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新製品スペシャルインタビュー

東芝「RD-X10」の開発者・桑原氏に聞く「高画質・高音質」へのこだわり − 目指したのは“BD版の超弩級フラグシップ”

インタビュー/Phile-web編集部 山本 敦
2010年11月24日
東芝のBDレコーダー“REGZAブルーレイ”シリーズに、録画ファン待望の「RD」の型番を関したフラグシップモデル「RD-X10」が発売される。旧来録画機能の高さで定評のあるRDシリーズだが、その頂点に位置づけられる「RD-X10」には、他のラインナップを圧倒する高画質・高音質再生への、東芝の“こだわり”が詰め込まれている。今回、本機の商品企画を担当した澤岡氏、技術開発のリーダーである桑原氏に「RD-X10」の高品位な画と音に対する取り組みを訊ねた。〜インタビュー/Phile-web編集部 山本 敦〜




<写真左>東芝デジタルメディアエンジニアリング(株)
デジタルAV機器開発技術担当 HD映像・音声マイスタ チームマネージャー
桑原光孝氏

<写真右>(株)東芝 ビジュアルプロダクツ社
映像第一事業部 DVDマーケティング部 第一担当 参事
澤岡俊宏氏


■開発スタッフにとっても「いよいよ“RD”のBDレコーダーが出せる」という気持ちの高ぶりがあった

− まずは始めにRD-X10の開発がスタートした背景について教えてください。


“REGZAブルーレイ”のフラグシップモデル「RD-X10」
桑原氏:2009年9月に発売した「RD-X9」まで、当社では“RD-X”シリーズ(以下:Xシリーズ)をデジタルビデオレコーダーのフラグシップとして商品化してきました。今回BDレコーダーになって初めてのフラグシップモデルも、ぜひ“X”シリーズとして出したいという思いが開発チームの全員にあったことから、最新モデルを「RD-X10」として実現しました。当社のデジタルビデオレコーダーは、商品企画やラインナップ構成を澤岡が固めて、私がハードウェア開発のとりまとめを実施するという体制で開発しています。

従来、フラグシップのXシリーズは、下位機種をベースにしながら映像系・音声系を強化したモデルという位置づけでした。でも、今回「RD-X10」を開発するにあたっては、従来の考え方も当然大事だけれど、ただの強化だけでなく、“そのさらに先”を見ることができないかを考えました。BDレコーダーとして「最高の仕様」とは何かを追求して、従来のXシリーズよりも、もう少し“背伸びしたようなイメージ”を入れてみました。


− “背伸びしたイメージ”とは、具体的にどんなものだったのでしょうか。

桑原氏:従来のXシリーズでは、DAコンバーター、ビデオ系のIC、そして外装を他のラインナップよりワンレベル高くするというアプローチでした。例えば再生の系の拡張よりは、クオリティを上げることに差別化を求めてきました。今回のRD-X10ではただ単に質をあげるだけでなく、機能としてもより上位の概念を持たせることを検討しました。例えばHDMIのデュアル出力や、アナログ7.1ch音声出力を搭載した点などは、下位機種にはない機能であり、RD-X10ならではのこだわりです。

澤岡氏:東芝のRDシリーズは、従来機から「たっぷり録る」「きれいに残す」「きれいに見る」というコンセプトにこだわりながら開発しています。RD-X10では2TBのHDDを内蔵し、外付USB HDDもつないで録画可能容量を増やして「たっぷり録る」ことができます。

「きれいに残す」という点では、内蔵HDDからBDディスクにダビングする際、1枚のディスクにぴったり収めたい時には内蔵のMPEG-4 AVCトランスコーダーを使って、画質のビットレートを「0.1Mbps」単位で、自動で非常にきめ細かく設定できる「ディスクぴったりダビング」機能を持っています。画質を数段階の中からアバウトに設定するレコーダーよりも、画質の良い条件で残せるところがポイントです。しかも安定して2倍速が出せる高速トランスコードが可能です。

「きれいに見る」という点については、ハードウェア的な部分で磨きをかけることで高画質を実現しています。この点については、桑原が所属する技術開発のスタッフに色々とお願いして、X10のような最上位機種にふさわしいような、さらに上の仕様を目指してきました。

