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哲学者と宗教学者の対談が炸裂!

黒崎政男×島田裕巳のオーディオ哲学宗教談義 Season 2「存在とはメンテナンスである」<第2回>

2019/01/18 季刊analog編集部
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デジタルDSD音源とLPレコードの比較

黒崎 次に試聴する音楽は、DSDにリマスタリングされているものです。PCMもありますが、DSDはクラシックやジャズと相性がいいと言われています。LPとデジタルのDSD音源を比較してみましょう。ついに、リンDSでもDSDが聴けるようになりましたので。

DSDにリマスタリングされた音楽ファイルを、KLIMAX DS/3で再生して、プリメインアンプV80SEに入れて、ピエガMaster Line Source 2で鳴らします。1000万円もするスピーカーです。

次にレコードをURIKA IIで鳴らします。こちらはリンのKLIMAX EXAKT 350、こちらは750万円ですね、こちらと接続して聴きます。リンのEXAKTシステム、つまりデジタルで鳴らすアナログということですね。

聴くのは、キース・ジャレットの『ケルン・コンサート』。こちらも一応、オリジナル盤で……。

島田 もういいです。黒崎さんが持っていたら、オリジナル盤だと思えばいいのです!

一同 (笑)

黒崎 LPのアナログ再生はいったんデジタルにして聴く、DSDのデジタル再生はふつうにアナログ変換して聴く…という頭がこんがらがるような接続ですが。では、DSDから聴いてください。

〜キース・ジャレット『ケルン・コンサート』DSDファイルを聴く〜
LINN KLIMAX DS/3、OCTAVE V80SE、PIEGA Master Line Source 2

キース・ジャレット/ケルン・コンサート DSDファイル


ピエガをドライブするのに使用したオクターブV80SE

ピエガMasterLineSource 2(中央)
黒崎 いいねぇ。いつまでも聴いていたくなります。

島田 キースもうまくなっているように聴こえる。

黒崎 スピーカーもいい。では次にアナログレコードを聴きましょう。

島田 こんなふうな比較ってなかなかないと思うよ。

〜同じ盤をアナログレコードで試聴〜
KLIMAX LP12、URIKA II、KLIMAX EXAKT DSM、KLIMAX EXAKT 350

キース・ジャレット/ケルン・コンサート LP

黒崎 私の好みかもしれませんが、リアルに感じるのはLPですね。環境音楽としてずーっと、ぽーっとしていたいならDSDで、スリリングに対面するならLPだ、生に近いのはLPだと思います。

島田 同じ演奏に聴こえない。

黒崎 本当にそこで弾いていて、何が起きるか分からないスリル感がLPにはあります。DSDは安心するというか、角が取れているのかな。

島田 教会音楽に聴こえる。教会で聴く音楽……。

黒崎 宗教学者、何難しいこと言って。

島田 DSDは音が降りてくる感覚。もちろんピエガの特徴かもしれませんが。人間離れしているというか。キースはクラシックも弾きます。だけどジャズファンからするとキースのクラシックはつまらない。でも、もしかしたらこのDSDで聴くと、彼の意図していることは全然違ったことだった、と分かるかもしれませんね。

黒崎 両方あればいいよね。レコードの持っているリアリティというものは凄くて、デジタルファイルではなかなか超えにくいところがある。SPレコードのリアリティをLPレコードではなかなか超えないし、LPレコードのリアリティはデジタルには超え難いというふうに思うんですけど。

島田 だから同じ形質のものが、デジタルを通るとこういうものになり、アナログを通るとこういうものになるという。

黒崎 1950年代から始まるLPレコードという古いメディアの方が音がいいなんて不思議ですよね。

ジム・ホールも聴いてみましょう。ではまず、DSDで。

〜ジム・ホール『アランフェス協奏曲』DSDファイルを聴く〜
LINN KLIMAX DS/3、OCTAVE V80SE、PIEGA Master Line Source 2

ジム・ホール/アランフェス協奏曲 DSDファイル

黒崎 トランペットはチェット・ベイカー?

島田 そう。珍しい組み合わせで、ジム・ホールとチェット・ベイカー、ポール・デスモンドとロン・カーター、ローランド・ハナ。

チェット・ベイカーは有名な話ですが、ドラッグ中毒です。チェット・ベイカーの自伝があるのですが、音楽の話というより彼がいかに薬を手に入れるために頑張ったかという記録で……。今の音聴いていると薬とは無縁に思える。薬が浄化されて天国に吸収されるような。

黒崎 50年代の『チェット・ベイカー・シングス』のトランペットや歌は非常に素晴らしい。だけど、ジャズミュージシャンは薬の問題がひどいよね。

島田 レコードでは薬の感じがどうなるか。

一同 (笑)。

黒崎 浄化されるかどうか(笑)。

〜同じ盤をアナログレコードで試聴〜
KLIMAX LP12、URIKA II、KLIMAX EXAKT DSM、KLIMAX EXAKT 350


ジム・ホール/ アランフェス協奏曲 LP
黒崎 魂というか。悲しさ、切なさが直に伝わってきますよね。人間の魂が叫んでいる感じがします。

島田 ちょっと薬はやっている感じもする。

一同 (笑)。

島田 最後の方で、ちょっと手の動きが怪しいかな(笑)。

黒崎 ゾクゾク感とかワクワク感がLPにはあって、心が聴こえるというか。切実なペットですよね。人生のいろんな辛さが詰まっています。

島田 僕なんかはいっぱいありすぎてさ、語りきれないけど。

宗教学者・島田裕巳氏

黒崎 語ってみる?


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