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Anker Japan代表取締役CEO 猿渡 歩氏に聞く

【インタビュー】Anker製品を通じて、イノベーションと新たな価値をお客様にスピード感をもって届けていく

公開日 2026/08/04 06:30 ファイルウェブ編集部
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もはやモバイルバッテリーだけにとどまらない、総合ハードウェアメーカーへと躍進するAnker。この度、数ある製品ブランドを「Anker」へ統一、併せてロゴも一新された。その発表を日本法人Anker Japanが世界で先陣を切って行った。

飛ぶ鳥を落とす勢いで目標に掲げる売上1000億円を視界にとらえ、さらに次のステージを見据えるAnker Japan。代表取締役CEO 猿渡 歩氏に話を聞く。<インタビュアー 音元出版 代表取締役・風間雄介>

Anker Japan株式会社
代表取締役CEO
猿渡 歩

プロフィール/Deloitteにてコンサルティング業務やIPO支援に従事後、PEファンド日本産業パートナーズにてプライベート・エクイティ投資業務に携わる。Ankerの日本事業部門創設より参画し、同部門を統括。参入したほぼ全ての製品カテゴリーでオンラインシェア1位を実現するとともに、創業13年で売上830億円超を達成。現Anker Japan代表取締役CEOおよびAnker Store株式会社 代表取締役CEO。他EC関連企業の社外取締役や顧問も務める。著書「1位思考」。

 

Innovation, Faster.」。お客様にも製品にも求められる“スピード感”

―― 527日に、Ankerグループの日本における最新の取り組みや新製品を紹介する恒例の「Anker Power Conference 2026」が開催されました。いろいろな発表がありましたが、まず、製品ブランドを「Anker」に統合され、あわせてロゴも刷新されたことについて教えてください。

猿渡 今回のブランド統合は、実は日本法人がAnkerグローバルに先駆けた最初の発表となり、他の国では今年後半に発表を予定しています。例えば、オーディオ&ビジュアルブランドのSoundcore(サウンドコア)は、日本において特に若年層の認知が高まっており、残す価値があったかもしれません。

しかし、Ankerブランドに統合することで、「イヤホンもロボット掃除機もプロジェクターもAnker」と、お客様にとって選びやすくなるというメリットがあり、これまで日本法人では本社に働きかけを行っていました。

ブランディングの観点では、本社や他国と比較しても日本法人が一番進んでいます。マルチブランド戦略下でも、日本法人ではAnkerグループが展開するブランドとしてお客様に認識いただけるよう、それぞれのブランドで「by Anker」の表記を提案し、展開していました。

例えば、ロボット掃除機の「Eufy」(ユーフィ)は日本人には読みづらいこともあってか、Soundcoreに比較して認知が高くありません。しかし、Ankerグループが展開し、購入後の保証もしてくれるということでお客様から信頼をいただき、Amazonのロボット掃除機における売上ランキングでは1位を獲得しています。

ブランドを統合するこのタイミングで、Ankerのロゴのデザインも雷のマークで充電の意味合いが強かったこれまでのものから、力強く洗練されたイメージのものへと一新しました。それぞれの製品への新しいロゴの採用については、生産上の都合などもあり、順次反映を進めていきます。

―― 日本法人設立から14年目となる今年は、製品の国内累計販売台数が「1億台」を突破したことも発表されました。Ankerの製品がどの家庭にも約1台はある計算になります。

猿渡 Anker Japan設立当時には全く想像することができなかった販売台数です。メモリアルな数字で本当にうれしかったです。ここまで支えてくださった数多くのお客様や関係者の皆様に心より感謝申し上げます。

―― さらに、コーポレート・ミッションも新たに「Innovation, Faster.」を掲げられました。背景等について是非お聞かせください。

猿渡 実は本社であるAnker Innovationsでは新しいミッションとして「Ignite possibilities through ultimate innovation」が採用されています。これまでのミッション「Empowering Smarter Lives」(テクノロジーの力でスマートな生活を後押しする)に対する思いや取り組みが変わることはないのですが、Anker Japanにおいても設立当時とは状況が大きく変わってきており、ミッションの変更については以前より検討を重ねていました。

グローバルのミッション「Ignite possibilities through ultimate innovation」をそのまま採用するという考えもありましたが、このミッションは特に本社の開発チームに重きを置いたものと感じました。私たちは直接お客様とコミュニケーションすることが役割の日本マーケットチームですから、むしろ、お客様に対してどのようにコミュニケーションしていくのかが重要となります。そこで大切になるのは、革新的な価値の提供を、スピード感をもって実行していくことだと考えています。

