HOME > インタビュー > 32chレンダリングに対応。トリノフのAVプリ「ALTITUDE 32」開発者に聞く技術詳細

DTX:Sの開発プラットフォームにも使用

32chレンダリングに対応。トリノフのAVプリ「ALTITUDE 32」開発者に聞く技術詳細

公開日 2015/11/27 10:29 編集部:小澤 麻実
  • Twitter
  • FaceBook
  • LINE
スピーカー配置に合わせた最適なレンダリングを行うことで、より立体的で臨場感あるサラウンド音声を楽しめる「オブジェクトオーディオ」。ステラが取り扱うフランスのハイエンドオーディオブランドであるTRINNOV AUDIO(トリノフオーディオ)は、最大32chまでのレンダリングを行うことができるハイエンドAVプロセッサー「ALTITUDE 32」を手がけたことで、オーディオファンに加えてAVファンからも注目を集めている。今回、同社の創設者であるArnaud Laborie氏と、セールスマネージャーのArnaud Destinay氏にお話しを伺うことができた。

トリノフオーディオ 創設者のArnaud Laborie氏(右)とセールスマネージャーのArnaud Destinay氏

オブジェクトオーディオ対応ハイエンドAVプロセッサー「ALTITUDE 32」


トリノフオーディオとは?

TORINNOV AUDIO(トリノフオーディオ)は、2003年にフランス・パリ近郊で設立。ブランド名は一見ロシア語のような語感だが、「Tri(=3)+innovation」、つまり「3Dオーディオイノベーション」を意味する造語なのだという。

当初は映画館やスタジオ向けの機器、音響測定・補正技術を手掛け、2010年からはホーム分野にも参入。着実に規模を伸ばしている

研究は2001年にスタートし、映画館やスタジオ向けの機器、音響測定・補正技術を手掛ける。同社の製品は約900の映画館(主にフランス)に導入されているほか、NHKや東宝スタジオ、イマジカなどのスタジオにも納入実績を持っている。プロ向けに培った技術を家庭でも行かせるよう、2010年からは家庭用ハイエンドオーディオにも参入。2chオーディオシステムやホームシアターシステムのほか、JBL等のOEM事業も手掛けているという。まだ小さな会社ではあるが規模は着実に伸びており、2009年以降現在に至るまで収益は6倍にまでなったとのことだ。


注目のオブジェクトオーディオ対応AVプロセッサー「ALTITUDE 32」

そんなトリノフオーディオの最新注目モデルが、天井スピーカー10chを含む最大32chのデコードに対応したオブジェクトオーディオ対応ハイエンドAVプロセッサー/プリアンプ「ALTITUDE 32」(関連ニュース)だ。DTS:X開発時のプラットフォームとしても使用されたほどの性能を有しており、各方面から高い評価の声が挙がっている。

本機の大きな特徴は3つ。信号処理に汎用のDSPではなくインテルのクアッドコアi7プロセッサーを採用している点、大容量メモリ(GBオーダー)を搭載している点、そしてオーディオに特化したLinux OSを搭載している点だ。これにより高い信号処理能力を実現することができ、最大32chにものぼる多数のオブジェクトの動きを高精度にレンダリングすることが可能だという。Laborie氏は「これと同じことをDSPを使って実現しようとしたら、10基は必要になるのではないか」と語る。

DSPでなくインテルCPU等を使うことで、高い処理能力を実現するという

Arnaud Laborie氏

また、搭載するDSPによる制限も受けないため、仕様の自由度も高まり、開発期間の短縮化にもつながるというメリットもあるとのことだ。


オブジェクトオーディオの主要3方式に対応。特許取得の音響補正技術も開発

「ALTITUDE 32」は、オブジェクトオーディオの主要3方式である「ドルビーアトモス」「DTS:X」、そして国内ではまだ未導入の「Auro3D」に対応している。また、各方式のアップミキサーを搭載しており、5.1ch音声を各方式でオブジェクトオーディオ化することも可能とのこと。

推奨スピーカー配置が異なる3種類のフォーマットいずれも違和感なく再生できる配置を提唱。CEDIAにも採用された

各方式で推奨されるスピーカー配置が異なっているが、トリノフは各推奨値がオーバーラップする範囲を使うことで、3方式いずれも優れた再生ができるようなスピーカー配置を考案している(使用するスピーカーは9/11/12/15/19本のパターンを用意)。この方式はCEDIAの推奨値にも採用され、オブジェクトオーディオのホワイトペーパーにも掲載されるという。

トリノフの推奨するスピーカー配置

また、映画館やスタジオ向けで培った音響補正技術も投入されている。シアタールームの環境は様々であり、使用するスピーカーも全て同じものを揃えられない場合の方が多い。そこでトリノフでは、4つの無指向性マイクを使ってリスニングポイント+αの場所で集音を行い、その結果をもとにスピーカーの振幅や位相、インパルス応答をキャリブレーションする。

特許技術「3Dスピーカーリマッピング」により部屋環境をキャリブレーションする

これは同社の特許技術「3Dスピーカーリマッピング」によるもので、各スピーカーの位置情報(距離/方向/高さ)を1cm四方よりさらに高い精度で測定し、各フォーマットの推奨スピーカー配置にマッピングしなおすことで、優れた音質を実現するという。

補正時に使用するマイク。4つの無指向性マイクを搭載している

このように各スピーカーの詳細データを計測


補正前の音特性(左)と、「3Dスピーカーリマッピング」により補正した後の特性(右)


なおこの画面はアプリではなく、VNCビューアーでトリノフのLinux OSの画面を直接見るかたちとなる
今後この補正技術だけを他社に供与したりすることは検討しているか? と尋ねたところ、Laborie氏は「過去にはそういったこともしていたが、将来については何とも言えない。もっとシンプルな機能のものを提供したりする可能性もあるが、全く未定」と語っていた。

この記事をシェアする

  • Twitter
  • FaceBook
  • LINE