本体のデザインはRD-X10も、他のRD-BZ、RD-BRともに共通なのですが、RD-X3の頃からこだわり続けているステンレス製のリアパネルや、非磁性体のビス、インシュレーターなど筐体の高品位にもこだわりました。フロントパネルにエンジェル・デメル社のアルミパーツを用いたり、外観についても少しでも高価な製品を買っていただいた方々に贅沢感を味わっていただこうということで、商品企画としてこだわりました。

電源を投入するとフロントパネルにブルーのイルミネーションが灯る

BDドライブはフロント左側に配置されている


− 東芝の“RD”シリーズ最上位モデルが初めてBDレコーダーとして登場するということで、周囲の期待も高いモデルですが、開発者の方々も意識はしていましたか。

澤岡氏:そうですね。東芝初のBDレコーダーとしては、今年の春に“Dシリーズ”を発売しましたが、私たちとしては基本的に最初から“RD”として出したかったという思いはありました。ただ時間的な制約があって、どうしても秋までかかってしまいました。今回いよいよ“RD”が出せるということで、私たちも気持ちを高ぶらせてきました。


− 実際に今度のRDシリーズのラインナップの企画が立ち上がったのはいつ頃で、その構想はどのようにして商品として固まっていったのでしょうか。

桑原氏:「RD-X10」単体というわけでなく、下位モデルのBD-BZ、RD-BRシリーズとほぼ同時に開発はスタートし、進んでいきました。東芝のRDシリーズとして、どんな商品にすべきかというディスカッションはずっと重ねてきましたが、試作を開始して、本格的な開発に着手したのは今年の初春頃でした。

澤岡氏:確かに今回のシリーズの開発に着手したのは初春頃ですが、開発チームには歴代のRDシリーズを担当してきた者が多くいますので、「RD-X10にするならこうだよね」という暗黙の流れみたいなものは大体できていました。そういう意味では過去から開発のノウハウが積み重なってきて、必然的に今回のRDシリーズのコンセプトや仕様が固まってきたと言えます。


■「RD-X10」で目指した画・音は、“ブルーレイ版の「RD-A1」”と呼べるような超弩級フラグシップのクオリティ

− 新しいREGZAブルーレイのラインナップの中で「RD-X10」だけが採用する“こだわり”のポイントにはどんなものがありますか。

桑原氏:まずはじめに、デジタルの部分ではHDMI端子をデュアルで装備していることです。うち1系統は完全にオーディオにフォーカスした専用のサブ出力としています。オーディオ専用端子ではさらに、伝送クロックレートを最大で1080i相当に抑えて出力することで、アンプ側でのノイズの増加を抑えて、高音質化を図っています。RD-X9でもHDMIの出力の高音質化にはチャレンジしてきましたが、RD-X10ではそれをさらに押し進めてジッタを改善するためのアルゴリズムも採用しています。

澤岡氏:最近ではHDMIのデュアル出力を搭載しているBDプレーヤーやBDレコーダーも増えてきましたが、その分、2系統の使い分けがわからないという声であったり、音声専用端子に接続して、映像が出なくて困ったというユーザーの声をよく耳にするようにもなりました。当社の場合はよりピュアに徹して、音声専用からは一切映像が出ない仕様にしています。他社からは2系統のHDMIそれぞれを映像と音声に切り替えて使える製品もありますが、RD-X10の場合はメインのHDMI端子は映像とハイビットレートオーディオを含む全情報が出力できるようになっている一方、サブの音声専用端子からは絶対に映像が出力できないようになっています。出荷段階では音声専用端子にはシールで封をしていますし、背面パネルにも「音声専用」のプリントを施しています。ここまで徹底することで、ユーザーの方々が使い方に迷ったり、誤動作に困ることがないようにという考え方もあります。

RD-X10の背面端子部

本体フロントにはi.Link端子も搭載。「RD間i.LinkダビングHD」により、東芝の従来機と接続して、過去に録りためたコンテンツをRD-X10のHDDに無劣化でムーブできる


− 今回RD-X10の「高音質」を語る上で見逃せない、アナログ7.1ch音声出力を設けた理由について教えてください。

桑原氏:開発者としては今回、7.1chアナログ音声出力の搭載は“どうしてもやってみたいこと”の一つでした。「RD-X10」の位置づけについては、東芝がかつて発表したHD DVDレコーダーのフラグシップモデル「RD-A1」であったり、もっと遡ればDVDプレーヤーのフラグシップ「SD9500」の流れを組む製品です。これらの製品で試みてきた「高品位なアナログマルチ音声出力の搭載」というアプローチを、なぜ今になってもう一度チャレンジしたのかというと、SD9500の発売当時と比べて、現在のデバイスがまたかなり進化していることを実感して、「これならばぜひ、新しいBDレコーダーのフラグシップに使ってみたい」と考えたからです。