お客様へのカスタマーサポート、取引先に対してのビジネス提案など、共通するキーワードはスピード感です。Ankerグループにおけるミッションはこれまで基本としてグローバル統一だったのですが、日本では違うものにしたいと申し出て、日本のみ独自の「Innovation, Faster.」となりました。

トップブランドの安全性への責務と自信を示した「Neo Lithium-ion Battery

―― 主力製品のモバイルバッテリーでは安全性に対する議論が俄かに高まっています。業界全体の安全基準の底上げを牽引されるトップブランドとして、今年2月に「包括的な安全性への取り組み」を発表され、「つくる」だけではなく、「つくる」「つかう」「すてる」まで責任を持つ姿勢を明確に打ち出されています。

そして、業界他社ではバッテリーセルにリチウムイオン電池の代替素材を採用した製品を投入するところが多く見受けられるなか、Ankerでは史上最高の安全基準を追求した独自のバッテリーセル「Neo Lithium-ion Battery」を発表されました。

猿渡 Anker Japanは昨年大きな製品回収を実施しました。高品質の原材料を使用し、高い基準の安全試験も実施していましたが、製造委託工場での管理体制に不備があり、グループ内で安全性を担保するための製造フローを大きく見直すことになりました。こうした部分も、製品をお客様に届ける我々の責任です。部材の仕入れ先から組み立てて使用されている製品まで、複数の工場を横断して一元管理ができる独自の製造現場の管理システムの導入やサプライヤーの委託基準の厳格化など、大幅な改善を断行しました。

本社のチームの体制もこれを契機にガラリと変えました。品質管理のチームを完全に独立させ、そこからの承認を得られないと製品が発売できない仕組みにしました。

今回のプレスイベントでも前半の約20分間にわたり安全性の話をさせていただきましたが、これは過去に行ったイベントでも例のないことです。皆さんが新製品を期待して足を運ばれているのは重々承知してはいましたが、私たちとして一番伝えたかった安全性に関するメッセージを最初にお届けしました。

―― モバイルバッテリーを取り巻く環境の変化をどのように見ていますか。

猿渡 モバイルバッテリーを作っているメーカーが少なく、カテゴリーの認知もまだ低かった当初は、使用方法をご理解いただいている方が多く、危険な使用もなく大きな問題はありませんでした。

ところが普及率が高まりお客様の層も広がるに伴い、しっかりと安全な使用方法をお伝えしなければ、真夏に車内に置いて平気で何時間もその場を離れてしまわれるということも発生しています。メーカーとして安全な使用方法をお知らせすることと、安心してお使いいただける高い安全性を担保した製品を提供すること、このどちらもしっかりと行う必要があります。

―― 「Neo Lithium-ion Battery」を搭載した初の製品として、さらに筐体やソフト面までトータルで安全性を高められた「Anker Nano Power BankMagGo, Plus)」を527日より予約販売されています。今後、従来モデルからの置き換えについてはどのようにお考えですか。

「Neo Lithium-ion Battery」を搭載した初の製品「Anker Nano Power Bank(MagGo Plus)」 

猿渡 段階的に切り替えるため、しばらくの間は併存するかたちになりますが、日本で発売する製品については、「Neo Lithium-ion Battery」を搭載した製品が中心になるよう目指していきます。

―― 「つくる」だけではなく、さらに「つかう」、そして最終的に「すてる」ところまで考えていらっしゃいます。4月に航空機内でのモバイルバッテリーの使用ルールが厳格化されましたが、スターフライヤーと提携し、運航する全路線・全便の機内へAnkerUSBケーブルの貸し出しサービスも開始されました。

猿渡 やはりインフラにおける連携はとても大切になります。また、ルール作りについてももっと力を入れていく必要があります。中国では強制製品認証制度「CCC認証」が厳格化され、日本の安全基準より厳しくなっています。当然、日本でもそれと同等以上の基準に引き上げていくべきです。

航空機内でのルールで言うと、機内でのモバイルバッテリーへの充電、モバイルバッテリーからの充電が禁止となったことで、お客様はスマートフォン等のデバイスの充電に不安を感じているはずです。こうした業界ルールの変更にもスピード感を持って対応することで、お客様に価値をお届けできればと思います。

