ここではDC3とDC1について、SACD/DVDオーディオを含むピュアオーディオソースでのパフォーマンスを聴こう。

サウンドは典型的なワイドレンジ、そしてぱりっとした爽快感を全域に感じさせる。これは両モデルともだが、前シリーズよりも明らかに定位のシャープさと安定度が増して、どのソースも音像がブレない。

つながりのスムーズな同軸ユニットの感触は上々。きれいな球面波が抜群の滑らかさと空間音場を醸し出しており、高品位ソースになるほど本領が発揮される印象である。

コンパクトモニターのDC1は、サイズを思わせない鳴りのよさと、充実した密度バランスが持ち味だろう。「しばしの音楽が〜バロック・メロディー/アンネ・ソフィー・フォン・オッター」では、ローエンドはあっさりめだが、レスポンスが軽やかで、フォン・オッターの空間を舞うようなメゾソプラノの歌唱や、キレ味爽快なジャズを楽しませる。

また「テイキング・ア・チャンス・オン・ラヴ/ジェーン・モンハイト」ではベースのブンブンとくる弾力感や、ドラムのアタック、ジェーン・モンハイトのテンポのいいボーカルのスイング感もミュージカリティ溢れるものだ。

ハイスペック系ソースでは、音域の広がりが素直に再現され、びっしりと織りこんだような音場の緻密なテクスチャーが聴き所。ギターやピアノの質感がよい。

やや小ぶりながら、「マーラー:交響曲第1番『巨人』/小林研一郎指揮、日本フィルハーモニー交響楽団」はたっぷりとしたスペクトルの広さを肌で感じさせ、ライブ録音らしい生々しい鮮度にも驚く。音が縮こまらず、シンフォニーも十分に楽しめるバイタリティである。

「EYRIS DC1」
「EYRIS DC3」

高さほぼ1m。23リットルの容積をもつDC3では、これに低域方向の密度やスケール感が加わって、一気に雄大さが拡大される。サブバスユニットは応答がよく、パルシブな大音量への立ち上がりも見事で、CDでもSACDでも崩れや濁り感のない澄んだハーモニーを提示するのだ。ボトム方向の音調はフラットバランスで、妙なバスレフっぽさがないのも好ましい。弾力と解像感のいいボトムをもっており、これはスパイクの効用も大きい。使用は必須である。またトールボーイの有利な点だろうが、ワイドバンドトゥイーターの倍音成分が空間いっぱいに舞う印象だ。高域端までエネルギーを落とさずに、高さや空間描写が一層リアル。

フォン・オッターやジェーン・モンハイトのボーカルは、等身大のステレオイメージが眼前に出現するような感触である。

EYRIS DC3に付属されるアルミダイキャスト製のフットベース。安定した設置が可能となり、音質面でも劣化を防いでいる
モダン感覚のアイリスDCシリーズであり、サウンドはあきらかに現代調だ。対応ソースも広い。だがその中に秘めた芸術性の高さや陰影に富む筆使いは、タンノイの真骨頂といえるもの。所有する喜びを実感させるのは間違いない。
福岡県出身。工学院大学で電子工学を専攻。現在、日本工学院専門学校の講師を務め、音響・ホームシアターの授業を受け持つ。難しい話題をやさしく説明するテクニックには定評がある。