− RD-A1、SD9500も桑原さんが設計の中心、澤岡さんが商品企画担当という組み合わせだったのでしょうか。

桑原氏:そうです。澤岡がRDシリーズの商品企画をずっと担当していて、私はDVDが誕生した頃から、ずっとDVD関連製品の担当をしています。今回RD-X10では、DAコンバーターに東芝として初めて、ESS社の「ES9016 Sabre32 Ultra DAC」という32bit対応のDACチップを採用しました。RD-X10では現状最高のフォーマットである192kHz/32bitで使用していますが、本来このデバイスは「384kHz」まで受けられる性能を持っていますので、192kHzでの駆動においても、大変ゆとりをもって性能をフルに発揮してくれます。

しかも、デバイスはワンパッケージで8ch分のDA変換をサポートしますので、RD-X10では今回、2chのコンテンツを出力する際には、8つ内蔵されているDACをそれぞれ「4×2ch」に振り分けて、合成してステレオ出力する「メガ・レゾリューション・パラレルDAC」と呼んでいる機能を搭載しており、さらに高品位なステレオ再生が楽しめます。本機能については、当社のマルチチャンネル対応のレコーダーやプレーヤーが継承してきた独自のファンクションです。

とはいえ、ただ高性能なDACチップを使えば音が良くなるというわけではありませんので、今回は周辺の部品なども洗い直して、オペアンプなども非常に高速・高音質のデバイスを選択しています。その結果、スペックは歪率が0.0005%以下、Dレンジは120dB以上というグレードを実現しました。おそらくHiFi機器の中でも、このレベルの能力を備えている製品はそうは多くないと思います。DACチップをいかに上手に使いこなすかで音が変わってきます。その辺りの技術については、東芝の従来機で培ってきたノウハウがありますので、今回のRD-X10でもそれが活きていると思います。


− アナログ7.1chの音声出力はRD-X10から初めて採用された仕様ですね。

桑原氏:はい、そうです。おそらくBDレコーダーとしてもRD-X10が初めて搭載する機能だと思います。RD-X10で出来ることを追求していく段階では、とにかく他社のBDレコーダーでやってないことを盛り込みたいと考えました。ハイエンドのレコーダーを選ぶ方は多機能も重要ですが、画質・音質にもこだわって製品を選ばれるだろうと考えました。HDMIについては、ハイグレードなアプローチを試みている製品もありますが、アナログ音声出力については2chどまりでした。そこで当社としては従来の2chでグレードの高いシステムをお持ちの方や、ハイクラスなBDプレーヤーを購入したいと考えているけど、どうせなら録画もできればいいなと、迷っている方に対してアピールできる魅力は何かと考え、7.1chアナログ音声出力を搭載するという方向を選択しました。社内でも「そんな仕様がRD-X10必要か?」という声もありましたが、「私は絶対に必要だ」と押し通しました(笑)。

RD-X10(上)とRD-BZ800(下)との端子比較。デュアルHDMI端子、7.1chアナログ出力端子はX10ならではのフィーチャーだ

RD-X10(上)は電源ケーブルの交換にも対応する

とはいえ、当然HDMIのサウンドをないがしろにするつもりはありません。HDMIならではの画質・音質追求は当然していますし、アナログ出力について言えば、アナログであることの魅力を聴いて、わかっていただけるレベルまではクオリティを高めることができたと自負しています。

それと、今回のモデルではもう一つ、DACの前段にアナログ・デバイセズ社の32bit DSPを搭載しました。こちらのデバイスは、マルチチャンネル再生時のスピーカーコンフィグやチャンネルディレイなどの役割を担っていますが、もう一つは入力されたコンテンツストリームを192kHz/32bit、または176.4kHz/32bitに常時アップサンプリングする回路も搭載しています。同様の回路はHD DVDレコーダーの「RD-A1」にも入れていたのですが、フラグシップモデルならではの高音質ソリューションとして好評をいただいておりました。

あとはオーディオパーツについても高品位なものを選択しています。オペアンプにはJRC製の「NJM2114M」を全チャンネルに搭載して、DACの性能を十分に引き出せるようにしています。マスタークロック発振器も変更して、位相雑音がかなり抑えられるデバイスを新しく採用しています。回路基板についてもGNDのインピーダンスを低く抑えられるガラスエポキシ製4層基盤を用いています。