―― モバイルバッテリーととともにリサイクル法の対象となるポータブル電源では、人気製品の「Anker Solix C1000 Gen 2 Portable Power Station」で業界初となる第三者認証「Sマーク」を取得されました。

業界初となる第三者認証Sマークを取得したポータブル電源「Anker Solix C1000 Gen 2 Portable Power Station」 

猿渡 ポータブル電源は電気用品安全法の対象外であるため、業界内での明確な安全性の基準がないことが懸念されていました。そこで新たにポータブル電源が第三者認証制度の「Sマーク」の認証対象に追加され、Anker Solixのポータブル電源が業界で初めての認証を取得しました。こうした取り組みの一つ一つが、Ankerが安全性に対してどのように業界を巻き込んで取り組んでいくのかの事例であり、Sマークはわかりやすいそのひとつの例になると思います。

―― 20251月より展開を開始され、20262月より発売を開始された家庭用蓄電池の新モデル「Anker Solix XJ 蓄電池セット」では、容量・出力などの大幅な進化にとどまらず、自然災害補償を標準装備した新しいアイデアが盛り込まれました。蓄電池事業の進捗はいかがでしょう。

自然災害補償を標準装備した「Anker Solix XJ蓄電池セット」 

猿渡 蓄電池の売上も展開を開始した昨年から順調に伸長しています。比較的高額な製品のため、モバイルバッテリーやポータブル電源でブランドへの信頼が高いAnkerだからこそとお選びいただくお客様も多くいらっしゃいます。

独自開発のAIチップ「Thus(ザス)」が提供する圧倒的な価値

―― 国内累計出荷台数が250万台を突破したLibertyシリーズ(※)から、完全ワイヤレスイヤホンの新製品「Soundcore Liberty 5 Pro Max」「Soundcore Liberty 5 Pro」が527日に発売され、大きな反響を集めています。CPUとメモリを一体化した革新的な構造を備えたAnker独自開発のAIチップ「Thus(ザス)」を搭載し、演算処理やノイズキャンセリングの性能を圧倒的に向上させたとアピールされています。

※「Soundcore Liberty Air 2 Pro」「Soundcore Liberty 4」「Soundcore Liberty 4 NC」「Soundcore Liberty 4 Pro」「Soundcore Liberty 5」「Soundcore Liberty Buds」の累計出荷台数(20264月時点 Anker調べ)

独自開発のAIチップ「Thus」を搭載し、Anker史上最高のノイズキャンセリング性能を誇る「Soundcore Liberty 5 Proシリーズ」 

猿渡 独自のチップは数年前から人員と時間をかけて開発を進めており、「Thus」の搭載により演算処理性能を前モデル「Soundcore Liberty 4 Pro」の最大150倍にも進化させました。これによりノイズキャンセリング性能だけでなく通話性能にも大きく寄与しており、大きな差別化ポイントと自負しています。

―― この圧倒的な能力を備えたチップを今後、外販していくお考えはおありですか。

猿渡 不可能ではないですが、今は考えていません。それよりはむしろ圧倒的な性能のチップで提供できる圧倒的な付加価値で、お客様に「Ankerを選ぼう」と思っていただくところへつなげていきたいですね。

―― Ankerの別のプロダクトジャンルへの「Thus」の展開も期待されますね。

猿渡 おっしゃる通りで、今回の技術はイヤホン以外にも利用できる大きな可能性を秘めています。CPUとメモリを一体化することで、データの移動にかかる膨大な消費電力を削減して演算処理性能を向上し、さらに省電力化にも大きく貢献しており、ロボット掃除機やプロジェクターといった別のカテゴリーへの応用も検討できるかもしれません。

―― 市場も大いに活気づくスマートプロジェクターへの注目度が高まっていますが、Soundcoreからは、ワイヤレススピーカーと組み合わせて4.1.2chの立体音響を体感できる「Nebula X1」、世界初の着脱式デュアルスピーカーを搭載した「Nebula P1」が登場し、さらに一歩踏み込んだホームシアターの提案にも力を入れていらっしゃいます。

世界初の着脱式デュアルスピーカーを搭載した「Soundcore Nebula P1」 

猿渡 プロジェクターは大変好調ですね。日本では100型以上の大画面を投写できる壁をしっかり確保できるご家庭もそんなに多くないのではと想像していましたが、「Nebula X1」専用の展示エリアを常設しているAnker Store渋谷などでは、視聴体験会を開催するたびに、その場で購入なさる方も多くいらっしゃいます。

