HOME > インタビュー > やっぱりアマゾンは本気だった。「Amazon Music HD」が目指すのは全楽曲の高品位配信

<山本敦のAV進化論 第181回>

やっぱりアマゾンは本気だった。「Amazon Music HD」が目指すのは全楽曲の高品位配信

公開日 2019/11/28 06:40 山本 敦
  • Twitter
  • FaceBook
  • LINE

ハイレゾ対応でいまできていないことは「なるべく早く改善する」

Amazon Musicのアプリケーションについては、Windows PC環境ではASIOドライバーやWASAPI排他モードを使ったビットパーフェクト再生に対応ができないことや、「アルバムの購入」を選んだ先でハイレゾの楽曲が選択できているかを見分けづらい点などが指摘されている。

ファスコ氏はそれぞれがサービスをローンチした後にユーザーなどから寄せられた様々なフィードバックの中に含まれているものであるとしながら「なるべく早く皆様の要望に応えられるよう改善に取り組んでいる」と明言した。

モバイルアプリによる音楽再生は、特にAndroid OSを搭載するスマホやハイレゾ対応DAPの中にAmazon Music HDの音源をハイレゾのまま楽しめないものがあるようだ。筆者も手元にある端末から1台はAndroid 10、もう一台はAndroid 9を搭載するスマホを用意して、それぞれにOTG接続に対応する外付USB DACをつないで色々試してみたが、Ultra HDのタイトルを再生してからアプリの画面でストリーミング品質を確認すると、大半が接続している端末の性能や作品の音質が活かせずに48kHz/24bitで再生されてしまった。

Xperia 5にiBasso DC02を接続。Amazon Musicアプリからの出力は48kHz/24bitに制限されてしまう

原因をファスコ氏に訊ねてみた。ファスコ氏は「Amazon Musicアプリは一部のAndroid端末の機種の性能や、接続機器、ネットワーク環境により、ハイレゾ音質ではあるが48kHz/24bitまでになることがある」と述べている。例えばAndroid端末の場合は端末が意図している使用用途や品質(機能を限定して販売価格を抑えたエントリー向けスマホなどがあること)が様々であるため簡単なことではないがと前置きしつつ、「端末やアクセサリーの各メーカーとも協議や協業を続けながら、より多くのユーザーが高品位なサウンドを様々な場面で楽しめる環境を一緒に実現していきたいと考えています。そのためにAmazon Musicが良き媒介としての役目を果たしたい」と意気込みを語っている。

モバイル再生環境ではセルラーデータ通信を利用した場合、Ultra HD音質では最大192kHz/24bitのハイレゾ楽曲を3分半視聴した場合に153MBのデータ通信容量が必要となる。またスマートフォンにファイルをキャッシュしてオフラインで聴くとしても空きストレージの容量確保も必要になる。

iPad ProにiBasso DC02を接続してiOS版Amazon MusicアプリからUHD楽曲を再生

元ソースの最大音質である96kHz/24bitで出力されている

ファスコ氏はこの課題についても「認識している」としながら、同時にモバイル再生時にはアプリの設定から「HD/Ultra HD」ではなく「データ通信節約」を選んだりしながら、上手に通信データの消費量を抑えるためのメニューを設けていることについても強調している。ファスコ氏はさらに次のようにも話している。

MacのAmazon Musicアプリケーションも排他モードは行えないが、設定によりスペック通りの再生が可能。USB DACの実力も発揮できる

「5G時代の到来が間近に迫り、大容量のモバイルデータ通信を手軽に使えるプランが大手通信事業者から提供されています。かたや大容量のデータストレージメディアも価格がこなれてきました。Ultra HD/HDの音楽ストリーミングサービスを快適に楽しむために、現在ハードルになっている事柄は正常なテクノロジーの進化によって乗り越えられるだろうと楽観的に捉えています」(ファスコ氏)

なおTidal Mastersのように高品位な音楽体験を保ったまま、ストリーミングやダウンロードのデータサイズをコンパクトにできるMQAの技術に対する関心もファスコ氏に尋ねてみたが、現在はFLAC形式によるストリーミングがベストであると考えているようだ。

今後もAmazon Music HDに充実した機能・サービスを追加したい

今後アマゾンではAmazon Music HDをどんな音楽配信サービスとして育てていきたいと考えているのだろうか。年内に配信開始を予定している「360 Reality Audio」の詳細については今回のインタビュー時点で聞くことはできなかったが、ファスコ氏は次のように今後の目標を語ってくれた。

「Amazon Musicは始まりの頃から充実した作品数、スマートなコンテンツキュレーションサービスを提供してきました。Ultra HD/HD対応のコンテンツについても同様のキュレーションサービスをご利用いただけます。お客様からいただくフィードバックは私たちにとって、とても貴重なものです。一つ一つの内容を精査しながら、ご期待に応えられるような新しいサービスや体験を追加していきたいと考えています」(ファスコ氏)

Amazon Music HDのハイレゾ配信についてはまだ荒削りな部分もあるが、ファスコ氏へのインタビューから、アマゾンが今後ますます質の高いサービスにしていくために強い意気込みを持って取り組んでいることがとてもよく伝わってきた。ユーザーから寄せられているフィードバックもしっかりと伝わっているようで安心した次第だ。これからさらにエキサイティングなハイレゾ音楽配信サービスに変貌を遂げそうだ。筆者もぜひ長く付き合ってみたいと思う。

(山本 敦)

前へ 1 2 3

この記事をシェアする

  • Twitter
  • FaceBook
  • LINE