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早見沙織インタビュー 待望のアーティストデビューシングル「やさしい希望」の作詞に迫る

2015/08/10 高橋 敦
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あえて曖昧にしてあるサビの解釈

ーーー それでサビにたどり着いたわけですが、「わたしは今日笑えるようにあなたは明日微笑んでね」というこの一節が、言葉としてとても印象的で、だけど意味合いの受け取り方が難しいなとも思いました。例えば「わたしは」ではなくて「わたしが」だったら文章としてストレートで読み取りやすいのですけれど、そうはしていないという。

早見さん:ここは何度も入れ替えてみたり主語を変えてみたりと試行錯誤しました。始めに書き留めたメモでは「わたしは今日笑っておくから、あなたは余裕があったら明日笑ってくれると嬉しいな」というような感じだったんです。「今日のあなたに余裕がなくて笑顔でいられないなら、今日はわたしが代わりに笑っておくから、余裕ができたら明日はあなたも笑ってくれたら嬉しいな」という。それを曲に歌詞として当てはめていくうちに変化していって、いまのこの表現になったんです。

ーーー そのようにして出来上がったというこの歌詞を読んで僕の場合は、「あなたが明日笑ってくれるなら、その笑顔を思い浮かべて今日のわたしも笑っていられる」といったようなことなのかなと思ったんですが…

早見さん:…あ〜!

ーーー …え〜と、その反応からするとそうではないと。

早見さん:でもここはわたしの中でも意味を固めすぎずに、あえて曖昧なままに残しておいた部分でもあるんです。なので改めて読んでみると、自分で書いた歌詞なのにわたし自身も「どういうことだろう?」と思ったりもします。最初のメモの意味合いを歌詞にはめていく中でいつの間にかこうなっていたので、自分でもはっきりとはわからないところでもあるんです。そういう感じなので、いろんな方の解釈を聞くのも「あ、そうかも」って面白いんですよね。

ーーー では受け取る側もそれぞれがいろんな意味で受け取ってかまわないんですね。

早見さん:そうですね。タイムトリップしてる設定でも可! みたいな。いろいろ思い付くと思うので。

ーーー いやタイムトリップは思い付かないですよ。

早見さん:わたしもいま思い付いたところです。

ーーー という流れだったのですけれど、二番に入るとまた不安に襲われちゃってますよね。


早見沙織さんが抱く白雪への憧れも、歌詞の中には描かれている(C)あきづき空太・白泉社/「赤髪の白雪姫」製作委員会
早見さん:「赤髪の白雪姫」のヒロインの白雪は序盤から自分の力で切り開いていく女の子で、急展開にも負けずに進んでいきます。そこはわたしには真似できないところでもあり、でも憧れるところでもあって…

ーーー 白雪のようにいきなり「国を飛び出して」っていうスケールの話は僕らの現実にはないですけれど、でも普通に生きていく毎日の中でも何かしらの決断とかってありますよね。

早見さん:そうなんです! だから白雪への憧れであったり、そういう自分にもなりたいっていう願望があるから、いまはちょっとこわいけれど進んでみるというのがこの歌なんですけれど、その「ちょっとこわい」を歌っているのがその部分です。

ーーー 続いて「あなたが信じた景色にわたしをそっと重ねていく」から「あなたに今日雨が降るならわたしが明日傘をさす」へと続きます。「あなた」と「わたし」の関係、お互いの大切さが伝わってくるところですね。

早見さん:ここも「あなた」と「わたし」の主語を入れ替えるか入れ替えないかでぜんぜん意味が違ってくるんです。「わたし」が主体となって動いているところに対となる誰かがいるのか、誰かが主軸にあって「わたし」がそこに寄り添っていくのかで。そこはアニメの原作マンガを読み返してそれに合わせてもいますし、「こういう関係っていいよね」ってわたしが提示しているところでもあります。

最後のサビは二転三転してこの歌詞に

ーーー そして本当に最後のサビにいくと、ここまでは「見えるかな」だった言葉が「見えたんだ」に、「届くかな」だった言葉が「届けるよ」になって、迷いもあった心の動きがここで遂に着地している感じです。

早見さん:確信的になりますよね。

ーーー 受け取る側としても「わたし」の心がここにちゃんと収まってくれたことで、「よかった!」という気分にさせてもらえます。

早見さん:実はここも「見えるかな」のままにしておこうかとも思っていたんです。「"見えるかな この場所にいることを"」のようにダブルクォートかカギ括弧で括って。この歌のここまでを歌っていた「わたし」のことをここからは、そのときより時間が経ったあとの「わたし」があのときの自分の感情を思い返しつつ歌って、その過去の自分を回想して確認した上で、「見上げてたここから踏み出して 届けるよ」というイメージで。

ーーー あー! なるほど!

早見さん:でも作詞を進めていくうちに周囲から「ここは変えた方がいいんじゃないか?」という助言もありまして。

ーーー いま聞かせていただいた当初のイメージもすごく魅力的ですね。でも歌詞の言葉は同じままで" "で括って意味合いを変える形だと、歌詞カードなしの歌だけでそれを表現して伝えることも、こちらがそれをうまく受け取ることも、少し難しくなるのかなとも思いました。

早見さん:そうなんですよね。あと最初の「はじまり」がカギ括弧になっているので、他の部分でも「 」や" "を使うとくっきりさせたい部分が曖昧になってしまうんです。どちらをより強く立たせるかとなるとやっぱり「はじまり」の方だなって。なのでこの最後のサビの部分では括弧とかは使わずに直接的な表現にしました。

ーーー ひらがなのこともそうですけど、言葉を文字として見たときの印象とそれを歌として伝えるときにどう表現するのかというところは、作詞の難しさであり面白さなんでしょうね。

早見さん:それでいろいろ話し合って結局、ここまでの歌詞の中で「わたし」の心はもう決まっているはずだからということで、最後のこのサビは「見えたんだ」のようにはっきり言い切るこの歌詞に落ち着きました。

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