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<山本敦のAV進化論 第188回>

5Gは8Kで本領発揮。「AQUOS R5G」開発陣に聞いた新最上位スマホのこだわり

2020/04/16 山本 敦
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「画質で負けない8Kカメラ」のために一からレンズを開発した

本機のメインカメラは被写体との距離計測に使う3D ToFセンサーを含むクアッドレンズ(レンズ4基)仕様だ。8K動画は19mm相当・120度の画角をカバーする超広角レンズを使って撮影する。「8Kワイドカメラ」機能と名付けられている。

カメラシステムの隣に小さなマイク穴がある。動画撮影時の音声をクリアに録れる

8Kの解像度を残しながら、超広角レンズによる動画撮影を実現することは難しい挑戦だったと小野氏が振り返る。シャープは本機のために周辺光量と解像度の劣化が発生しないレンズを新規に開発した。シャープが早い段階から8K対応のスマホ向けカメラの技術を蓄積してきた成果が活きたと語る小野氏は「8Kカメラを搭載するスマホとして、どこにも負けない動画画質を実現している」と語った。

AQUOS R5Gでは8K/SDR画質の動画が撮影できる。ファイルの記録形式はH.265となり、本体の内蔵ストレージかmicroSDカードに保存される。約1分の8K動画のファイルサイズは550MB前後にもなるという。高画質な動画を残せる魅力は大きいものの、ファイルのデータ容量も膨らむため、できる限り “撮り損じ” は少なくしたいと多くのユーザーが考えるはずだ。そこでシャープの開発陣は超広角レンズにより画角を広く取りながら、解像度の高い動画ファイルから注目したい被写体に「クローズアップ(ズーム)再生して見る」楽しみ方を本機で提案している。これが「フォーカス再生」と呼ぶ機能だ。

詳細はフォーカス再生の企画・開発に携わった中川氏に聞いた。

「フォーカス再生」にはシャープのAIテクノロジーが活きている

AQUOS R5Gの「カメラ」アプリを立ち上げると、撮影メニューの中に写真・ビデオと並んで「8Kワイド」が単独で配置されている。これを選択するとカメラが超広角レンズに切り替わり、8K動画撮影がスタンバイ状態になる。

カメラアプリを起動して「8Kワイド」を選択すると8K動画撮影モードになる

撮影後のファイルは「フォト」アプリに保存される。再生時に画面に表示される「フォーカス再生」をタップすると、フレームの中に人、または犬や猫が入ってくると自動で被写体に寄ってズーム再生になる。筆者が試したところ、被写体の動きに合わせてズーミング操作の緩急も自動調節されるようだ。人物や動物の形をした置物などにも自動ズームが適用された。

フォーカス再生を実現するためには、ズーム操作の考え方を、静止画と動画の場合で分けて考える必要があったと中川氏が振り返る。一般的に静止画は、撮影前にズームで画角を調整してからシャッターを切る。対して動画の場合は撮影中にもズームを行う。そのため操作の難易度が高くなるのだという。

難易度を上げる要因は他にもある、と田中氏は説明する。大きな理由は動き続ける被写体を追尾フォーカスしなければならないからだ。カメラのズーム操作に気を取られると被写体の動きを追い切れないこともある。この課題を解消するため、あらかじめ画角を広く撮影しておき、後からAI処理によって自動追尾フォーカスを行う「フォーカス再生」のアイデアが生まれた。

フォーカス再生のズーミングにも工夫を凝らしている。動きが少ない被写体に対して毎度ズームしてしまうと画像が安定せず、心地よく画面を見ることができなくなるため、動きが少ない場合は、なるべく固定して動かさず、反対に被写体の動きが大きい場合には、しっかりズーム操作を行う仕様とした。フォーカス再生の挙動は基本的にAIアルゴリズムが制御しているが、例えばフレームの中に複数の人物が写っている場合などは、ズームしたい被写体を画面のダブルタップで選択できるようにもした。

AIによる自動追尾フォーカスを「フォーカス再生」機能により実現

フォーカス再生時の保存機能も、今後実施予定のアップデートにより追加する予定があるという。子どもの動画をフォーカス再生して、離れて暮らす家族にフルHD解像度の動画に変換して共有するといった楽しみ方ができるようになりそうだ。

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