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公開日 2025/09/01 10:58
ベールが一枚剥がれたかのような効果

クラファン中の京セラ圧電型スーパートゥイーターを聴いた!往年の“ムラタ”とも比較検証

栗原祥光

耳を近づけてもチリチリとした音しか聴こえない。にも関わらずシステム全体の音を大きく変える――。スーパートゥイーターは実に不思議なアイテムだ。



現在クラウドファンディングを募集中の京セラのセラミック圧電スーパートゥイーター

 

ヴィンテージスピーカーの上に置きたくなる雰囲気


電子部品の大手である京セラは、9月21日までクラウドファンディングサイト「GREEN FUNDING」にて、stereo誌監修のアドオン型セラミック圧電スーパートゥイーターへの支援を30セット限定で募集している。現時点での支援価格は、20万9000円(ペア・税込)。今回、オーディオ誌「stereo」の試聴室で聴く機会を得たのでレポートする。



フォステクスの「RS-N2」の上に配置したスーパートゥイーター


なぜ京セラがスーパートゥイーターを開発したのか。話は今から約5年前に遡る。ファインセラミック技術を得意とする同社は、その開発過程で培った技術を基に圧電型のフルレンジスピーカーを試作した。専門家の意見を聞こうとstereo編集部に持ち込んだところ、編集長から「スーパートゥイーターにしたらどうか」との提案を受けたという。


その後も開発を進め、今から約1年半前にスーパートゥイーターの試作機をstereo編集部に。一般ユーザーの体験試聴会も開催し、専門家によるさらなるアドバイスなどを受け、この度クラウドファウンディングという形で販売する運びと相成った。


機構は小指の爪先ほどの大きさのセラミックの圧電振動子の伸縮を、親指ほどの透明フィルムに伝えて面振動するというもの。100kHz付近の超高域まで目立ったエネルギーの低下がないばかりか、上下左右90度の範囲まで音圧の低下が少ないのがメリットであると謳う。



スーパートゥイーターを真横から見たところ


一見、どこかのノーチラスチューブに似た本機。ベース部はウォールナット、トゥイーター本体はウェンジと異なる素材が用いられており、60年代のJBLやタンノイといったヴィンテージスピーカーの上に置くと良い雰囲気だろう。ちなみにトゥイーターの後端が伸びているが、消音のためではないそうだ。透明なので裏側から白色LEDで光らせるギミックも有している。もちろん消灯も可能だ。


振動板単体では能率が低く使いづらいので、台座部分には高効率パワーアンプを内蔵する。単三乾電池4本で駆動し、電池寿命は1日2〜3時間で3か月程度が目安とのことだ。



能率が低いため、アンプを内蔵しており、単四電池3本で駆動する。電池は底面の蓋を外して装着する


リアパネルには、電源スイッチとアンバランス(RCA)入力端子のほか、3段階のクロスオーバー切替スイッチが用意されている。スロープカーブは-6dB/octなので、既存のシステムとつなげやすいだろう。



入力はRCA1系統のみ。また背面にクロスオーバースイッチを搭載



フォステクスの音触が現代的にアップデート


stereo編集部の試聴室にお邪魔し、同誌のリファレンスシステムを用いて京セラトゥイーターの効果を確認した。リファレンスシステムはスピーカーにフォステクス「RS-N2」、エレクトロニクスは全てアキュフェーズで、SACDプレーヤーシステムが「DP-1000」+「DC-1000」、プリアンプ「C-2900」、パワーアンプ「A-300」という布陣。



ステレオ誌の試聴室にてスーパートゥイーターの有無をテスト!


試聴ディスクは全てSACDとし、ライブ録音のポップス、作りこまれたスタジオアルバム、60年代に録音された名盤など様々なバリエーションを持ち込んだ。トゥイーターのボリュームレベルは12時の位置、クロスオーバー周波数は32kHzにセットし、試聴を始めた。