開発者としては「RD-X10」を“ブルーレイ版の「RD-A1」”といったような心づもりでつくってきました。見た目はだいぶ現代風にスマートになりましたが、BDで最高級機を出すのであれば、RD-A1のように“超弩級”な機能・性能を実現したいという思いがありました。


− RD-X10の高音質再生機能を使いこなす上で、ユーザーにどんな楽しみ方をお薦めされたいですか。

桑原氏:特徴的なところでは、メニューに「高品位音声出力設定」という項目を設けました。HDMIについてはハイビットレートオーディオの音声出力をメインとサブのどちらに割り当てるか、こちらで設定を選べるようになっています。ここでHDMIを選ぶとサブ出力のHDMIにハイビットレートオーディオを振り分け、光を選べば、ハイビットレート出力はできませんが、光出力からビットストリーム出力が可能になりますので、従来のアナログアンプをお使いの方にもマルチチャンネル再生を楽しんでいただけます。さらにこちらでアナログ音声を選べば、7.1chのマルチ、または2chのステレオで高品位オーディオ再生が楽しめます。

RD-X10のメニュー画面から「再生機能設定」に入り、「高品位音声優先出力設定」を選択


アナログ音声は「2ch」「7.1ch」から選択が可能

アナログ7.1ch出力時はスピーカーコンフィグも行える
アナログ音声出力を楽しまれる際にご提案したい使い方としては、ここで「7.1ch」に設定していただくのが良いかと思います。RD-X10は2ch専用の出力端子を持っていて、こちらの端子には信号経路に一切の切り替え回路が入っておらず、2chの音声がダイレクトにきています。その代わり、マルチチャンネルのストリームを再生する時には、こちらからは音を出すことができません。一方で、7.1ch音声出力のフロントL/R端子には省信号リレーによる切り替え回路が入っておりますので、マルチチャンネル再生の音はフロントL/Rから出るし、2chのソース再生している時には、先ほど申し上げた「メガ・レゾリューション・パラレルDAC」により、8chのストリームを4×2に振り分けて合成した高品位なソースが出るようになっています。ですので、7.1chアナログのL/R出力を2chのアンプに接続していただければ、ソースによってサラウンドのフロント音声を出力したり、2chでハイクオリティに出力したりといった使い方に対応できます。

もうひとつ、ぜひ試していただきたい使い方があります。BDビデオの副音声/効果音が「入」になっていると、ハイビットレートオーディオが出力されない場合がありますので、こちらは設定を「切」で使って下さい。さらにダイナミックレンジコントロールの設定です。こちらはデフォルトで「入」になっていますが、特にアナログ接続で楽しんでいただく際や、HDMI接続時でもリニアPCMで再生する際にはぜひ「切」にして欲しいと思います。なぜかと言えば、DVDの頃もそうだったのですが、コンテンツを収録したディスクにはダイナミックレンジを自動調整するためのフラグがタイトル情報に記録されています。この情報を再生機器が読み取ると、コンテンツに収録されている音はフルに出されるものの、再生機器の回路がDレンジを抑えるよう指示を受けて、出力を絞ってしまう仕様になっています。しかもDVDの頃よりも、BDになってからの方がより抑え方がきつくなっているように感じます。ですので、こちらはぜひRD-X10のオーナーであれば「切」で使って、ディスクに収録されている音をフルに楽しんでいただければと思います。

RD-X10のメニュー画面。「BD/DVDプレイヤー設定」から「BD/DVD Dレンジコントロール」に入る

「入/切/自動」が選択可能


■高画質技術「XDE」がさらに進化 − あの超解像技術が投入された

− 映像の方では独自の高画質技術「XDE」がさらに進化して、「レゾリューションプラスXDE」になりましたが、こちらについてはどんな技術でしょうか。

桑原氏:XDEは今回のシリーズから超解像技術を追加して「XDEレゾリューションプラス」という名称の新バージョンになりました。こちらは再構成型の超解像技術をベースにしていますが、入力された映像は3次元デジタルNR、アップスケーリングのプリプロセスを経て、差分検出/ボケ検出/先鋭化処理/原画像プロセスシミュレーションといった再構成処理を行い、最終的にI/P変換してから出力するという流れで、より高画質な映像を実現しています。今回XDEの映像の作り込みについては、当社のREGZAシリーズはもちろんのこと、様々なプロジェクターやアナログテレビと組み合わせて検証を重ねました。

