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公開日 2025/10/29 06:30
丁寧なリマスター作業の成果を実感

『もののけ姫』4Kデジタルリマスター版IMAX上映を見た! 作品の“強さ”に圧倒される最高の劇場体験

出水哲

米良さんの歌声がエンドレスでリフレイン


映画ファンであれば、劇場で作品を見終わった後に、シートから立ち上がれないほどの酩酊感を味わったことがあるだろう。作品世界に引き込まれ、無意識のうちに集中して、気がついたら心地良い疲れに包まれている……。


そんな最高の劇場体験を味わわせてくれたのが、『もののけ姫』4Kデジタルリマスター版IMAX上映だった。1997年に公開されたフィルム作品がどのようにしてIMAXで上映されたのか、その点については先日ファイルウェブの記事で紹介させてもらった。



その縁もあって、先日開催された東宝主催の試写会に招待してもらったが(会場はTOHOシネマズ 新宿のスクリーン10)、そのインパクトが強烈で、数日経った今でも油断すると(?)頭の中で米良さんの歌声がリフレインしている。



本作が公開された時は満員の映画館(新宿か銀座だった)で見たが、その時も作品が持つ迫力、ストーリーに圧倒されたことを覚えている。そこからDVDやブルーレイでも見返してきたので、ストーリーは頭の中に入っているし、有名なシーンもそこそこ記憶している。


そんな経験もあったので、今回の試写会はIMAX上映でどんな画と音に生まれ変わったのかをチェックしよう、という気持ちで参加したのだが、それは甘い考えだった。


もちろん映像は格段に綺麗になっていて、でありながらフィルムらしいグレイン感も残っている。さらにインタビューでスタジオジブリの奥井さんや古城さんが話してくれた、「フィルム制作とデジタル制作の微妙な差異」が見事に抑えられていて、全編を通して映像のつながりが本当になめらか。これこそ丁寧なリマスター作業の成果なんだと実感した。


最初こそ、そんな分析的な見方もしていたけれど、アシタカが旅に出るあたりからは「チェック」なんて概念はどこかに行ってしまい、作品に引き込まれてスクリーンから目が離せなくなった。鑑賞後は頭の中に色々な感情が渦巻いて、気持ちを整理するために、この体験についてこうして言葉を紡ぎたくなった次第。


IMAXならではの大画面、迫力充分な5.0チャンネルサウンド、映像の美しさとそこに込められた膨大な情報などなど、色々な条件が揃った結果、『もののけ姫』4Kデジタルリマスター版は映画ファンとしてスクリーンで見ておくべき作品に昇華している。ぜひ貴方も劇場に足を運んで、最高の映画体験を味わっていただきたい。



「私の人生にもっとも大きな影響を与えた作品」


今回参加させてもらった試写会では、アシタカ役の松田洋治さん、サン役の石田ゆり子さん、スタジオジブリの鈴木敏夫プロデューサーによるトークショーも開催され、制作当時の思い出が語られた。



上映前には松田洋治さん、石田ゆり子さん、鈴木敏夫プロデューサーによるトークショーも開催


28年前の作品をIMAXシアターで見ることに対する感想を聞かれ、「この劇場にはしばしば来るんですけど、この大きさで『もののけ姫』を見るということで、画質と音質にもすごく期待をしております」(松田さん)、「私もスクリーンの大きさに感動しています。ものすごい没入感だと聞いているので、本当に楽しみにしています」(石田さん)と、IMAXでの上映に期待していることを話してくれた。



松田洋治さんがオーディション秘話を披露


続いて石田さんは、「ある日事務所に行ったら、鈴木さんがいらっしゃったんです。何が起こるんだろうと思っていたら、こんなお話をいただいて。本当に天に登るほど嬉しかったんですけど、なぜ私なんだろうって」と、当時の感動を思い出した様子。


ここで鈴木プロデューサーが、「簡単に言うと、石田さんが宮?監督のタイプだったんですよ。『平成狸合戦ぽんぽこ』で石田さんに声をお願いした時に、宮?監督が石田さんに挨拶していたんです。そこで鼻の下が長くなっていたのを僕は見逃しませんでした(笑)」と冗談交じりのコメントをした。



石田ゆり子さんが収録当時を振り返る


「あまりに難しいというか、どうすればいいのか分からないっていう状態でした。サンはセリフはそんなに多くはないんです。でも、人間であって人間じゃない、動物になりたいけど動物にもなれない不思議な役なので、当時の私には難しかったです。もう一回この作品の吹き替えをやりたい。でも、もうこの頃の声は出ないので駄目ですね(笑)。そのぐらい思い出に残っています」(石田さん)


「通常の映画の吹き替えと比べて、考えられないぐらいの回数スタジオにうかがいました。収録は割とスムーズに行くことも多いんですけど、何かで止まると地獄が待ち受けている(笑)。でも宮?監督は、誰に対しても引っかかったら同じなんです。僕だけじゃなくて、どんな人でも演出にとことんこだわっている。そこはすごく平等だなと思いました」(松田さん)


それほど苦労して出来上がった『もののけ姫』は、おふたりにとっても大切な作品になっているようだ。そこについて松田さんは、「『もののけ姫』という作品がなかったら、今の松田洋治とはまったく違う俳優人生を歩んでいたと思います。私の人生にもっとも大きな影響を与えた作品であることは間違いないです」と話していた。


石田さんも、「例えば海外に行くと、どんな作品に出ていますかと必ず聞かれるんです。その時に『もののけ姫』でサンの声をやっていますって言うと、ものすごく尊敬してくれるんです。さすがジブリ、本当にすごいことです」と語った。


鈴木プロデューサーは、「公開当時は、多くのお客さんが見てくれたのは嬉しかったですね。なぜ映画を作るかといったら、お客さんに見てもらうためでしょう。そこであれだけの結果が出たのは、名誉だと思ったんですよ。映画は自分たちだけのために作るんじゃない、お客さんのために作ろうって、改めてそれを気づかせてくれた作品になりました」と、『もののけ姫』がスタジオジブリの作品作りの根本にも影響を与えていることを話してくれた。




『もののけ姫』4Kデジタルリマスター【IMAX上映】


●原作・脚本・監督:宮? 駿
●プロデューサー:鈴木敏夫
●音楽:久石 譲
●上映時間:133分
●声の出演:松田洋治、石田ゆり子、田中裕子、小林 薫、西村雅彦、上條恒彦、美輪明宏、森 光子、森繁久彌、他
●配給:東宝



(c)1997 Hayao Miyazaki Studio Ghibli, ND
IMAX is a registered trademark of IMAX Corporation


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