サーキットシティは割と密着型で、お客様がちょうど店内を一巡したころを見計らって接客をする。微妙ですが良いタイミングなんですね。お客様としては、買わされるという気持ちを持たず、必要なときには販売員がそばにいる。一方のベストバイはもうちょっと距離をおいていて、お客様に自由に見てもらう。そしてカウンターに行けばいつでも接客ができるようになっています。このほかにも、いろいろなお店がありますが、どの店もそれぞれ独自のカラーを持っているんですね。日本はまだまだそういう競争になっていない。接客や展示に個性が出ているわけではありません。

 ―― カメラ量販店のカメラ販売のように、カウンターを使った対面販売は非常に効率が良いですね。

 小寺 そういうお店にはトップの信念が売り場に生きているのでしょうね。マクドナルドが良い例で、全世界で同じ教育がなされている。そういう徹底する力というのが流通の再編に大きく影響してくるかもしれませんね。
加えて、これからの商品はどんどん難しくなっていきます。お客様は説明を聞かなければわからない商品が多くなるわけです。そのときに、本当に店員が説明しきれるかという問題があります。日本ではまだまだヘルパーに頼っている面も多いのですが、それではお店の特長を十分に教育できません。今、当社にもいろんな提案型の商品がありますが、売りこなせないお店も多く、お客様の方が先に進んでしまっている部分があります。この部分を上手にアピールできれば、別に大きなお店でなくとも勝ち残れるのではないかと思います。

 ―― 提案型商品の売り場ということでは、『第4の売り場』ということを言われていましたね。

 小寺 今、商談会や戦略会議などでは、流通の方々から「提案型の売り場作りをサポートして欲しい」という声が多いんです。AV、パソコン、携帯をつなげるようなコーナー作りはすでに始まっているのですが、それぞれはバラバラになっていて、売り場の時点でデバイドされてしまっているわけです。しかも商品が難しくなっていますから、展示する『コーナー』にはなっていても説明してモノが売れる『売り場』にはなっていない。今求められているのは本当の『売り場』だと思います。例えば、お客様が楽しむ目的別の売り場、なにか特定の商品を買いに行くというのではなく、使い方を買いに行くような売り場を作れば、説明する側も、買う側もわかりやすいと思います。

●今後のネットワーク環境に照準を合わせた展開が必要
 ―― さて、ここで少し市場の動向についてお聞かせいただきたいのですが、2年後、3年後ということではいかがお考えですか。

 小寺 テクノロジーということではそれほど大きな変化はないと思います。しかし、放送や通信といったインフラの部分は随分と変化すると思われます。放送がデジタル化し、通信がブロードバンド化するなかで、サービスが変化し、ライフスタイルが変わってくる。そういうときに、テレビ、ビデオ、パソコンなど、新しいネットワーク環境の下で一気に変えてしまおうという気運が高まってくる。今は夢のような話しかもしれませんが、それが現実の話になってくると思います。

 これまでお話しさせていただいたことは、一貫してそこに照準を合わせていただきたいということなのです。単にハードウェアを単品で売るということではなくて、売っているものがひとつのソリューションになっていなければならない。我々はお客様一件一件のお宅にソリューションパッケージを売っていくようなことをしていかなければならないということです。

 これからはテレビもネットワーク化してきますし、家庭のパソコンも2台、3台と増え、電話機もインターネットの端末になるでしょう。そうなればユーザーも混乱します。そういう時代に、1本のケーブルで簡単に接続できたり、設置、工事、設定などができるような体制を作っておかなければ、これから先は成り立たないと思います。

 ユビキタスという言葉が話題となっておりますが、これは便利さをパッケージにしてお客様に提供することだと言い換えることができると思います。この『パッケージ化』ということが、日本のマーケットには重要だと思いますね。そして、それをひと揃えにして提供できるのはソニーだけであると言いたいんですよね(笑)。

 ネットワークに繋がるシステムなどは、すべてオープンな環境で提供されていますが、すべてがオープンだとお客様も使い難い部分があります。電話会社も、ISPも、ECでの決済もすべて自由に選ぶことができますが、逆にすべて選んで扱うことは一般の方には非常に難しい。すべてをパッケージ化して提供できれば、その便利さを買ってくれると思います。

 ―― そうですね。そういうなかで、直近の2002年ということでは、具体的にどう展開していくのですか。

 小寺 これは社内でも言っていることですが、テレビに代表されるように、我々が売っている商品も最近では耐久消費財と言われてしまいます。これからはパソコンもビデオカメラもそうなるかもしれない。こういう経済環境の下では耐久消費財には出費をしないのです。ではどういうものに価値を見出すかというと、自分の趣味嗜好に合うもの、生活を豊かにするものを購入するわけで、それを実現するツールという切り口で商品を販売していけば、我々のビジネスそのものも自ずと見えてくると思います。

Kei Kodera
昭和21年9月26日東京都生まれ。昭和46年東京外国語大学外国語学部卒業後、昭和51年10月ソニー入社。以来、平成8年4月同社インターナショナルマーケティングセンターセンター長、平成9年7月ソニー・インターナショナル・ヨーロッパコンスーマー・グループ・ヨーロッパプレジデントなど海外を舞台に活躍。その後、平成11年11月ソニーマーケティング執行役員に就任し、平成12年1月経営企画部門副部門長、同年4月部門長を歴任。平成13年4月代表取締役に就任し現在に至る。趣味は絵画、写真、ゴルフ

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