東芝の液晶テレビ“REGZA”シリーズとの組み合わせでは、テレビの方も超解像処理を行っていますので、「超解像×超解像」がぶつかり合ってしてしまうことも想定しました。「XDEレゾリューションプラス」を搭載したREGZAブルーレイは、HDMI接続時に「相手がどの機器か、REGZAなのか」を自動認識して、REGZAがつながった場合はレコーダーの方で超解像処理を最適化して、組み合わせ固有の設定で自動に最適な処理状態で出力できるようになっています。


− その超解像の自動処理はすべて自動で行っているのでしょうか。

桑原氏:機器どうしをHDMIケーブルでつないで、「レグザリンク(HDMI連動」の項目を「入」にしてあれば、あとはユーザーがそれぞれの機器で超解像の設定を行う必要はありません。テレビのREGZAの側で超解像を「ON/OFF」どちらに設定していた場合でも、レコーダーの側で認識して、XDEレゾリューションプラスのレベルを最適にして映像を送り出します。


− RD-X10では音と映像、それぞれの“味付け”をどのように行ってきたのでしょうか。

桑原氏:基本的には「余計な味付けはせず、ソースのあるがままを忠実に再現すること」がRDシリーズのコンセプトです。とはいえ、多くの機器の中で比べるとやはり「東芝のカラー」はあると思います。例えば「音」については内部の様々な部品の選定や、細かな製造工程における工夫などで、東芝の製品としての色彩を帯びていくものです。私の役割としては、最終的に完成した東芝の商品として、その進化形にふさわしい画質・音質であるかを評価する立場にあります。評価のポイントとしては、基本的にはワイドレンジ、高SN比を獲得しているかを判断し、オーディオ的に言うならば「より豊かに・より情報量を多く」再現できているかをチェックします。ソースの魅力を妙に丸め込んでしまうことなく、あるがままに出せるだけのものを出すべきという考え方を基本としています。

画づくりという観点では、「XDE」の仕上げには苦労しました。最初はプログラムの開発担当者にざっくりとした部分をつくってもらい、一緒に映像を確認しながら微調整を繰り返していくという作業でした。それを今度はテレビのREGZAの超解像と組み合わせながら評価して、次は液晶プロジェクター、三管式プロジェクター、アナログテレビで評価したりと、様々な評価を行いました。苦労の末に、これであれば東芝がいま挑戦していることであったり、実現できる最高の映像をユーザーの皆様に感じ取ってもらえるものができたと自負しています。

RD-X10付属のリモコン

フタの中に「XDE」の設定ボタンを独立配置した

澤岡氏:「高画質」への取り組みという点では、RD-X7の頃からDVDソフトだけでなく放送波に対しても1080/60p出力、または1080/24p出力できる機能を搭載しています。従来は強制的に24p出力に切り換える機能しかありませんでしたが、今回のRD-X10のシリーズから「自動」機能が加わりました。放送波をフィルムの様に見る時は1080/24pに設定し、BD/DVDの映画ソフトを見る時は「自動」にするのがお薦めの使い方です。「自動」にした場合、BDはディスクにフラグ情報が入っていますので、そのフラグ情報に従い1080/24p出力になります。DVDは元のコンテンツが24フレーム収録されたものと判断された場合、1080/24p出力になります。

RD-X10のメニュー画面で「操作・表示設定」を選択、「1080p出力設定」の項目が表れる

自動/60p/24pから出力設定を行う

桑原氏:こちらの変換精度には自信を持っています。DVDタイトルの場合は基本的にディスクから読み取る情報を元に、そのまま24p変換しています。放送波の場合は60pの映像情報を受けて、これをリアルタイムで24p変換しています。澤岡が申し上げたように機能は「ON/OFF/自動」から設定できますが、「ON」を選ぶと常時24p変換してしまいますので、ニュース番組やバラエティ番組などはカクカクとした映像になってしまいます。一方で「自動」のままにしておくとBDにしか効かなくなって、DVDや放送波のコンテンツは「自動で60pのままで出力」するよう判断してしまいます。ですので、WOWOWやDVDの映画を24p変換して見たいときにだけ、こちらの機能を「ON」にして楽しむという使い方がお薦めです。