ボリューム調整ノブも搭載。今回は12時の位置にセットしてテストした





今回の試聴ディスク。すべてSACDとしており、最新の録音から1960年代の名盤、ライブ録音まで用意


フォステクスRS-N2には可聴帯域外まで再生できる20mm純マグネシウム・ハードドーム型トゥイーターを搭載している。JBLの075トゥイーターのような再生帯域が16kHzまでといったユニットならともかく、現代のスピーカーにスーパートゥイーターを追加する必要はないのでは、と内心思っていた。にも関わらず音が出た瞬間、ベールが一枚剥がれたかのような効果に驚かされた。RS-N2の良さはそのままに、音場と音触が現代的にアップデートされたかのようだ。


今年デビュー35周年を迎えたマライア・キャリーが、1992年放送のMTVアンプラグドで披露した「I'll Be There」は、場の空気を綺麗に表現。ありていに言えば、その場にいるかのようなプレイバックだ。また音像が引き締まり、第一次黄金期の彼女の歌声を存分に楽しむことができた。


ほぼ同時期のスタジオ録音として、今夏モービル・フィデリティからのSACDリマスター盤が話題のマイケル・ジャクソンのアルバム『デンジャラス』から、超大作「Will You Be There」を聴いた。スーパートゥイーターの効果は、高域ではなく低域にまで及ぶ。ベースラインが引き締まり、よりノレるビートに心と体が思わず動く。


クラシックはどうだろう。バロック音楽を楽しく聴かせる4人組「パラディアン・アンサンブル」が、ジャン=フェリ・ルベルをフューチャーした「LES ELEMENS」(リンレコーズ)をディスクトレイに置いた。この楽曲は不協和音から始まるバレエ音楽で、常にリスナーに適度な緊張感を与える。京セラのスーパートゥイーターは、ストリングスの消え際を綺麗に再現し、その緊張感を増幅させる。


ここでローカット周波数を色々と切り替えてみた。周波数を下げると、ちょっとかぶりすぎているようにも思える。だからといって、レベルを下げると、これも違う気がする。ならばと上げてみるとスーパートゥイーターの効果は減り、レベルを上げてもシックリと来ない。このように美味しいポイントを見つけるのは難しいので、腰を据えて取り組んで欲しい。


京セラはシルク、ムラタは木綿のザックリとした肌合い


圧電セラミックトゥイーターというと、過去に京セラと同郷のムラタ(村田製作所)の名を思い出す方も多いだろう。折角の機会なので手持ちのムラタ「ES-105」と比べてみることにした。ES-105の振動板はセラミック素材を用いた半球体形状のパッシブ型で、さらにローカット周波数が16kHzと低くアッテネーターもないので、圧電型と一口にいっても京セラとは仕様も内容も大きく異なる。ここでは単純にパラレルでつなげてみた。



ムラタ「ES-105」と比較試聴も実施


クロスオーバー周波数が低いということもありムラタの方が支配的な鳴り方をみせる。また質感も大きく異なる。京セラはシルクのような滑らかさと例えるなら、ムラタは木綿のようなザックリとした肌合いと音触だ。


今から60年前の1965年、ジョン・コルトレーンが神に捧げた4篇の組曲『至上の愛』は、シンバルやサックスの余韻に耳を奪われる京セラに対し、ムラタは金粉を振りまいたかのようなホットな再現。これだけを聴けば、ジャズにはムラタの方がイイという方もいらっしゃるだろう。


だがステレオサウンド社が発売する「THE IDOLM@STER 765PRO ALLSTARS+ GRE@TEST BEST! −COOL&BITTER!−」のような現代スタジオ録音の女性ボーカルになると、ムラタの質感に違和感を覚える。またムラタの方が指向性がシャープで、スイートスポットを逃すと途端に寂しい音になってしまう。京セラはどこに座っても、その恩恵に預けられる。これは一部のリボントゥイーターを除いて経験したことのない効果だ。


アンプ内蔵により使い勝手のよさと広い指向特性で、京セラのスーパートゥイーターは使いやすいプロダクトだ。それにしても、耳を近づけてもチリチリという音が聴こえるだけなのに、どうしてここまで大きな変化があるのだろう。百聞は一聴にしかず、ぜひ体験してほしいと思う。


それは京セラ側も同じだと考えたのだろう。9月4日(木)、5日(金)の2日間、株式会社 音楽之友社『stereo試聴室』で体験イベントが行われるという。ぜひ脚を運んで、ご自身の耳でご確認頂きたい。その変化にきっと驚き、戻れないと感じるハズだ。

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