真空管ヘッドホンアンプ、その美味なる世界。ZMF「Aegis」の魅力をフジヤエービックに聞く!
ZMFヘッドホンから初の真空管式ヘッドホンアンプが登場!
ハイエンドヘッドホンの世界で、いま確かな人気を高めているアメリカのZMF headphones。ウッドをベースにしたイヤーカップに、独特の艶のある音色感。創業者であるザック・メアファーさんの心意気が詰まったブランドとして、熱狂的ファンを獲得している。
これまでヘッドホンを中心に展開してきた同社だが、このたびついにヘッドホンアンプの開発に着手。しかも“タマアンプ”、EL34を2基搭載するゴージャズな本格的ヘッドホンアンプである。日本に初上陸した「Aegis」(イージス)の魅力について、老舗ヘッドホン/オーディオ専門店フジヤエービックの根本圭さんに伺ってみよう。
ウッドを多用したをZMFらしいデザインが目を惹く
ーー前回の「Caldera」に引き続きお時間いただきありがとうございます。ZMFのヘッドホンアンプが登場してきたということで、これはまた根本さんにお話を伺わなければと思いまして、インタビューをお願いしました。まずは製品の背景として、なぜいまZMFが真空管ヘッドホンアンプを出したのかについて、輸入元のブライトーン福林さん、改めて教えていただけますか?
福林 はい、ZMFとしても、以前から試聴会などで体験していただくためのヘッドホンアンプ開発は模索していたようです。これまではFeliks Audioというブランドと組んでやっていましたが、真空管アンプ開発ができる技術者と知り合いにあり、その人に依頼して自社で作るようになったそうです。
ーーその技術者さんというのはどういう方なのでしょう?
福林 キーナン・マックナイトさんという、オンラインコミュニティで有名な方だそうです。Head-Fiなどで「L0rdGwyn」というハンドルネームで活動しています。
彼にZMFのアンプとしてこういう音を追求したい、と依頼して作ってもらったと聞いています。彼は開発者なので量産はできないため、製造はカイン・ラボラトリーに頼んでいます。
ーーオンラインコミュニティから新しい製品開発が始まるというのは、いかにも今の時代らしいですね。パッと見て印象に残る、独特の佇まいを感じます。
福林 先日もヘッドホン祭miniに出展しましたが、通りかかる人がみな気になって声をかけてくれます。とても嬉しいことですね。フロントにVUメーターが付いていたり、パネルもウッディでクラシカルなデザインも特徴です。
ーー根本さんから見て、まずは見た目のファーストインプレッションはどうでしたか?
根本 ZMFというブランドの一番の魅力になっているのは、ハンドメイドなデザインを大切にしていることだと思っています。そういうのが好きな人に間違いなくハマるデザインですね。
さきほどお話にでたVUメーターもそうですし、切り替えもトグルスイッチがカチッとするのもすごく良い。そのあたりはしっかりこれまでのZMFブランドのデザインの流れを汲んでいますね。
ーー仰ること非常によくわかります。木を大切にしている点など、イメージの統一性がありますよね。
根本 一見、派手にも見えますが、トランスのケーシングも日本の蒔絵のようなイメージも感じます。日本の伝統工芸品にインスピレーションを得ているのかも、と想像しちゃいますね。イヤーカップのデザイン感と共通の印象を受けます。
ーー確かに、和のイメージがありますよね。では音はどうでしょう?
根本 これもやはりZMFの特徴である、温かみのある音をしっかり表現しつつ、しっかり力感を出してきているのも感じます。
ZMFのヘッドホンはパワーがないとしっかりドライブできないヘッドホンですが、ボリュームをそんなに上げなくてもちゃんと駆動できているな、十分なパワーを持っているな、という点は評価したいです。
なおかつ真空管ならではのふくよかさと、ZMFならではの味付け、それがしっかりマッチしているように思います。ホントにブランドのファンにとっては“待ってました!”という製品じゃないでしょうか。
ーーZMFに期待するものを、一切裏切ってこない感じがします。
シンプルな回路設計でピュアな音質を目指す
福林 実は今回発売するにあたって、日本向けの専用仕様にしています。日本は電圧が100Vですから、それに合わせてパーツ等も選定してもらい、中身の音の調整もしてもらっています。
根本 単にトランスを変えただけではないのですね。
福林 発売するならちゃんとした音のものを出す、というこだわりの人ですからね。
ーーザックさんらしいお話ですね。
根本 僕が聴いて気になった点は、今回のAegisにはバランスのヘッドホン端子(XLR)がついていますね。ですが、入力はRCAのアンバランスのみです。なぜこのような仕様になったのでしょう?