澤岡氏:本機能はBZシリーズの全機種までに搭載しています。一見すれば地味な機能ですが、東芝RDシリーズがこだわってきた機能だと考えています。


− 本体内部の構造について、こだわった点はありますか。

桑原氏:回路構成については放熱効果やノイズ対策を施して、なおかつ動作性能を最優先で組んでいます。画と音のクオリティという側面よりは、デジタル回路として最上の構成になるように設計しています。そのほか、静音設計についてはファンの最適化をはじめ、HDDの固定方法を工夫することでノイズを抑えており、再生中の動作音がかなり静かな点も特徴だと思います。


− インシュレーターにもRD-X10では独自の高音質化が図られていますね。

桑原氏:見た目には下位機種と変わらないインシュレーターなのですが、実はRD-X10のものには特殊な樹脂素材を使っています。実際にインシュレーターを叩いてみると音がまったく違っていて、下位機種がプラスチック然とした軽い音なのに対して、X10では“コツン”という具合に、振動の尾の引き方がまったく違います。開発段階では実際に色々な素材のインシュレーターを試作して、それぞれを付け替えながら音を比較してみましたが、結果的にとても良いものを選ぶことができたと思います。

残念ながら素材については“防振効果の高い特殊樹脂”とまでしか申し上げられません。他にも天板は前面部をステンレスで補強していますので、異種金属結合でしっかりとしたつくりになっています。

RD-X10だけに採用されている“特殊樹脂”を使ったインシュレーター


− エンジェル・デメル社製のアルミフロントパネルなど、外装部分でのこだわりはいかがでしょうか。

澤岡氏:確かに非常に高価で、贅沢な部材なのですが、フラグシップモデルのRD-X10を、高いお金を払ってご購入いただくオーナーの皆様に出来る限りの満足感をご提供したかったという思いがあります。エンジェル・デメルにこだわった理由は、欧州では多くの高級車メーカーがこちらのアルミパネルをドアやギアの周辺の内装に使って、贅沢なインテリアを演出しています。アルミの素材として一番高級感があって、広く価値が知れ渡っているということで、今回エンジェル・デメルのパーツをRDシリーズとして初めて使いました。こちらに似たようなものをつくろうと思えば、できなかったわけでもなかったのですが、やはり最高級機を買っていただくユーザーの皆様には、ホンモノの満足感をご提供したいと考えました。おそらくAV機器にエンジェル・デメルのパーツを使っているメーカーは今のところないと思います。

RD-X10はエンジェル・デメル社製のアルミ素材をフロントパネルに採用する

フロントパネルをRD-X10(写真上)とRD-BZ800(写真下)とで比較したイメージ。エンジェル・デメルのパーツの質感がお分かりいただけるだろうか


− RD-X10の完成度をどのように評価していますか。

桑原氏:本機の仕上がりには大変満足しています。しかしながら、開発者としてはこれで「完成」してしまったと、腰を落ち着けてしまったわけではありません。ある良い製品が出来上がると、同時に「もっとこうしておけば良かった」という思いも沸き上がってくるものです。ちょっと時間が経てばまた新しいこと挑戦したくなりますし、次の一手も浮かんできます。きっとこの探求は終わることがないと思います。

とはいえ、RD-X10は現在のフラグシップとして東芝の“いま”をすべて注ぎ込むことができた、東芝のRD開発陣より自信をもってお届けしたいBDレコーダーのフラグシップモデルです。ぜひハイエンドの魅力を、本機で感じていただきたいと思います。


◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


RD-X10の高画質・高音質を体験した


CELL REGZA「55X2」をリファレンスに視聴を行った
今回は音元出版視聴室にて「RD-X10」の視聴を行う機会を得た。今回は桑原氏に持参いただいた映画『シャネル&ストラヴィンスキー』から、WOWOWで放送されたエアチェックの素材と、同作品のBDタイトルで映像とサウンドを比較した。なお、視聴環境はディスプレイに“CELL REGZA”「55X2」を組み合わせ、スピーカーはELACの「240 Line」をフロントとリアのL/Rに使い、サブウーファー「SUB 2060 D」を組み合わせて、センターチャンネルはCELL REGZAのスピーカーをセンタースピーカーモードで駆動して聴いた。AVアンプはパイオニアの「SC-LX83」。

