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もしもアップルがテレビを作ったら − いくつかの予想と考察、そして妄想

公開日 2011/11/25 14:40 編集部:風間雄介
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■ネイティブアプリのメリットと課題

まずはテレビ向けアプリについてです。ここでいうアプリとは、テレビのOS上で動作するネイティブアプリのことです。

思い起こせば、初代iPhoneもアップル独自のアプリしか提供されず、サードパーティーがアプリを開発し、販売できるApp StoreがスタートしたのはiPhone 3Gからでした。

Apple TVにもA4チップが搭載され、内部には8GBのフラッシュメモリーがあるので、これまでもApple TV向けアプリストアが提供開始されるのでは、という見方が一部にありました。iPhone 3Gのときと同様、Appleが本格的にテレビへ参入するのを機に、テレビ向けのネイティブアプリストアを立ち上げる可能性は大いにあります。

言うまでもなくアプリは、プラットフォームが整備され、潤沢にアプリが開発されて豊富なラインナップから選べる状況にあり、それを快適に操作できるデバイスがあれば、とても便利なものです。これはiPhoneやiPadユーザーが日常的に実感しているでしょう。

■テレビ向けアプリにつきまとう入力デバイス問題

まれに、アップルはiOS向けアプリの資産が豊富だからテレビ向けに移植するのはかんたんといった論調を見かけますが、これは疑問です。画面との距離やユーザーインターフェースが、テレビとスマホ/タブレットでは全く異なるためです。

iPhoneとiPadは、同じ手元に持つタッチ操作デバイスですので、iPhone向けアプリも、画面が小さくなったり粗くなったりはするものの動作させること自体は可能で、iPad発売当初からアプリの互換性を保つことができました。

それに対し、テレビ向けアプリの場合はどうでしょう。たとえば入力デバイスにiPhoneやiPadの画面を使うとしても、テレビ画面のどの部分をタッチしているか、iOSデバイスとテレビのあいだでフィードバックし合って表示する必要が出てきます。さらに、手元とテレビ画面の視線の行き来も頻繁に必要となります。一番簡単なのはマウスポインター的なシンボルを用意することですが、これはあまりスマートとは言えません。

iPhoneのタッチパネルをテレビ向けアプリのインターフェースに使うのが、本当に最適解なのかも疑問です。たとえば私は、RemoteでApple TVを操作する際、フリックのスピードが速すぎて、ズルッと先のメニューにカーソルが移動してしまうことがよくあります。

ほかには、テレビと視聴位置との距離の問題もあります。遠くから見る事の多いテレビでは、アプリのアイコンや文字などを大きくし、視認性を高めなければなりません。テレビ向けアプリでは、この入力デバイスとインターフェイスの問題は必ず解決しなければならない課題です。

Google TVは、この入力デバイスとインターフェースの問題に対して、明確な解決方法を示していません。このため、ソニーはゲームコントローラーのようなもの、ロジテックは小型キーボードのようなものをそれぞれリモコンに採用し、まったく別の操作方法を採用しています。これはいわゆる「フラグメンテーション」と言うべき問題で、将来的に各メーカーがそれぞれの入力デバイスを作ったら、Google TVのユーザーエクスペリエンスは大きく機種やユーザー間で分断されてしまいます。

グーグルとしてはメーカーの知恵を借りるつもりだったのでしょうが、入力装置が決まらなければ、それに最適化したインターフェースやアプリは作れません。これでは少々無責任と言われても仕方ないでしょう。

テレビ向けアプリをこれまでのスマートフォン/タブレット向けアプリの延長線上で開発するのは難しく、抜本的なユーザーインターフェースの改変を求められるのは必至です。iOSデバイス向けアプリはこれまで数十万単位が提供されていますが、これらの資産をすぐに活かすことは難しく、ほぼ一から出直すことになるのではないでしょうか。

とは言え、入力デバイスに有力な候補がないわけでもありません。LG電子のスマートテレビはWiiリモコンに似た形状のもので操作しますが、こういった方向性も考えられるでしょうし、あるいはSiriなど音声操作を積極的に採用する可能性もあるでしょう。もう一つ、ジェスチャー操作も可能性として十分あり得ると思います。

■進化を続けるプロセッサー競争とネイティブアプリ

もう一つのネイティブアプリの問題点は、テレビの買い替えサイクルです。よく指摘されるように、テレビは非常に買い替えサイクルの長い商品です。おおむね、テレビの平均使用年数は8〜10年程度と言われています。

一方のスマートフォンは現在加速度的な進化が進んでいて、デュアルコアが話題になったと思ったら、もうクアッドコアプロセッサーの話が出てきています。1年前の商品が時代遅れの機種と見なされることも珍しくありません。

スマートフォンと違い、テレビを毎年買い替えるという方はほとんどいないでしょう。このため購入した時点のスペックで、なるべく長期にわたって、様々なサービスをストレス無く使い続けられることが重要になります。年々スペックアップするプロセッサーにアプリを最適化していった結果、数年前の機器では重くて使えない、ということは避けなければなりません。

もちろん、新機種を出してもプロセッサーやメモリーなどを変えなければ、アプリとの互換性はバッチリ保たれるわけですが、ユーザーがそれで納得するかは疑問です。いっそのこと、プロセッサーなどの部分をアタッチメント方式にして、その部分だけ取り替えられるという方法もアリかもしれません。

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