Nebula X1」は40万円以上する高価な製品です。数十万円もする製品の買い物を、オンラインで即決できるかと言うとなかなかそうはいきません。そこはやはり、リアル店舗で実際にその映像と音楽の臨場感をお試しいただく体験が重要で、お客様とコミュニケーションをとりながら、しっかりと価値をお伝えしていくことがポイントです。

ホームシアターをグンと身近に引き寄せた「Soundcore Nebula X1」 

Nebula X1」には高音質低遅延のWi-Fiスピーカーが最初から付属していますから、後から買い足して設定する手間も必要ありません。複雑な配線や工事も不要で、届いたその日から極上のホームシアターを体験いただけます。ここまでの手応えからも潜在ニーズはかなり高いのではないでしょうか。

我々にしかない新たなプロダクトを開発

―― Anker Japanの過去5期の売上は、2021212億円、2022350憶円、2023494億円、2024728億円、そして2025830億円と右肩上がりで推移し、目標として掲げられる1000億円が手の届くところまできました。さらなる飛躍へプロダクトはどこまで広げていかれるのでしょうか。

猿渡 まだ具体的には言えませんが、しっかりとお客様のニーズを捉え、我々にしか価値創造できないような新しいプロダクトの開発を予定しています。日本ではすでにいろいろな製品カテゴリーで高いシェアを獲得しているため、ここからさらなる成長を求めるには、既存カテゴリーのシェアの維持だけでなく、新しい製品の展開が必要となります。イノベーティブな製品だけでなく、既存製品をより使いやすく改善するという方向性ももちろん検討しています。

例えばAppleでも、iPadiPhoneは新しいプロダクトではなく、すでにあったものをさらに良くするというアプローチです。後発だからこそ、しっかりと革新的な製品が作れれば、お客様にきちんと支持していただけると考えています。

充電器について言えば、日本ではすでにある程度のシェアがあるため、これからは、まだ充電器の存在を知らない皆さんにもっと知っていただける状態をつくりあげていくことの方が大事。充電器に興味がない人でも、「充電器を買うのならやはりAnkerにしよう」という状況をつくり出していきます。

―― 充電環境をより身近にして利便性を高めるための他社との連携を積極的に進められています。

猿渡 吉野家様とは昨年10月より順次、関東エリアの約220店舗の客席にAnkerの充電ボックスと充電ケーブルの設置を行いました。今年3月からは、全国80店舗のタリーズコーヒーに、最大100Wで充電が可能な巻取り式のUSB-Cケーブルを備えた急速充電ボックスを設置いたしました。

吉野家に続き、全国のタリーズコーヒー約80店舗にもAnkerの巻取り式USB-Cケーブルを備えた急速充電ボックスを設置 

日本交通グループをはじめとするタクシー車両へのAnker充電ケーブルの常時設置は20231月からスタートし、すでに全国で約6,000台のタクシーに設置が広まっています。また、関西国際空港では国際線の出発ゲート前に30箇所の充電スポットを設置しました。海外旅行や出張のフライト前に最大67Wの出力でスマートフォンやタブレットを充電でき、充電切れの心配をすることなく、フライト中や現地到着後に機器をご使用いただけます。

関西国際空港では国際線の出発ゲート前に30か所の充電スポットを設置。充電切れの心配なく旅を楽しめる 

また、店内全ての客席にUSBケーブルやマグネット式ワイヤレス充電機能を備えた「Anker Cafe」も、現在2店舗を展開しています。

―― 誰もがスマホを手にするなか、Anker Japanが率先して、どこでも急速充電できる環境を当たり前にされていく、と。

猿渡 例えば服装に対してあまり関心がない人が、いざ服を購入するときに自然とユニクロに足が向いてしまうように、わざわざ充電器をご自身で選んで購入した経験がない方にも「充電ができてよかった」という体験を提供することで、「充電器と言えばやはりAnkerだ」と自然に購入時の選択肢に入れていただけるようにしていきたいと考えています。

我々は良い製品をお届けできている自信があります。それを手にしていただければ、間違いなくハッピーになる。そういう世界観をつくりあげることができれば、今、売上1000億円を目指していますが、その先にある2000億円、3000億円という数字もかなりしっかり見えてくると確信しています。

さらに、2000億円、3000億円を目指すには、プロダクトラインやブランディング等、恐らく足りないところが出てきます。1000億円を超えた先を見据えて、開発チームや新規事業チームがいろいろな選択肢についてすでに検討を進めています。これからのAnker Japanにも是非ご期待ください。

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