「55X2」の背面にはセンタースピーカー専用の音声入力端子を設けている

最初にWOWOWのエアチェックから、1080/24p変換出力の機能を「入」にして見る。オープニングの『春の祭典』のステージでは、映像の隅々にまで張り詰めた緊張感が漂う。オリジナルソースが備える質感も、続けてBD版を視聴してみて、非常に忠実に再現されていることが確認できた。エアチェックの映像を視聴する際は「XDEレゾリューションプラス」の機能を好みで活用してみると良いだろう。効果は「切/1/2」から選べ、1より2の方が精細感をより強調するよう設定されている。今回視聴した映像では、XDEを「1」にしてみたところ、より映像全体の奥行き感、遠近感が増す感触が得られた。付属のリモコンにはXDEのダイレクトボタンが設けられているので、映像を見ながらその効果を手軽に確かめることができる。

音声は『シャネル〜』のBDタイトルで、デュアルHDMIの音声専用端子からと、アナログマルチチャンネル端子からの両出力を聴き比べた。本作の音声収録フォーマットはドルビーTrueHD 5.1chだ。HDMIのサウンドは特に輪郭がとても緻密に再現される印象を受けた。作品冒頭の『春の祭典』のステージでは、オーケストラの楽器が高域の音を中心に、さわやかに伸びていく。ひとつひとつの楽器の音のフォーカスが明確で、演奏全体にパキっと引き締まった緊張感がみなぎるようだ。

一方のアナログ接続の音声は、HDMI接続で聴いた音にいっそうの力強さと濃厚なコクが乗る。ざわつく観客席が舞台の幕開けとともに静まりかえった後の“静寂”にも、息が詰まるような迫力が出てくる。オーケストラの演奏は中低域のどっしりとした量感と、伸びやかに広がる高音まで、階調感がとても豊かだ。舞台役者がステージで躍動する足踏みや、すり足の体重移動の音にまで、人間の重みが乗って伝わってくる。

次に映画『イングロリアス・バスターズ』より、作品の序盤、ナチス親衛隊のランダ大佐が、自宅にユダヤ人の友人をかくまう農夫・ラパディット氏を尋問するシーンを視聴した。“飴と鞭”を使い分けながら一気にラパディット氏を自白に追い詰めるランダ大佐。彼の役を演じる俳優クリストフ・ヴァルツの色とりどりな声色を、RD-X10と55X2のセンタースピーカーはとても丁寧に再現してみせる。登場人物の顔のクローズアップと、長尺のセリフが中心のシーンだが、ランダ大佐の声には透明感があり、まるで目の前で尋問されているような錯覚を覚えるほどリアルで生々しい。一気に作品の世界に引き込まれてしまった。

物語の中盤、タランティーノ作品の真骨頂ともいえる“銃撃戦”のシーンでは、ピストルの劇鉄が跳ね上がる不気味な金属音や、弾がターゲットに命中した時の鈍い音など、多彩な効果音がめまぐるしく入れ替わりながら再生される。こちらのシーンでも、様々な種類の音を、それぞれに情報量たっぷりに描ききる対応力が見事。狭い酒場のホール内に銃弾が飛び交う恐怖感に身震いさせられた。

HDMI、アナログの音はそれぞれにレベルが高く、魅力があり、どちらがより良いかを論じるようなものではないと感じた。音声専用のHDMI出力を持っていて、しかもBDレコーダーとして今日時点で唯一アナログのマルチチャンネル音声出力も備えているという、RD-X10の贅沢な仕様は大いに歓迎すべきトピックだと思う。本機は多機能なBDレコーダーとしてだけでなく、ハイエンドBDプレーヤーとしてもユーザーのオーナーシップをとことん満足させてくれるフラグシップモデルであると言えるだろう。

【RD-X10 商品に関する問い合わせ先】
東芝DVDインフォメーションセンター
TEL/0120-96-3755


【RD-X10 スペック】
●HDD容量:2TB ●再生可能メディア:内蔵ハードディスク、USBハードディスク、BD-R/-R DL、BD-RE/-RE DL、DVD-R/-R DL、DVD-RW、DVD-RAM、DVD-Video、音楽CD、CD-R/RW ●チューナー:地上・BS・110度CSデジタル×2 ●入力端子:S1映像×2、映像×2、アナログ2ch音声×2 ●出力端子:D1-4映像、S1映像、映像、アナログ2ch音声×2、アナログ7.1ch音声、デジタル音声(光)、HDMI×2 ●その他端子:LAN、i,LINK/DV入力、USB×2 他 ●外形寸法:430W×80H×335Dmm(突起部含む)

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