福林 はい、その点は私も気になったのでザックさんに直接聞きました。
ザックさんによると、そもそもこの真空管アンプはA級駆動ですが、内部はアンバランスで動作しています。
ですから、外からバランスで入って、内部でアンバランスにして、またバランスに戻すのは信号回路が複雑になって音が悪くなる、という考えだそうです。
なるべくシンプルな信号回路にして、ピュアで色気にある音にしたい、というこだわりだそうです。
ーーその考えは非常によくわかります。他の真空管アンプメーカーに聞いても、バランス入力は音質面から絶対に採用しない、という考えも聞きます。ですが、ヘッドホンアウトについてはバランスをつけている点が興味深いです。
福林 彼らの独自技術によって、バランスへの変換で理想とする設計が実現できた、ということがあるそうです。
根本 なるほど、ユーザーの利便性も考えたうえでベストな設計を狙っているのですね。こだわる部分は徹底的にこだわるし、利便性も重視してそのために必要な技術はしっかり考える。ますますザックさんらしい製品だと分かってきました。
ーー搭載する真空管についてはなにか狙いがあるのでしょうか?
福林 その点もお話させてください。そこはアンプ開発者のこだわりがありまして、普通のアンプは電圧駆動ですが、これは電流駆動となっています。
フロントのスイッチでロー/ミッド/ハイとインピーダンスの切り替えができますが、これは普通はヘッドホンのインピーダンスによって調整しますよね。
ですが、彼らは「音色の雰囲気が変わるので、どのポジションで聞いてもらっても良いです」と言っているのです。
ハイにすると少し高域がリッチになりますし、ローにするとすこし落ち着いた雰囲気になる。これは面白い使い方になると思います。先日の試聴会では、「Calderaはミッドが良いね、ハイだとちょっときつくなっちゃう」という声もありました。
根本 リスナーの好みに応じて選べるというのは、なかなか面白い設計ですよね。高価格帯のヘッドホンアンプになりますから、組み合わせるヘッドホンに合わせて遊べるところがあるのはありがたいですね。
パワーがありつつ柔らかい雰囲気が印象的
ーー私も聴かせてもらって、この重量感のあるトランスが効いているのでしょう、パワー感のあるアンプ、非常に足腰のしっかりしたアンプだなと思いました。
根本 はい、私もそれは同意で、特にヴォーカルの力強さが印象的でした。パワーがありつつ全体的に柔らかい雰囲気である、耳に刺激的にならないので、じっくりゆっくり聴けるアンプですよね。
福林 もうひとつ付け加えると、今回はプリ管とパワー感に加えて、整流管も真空管を使っています。整流管にはトランジスタが使われることも多いのですが、今回のAegisではそのことでより細やかな音が出ているのかな、と感じています。
ーー純A級アンプですから、本当に贅沢な使い方をしていますよね。A級アンプはどうしても熱が出るので、真夏は本当に大変ですが、熱い中にさらに熱くなってもらいたいですね。
根本 はい、ZMFに一度でも引っかかったことがある人は、ぜひ現物を見て、触って、音を聴いてほしいです。絶対に期待を裏切らない製品だと思います。
ここまで作り手のこだわりが前面に出ている製品は珍しいです。ザックさんの表情が見えるような感じがしますね。
福林 次回のイベントは、11月1日の「ヘッドフォン祭」に出展予定です。レコードを聴ける環境も用意しようかなと思っております。ぜひブライトーンのブースに立ち寄ってください!
ーーありがとうございました!
(提供:ブライトーン)


