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PR「120Vテクノロジー」を始めとする独自技術を訊く

オリジナル音響技術のメリットを解説!SPL本社キーマンを直撃インタビュー

公開日 2023/05/10 06:30 インタビュアー:岩井 喬/構成:プレミアムヘッドホンガイドマガジン編集部
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プロフェッショナルも認める、揺るぎない高音質。SPLのヘッドホンアンプ「Phonitor x」が、日本市場を席巻している。その高音質を支える「120Vテクノロジー」や「Phonitor Matrix」といった独自音響技術の詳細、こだわりのポイントを聞き出すべく、評論家の岩井喬氏とともに本社スタッフを直撃した。

デュッセルドルフ国際空港から1時間弱、ドイツのニーダークリュテンに本社を構えるSPL。メイド・イン・ジャーマニーにこだわり、すべてのプロダクトがここで開発・生産されている

音楽制作の現場から生まれたドイツ生まれのプロブランド



───ハーマンさんとフロッケンさん、おふたりのSPLブランドでのポジション、これまでのキャリアについて教えてください。

ハーマン SPLは1983年にヴォルフガング・ノイマン氏によって設立されたブランドで、私は1985年に加入して、製品開発に携わってきました。

フロッケン 音楽制作の現場でスタジオエンジニアをしていた頃から、SPLとは様々なプロジェクトを共にしてきて、約10年前から正式に入社しました。現在はマーケティングマネージャーを務めています。

左から創業者のヴォルフガング・ノイマン氏、現CEOのハーマン・ギア氏、マーケティングマネージャーのサッシャ・フロッケン氏

───ブランド名の由来について、教えてください。

ハーマン サウンドに与える影響、特に音圧やダイナミックレンジといった音の構成・構造が音楽に与える影響は大きいということに着目して、Sound Performance Labo(音のパフォーマンスを研究する)という言葉の頭文字からとっています。

───数多くのレコーディングスタジオに、マスタリング機器を納入されていると思うのですが、具体的にどのような場所で利用されているでしょうか?

フロッケン SPLには約40年の歴史があって、数多くのスタジオに製品を納入してきました。有名なマスタリングスタジオでは、グラミー受賞作品の録音を数多く手掛けている米国ポートランド州のGateway Mastering Studios やベルギーのGalaxy Studiosです。

この2つには「MMC1」という「120Vテクノロジー」を採用した、サラウンドに対応したマスタリングを行うことのできるコンソールを導入しています。また、新世代のマスタリングコンソール「DMC」については、新旧様々な録音スタジオで導入が進んでいます。いくつか事例を挙げるというよりは、ほとんどのスタジオが採用したことがある、というように今の時代のレファレンスになっているレベルだと自負しています。

───製品については、すべてドイツで生産・品質チェックされているのでしょうか?

ハーマン はい、すべてのSPLの製品は、本社工場で生産されています。また、品質管理についてもドイツ本社で厳密にチェックされています。たとえば、1製品につき30ページにもおよぶ計測結果を残すことも少なくありません。

数値上の厳しい基準をまずクリアしたうえで、感性評価も含めたオーディオテストに進みます。オーディオテストは4日間、製品を連続して使い続ける内容で、それをクリアしたものだけが出荷を認められます。

───設立以来、ずっと変わらず大切にしていることはありますか?

フロッケン SPLに集まっている人材は、ほとんどがオーディオや音楽制作を経験したことのある人たちです。新たないろいろなアイデアがありとあらゆる方面から集まってきて、それを製品化するというような作業が行われています。

いわゆる数字上の計測値で製品を開発する「正確性」も大事なのですが、一番大事にしているのは、その製品の音を耳で実際に聴いたときに、それがいかに芸術的であるか、アートの部分を擁していることができるのか。そういった部分が大事な要素として考えられていて、それが十分ではない製品は、数値がよいものだったとしても廃案になることがあります。そういう文化を持ったブランドです。

SPLの歴史を大きく変えた基幹技術とヘッドホンアンプ



───SPLブランドにとってエポックメイキングだった製品を挙げるとすると、どのモデルになりますか?

ハーマン まずはSPLの躍進のきっかけとなったものとして「Vitalizer」という製品があります。こちらは音楽制作のための機材で、普通のEQとは少し違ったキャラクターを持っていて、数多くのスタジオで採用されているエフェクターになります。これが80年代にリリースされました。そのあと10年ほど経って、「Transient Designer」という製品が出ています。

アタックとリリースを調整して音のメリハリをつけるような機材です。このあと、SPLの風向きを大きく変えることになったのは、やはり「120Vテクノロジー」の登場です。それを定義づけたのが「MMC(マスタリングコンソール)」と初代「Phonitor(ヘッドホンアンプ)」になります。初代Phonitorを生み出して以降は、いわゆるHi-Fi オーディオにSPLが手を出してゆく、そこに開拓していくことにおいて重要な礎を築いた最初の製品でした。

───なぜ、ヘッドホンアンプをつくることになったのでしょうか?

ハーマン 自宅スタジオでミックスの仕事をしていた時、上の階で2、3歳の娘が寝ていたんです。自分の作品を静かに、完璧に仕上げるためのヘッドホン再生環境を作る必要が、自分自身にもありました(笑)。そういう着想から2〜3年後に、実際にPhonitorを製品化して、世に発表することができました。

───Phonitorシリーズの名前の由来について教えてください。

ハーマン Headphoneの「phone」と「monitor」の2つの言葉を組み合わせてPhonitorです。

───Phonitorシリーズ3機種それぞれのラインナップでの位置づけ、特長について教えてください。

フロッケン Phonitorシリーズは日本のコンシューマー市場ではxe/x/sと展開されていますが、いずれも「120Vテクノロジー」を搭載していて、アナログの部分は同じ設計思想を共有しています。DAC部分については、搭載と非搭載を選べます。アナログのヘッドホンアンプとしてお選びいただくこともできるラインアップになっています。

フラグシップのxeが他の製品と比べて優れている点としては、「DLP120」という「120Vテクノロジー」で動作するローパスフィルターが挙げられます。PCMとDSD、それぞれDACから出力された音源に対して、アナログでローパスフィルターをかけることで、よりサウンドをなめらかにする機能がついています。これがxeの利点です。

他の製品については、この部分が搭載で、xは入力出力ともにバランス接続に対応、seは入力出力ともにアンバランスのみしかついていない兄弟機種です。アナログ部分の設計思想は共通化していますので、どのモデルを選んだとしても、SPLらしい高品位なサウンドでヘッドホンでの音楽鑑賞を楽しめる設計となっています。




Phonitor xとxe の最大の違いはDAC 部分(基板の右下のエリア)。DSD 音源が入力されたとき、x の「DAC768xs」の場合は、旭化成エレクトロニクスのDACチップ「AK4490」内のフィルターを使用するが、xeではDACチップの外に設けたDLP120という独自のアナログローパスフィルターで処理する(120Vテクノロジーも応用)という点が異なる。そのほか、xにはアクティブスピーカーなどの接続に使えるラインアウトが有るが、xeにはない。まとめると、さまざまな用途に使えるxに対して、ヘッドホンにおける最強音質を目指せるフラグシップがxeという立ち位置といっていい。


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