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これが真空管アンプ本来の音

【製品批評】LUXMAN「LX-380」 ー 6L6GCをプッシュプルで採用、伝統ある38シリーズの真空管プリメイン

公開日 2017/07/19 10:53 石原 俊
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製品批評


真空管プリメインアンプ
LUXMAN
LX-380
¥460,000(税別)



かつて「SQ-38」シリーズで一世を風靡したことから、“38”という数字はラックスマンのエースナンバーとされている。本機はその38を背負った真空管式機だ。ロの字型の木枠をまとったデザインは非常にレトロだが、アヴァンギャルドともいえるような内容を有している。

プリアンプ部の音量調整回路に注目。この部分は同社の真空管式機としては初めて電子式のLECUAが採用された。トーンコントロールはバスとトレブルの2系統だが、両者とも3つのターンオーバー周波数が選択できる。これはかなり効果的で、部屋の音響特性をある程度コントロールできる可能性が高い。ラウドネススイッチもあるので深夜のリスニングも安心して行える。もちろん、これらをパスするラインストレートのスイッチも装備している。さらにはMM/MC対応のフォノイコライザーも搭載している。

トーンコントロールやラウドネススイッチなどはすべてフロントパネルに配置
 
パワーアンプの終段真空管は6L6GCのプッシュプルだ。出力は18W×2(8Ω)。これはかなり控えめな数字だが、長期にわたる使用を前提として無理のない設計をした結果、この数値に落ち着いたという。なお、6L6GCのバイアス調整はユーザーに解放されておらず、真空管の交換はラックスマンのサービス部が行う。

本体背面部。入力端子はRCAのみで、PHONO入力はMM/MCに対応する

いかにも真空管アンプらしい音である。真空管アンプというと、ホンワカした柔らかい音を想像しがちだが、そうではない。おろしたてのドレスシャツのようなバリッとしていて、音に張りがあって、音の質感に威厳のようなものがある。これが真空管アンプ本来の音である。

だが、昔の真空管アンプとは異なった一面もある。それは聴感上のSN比の良さだ。これはLECUAの恩恵であろう。音場は清潔で程よく広く、音楽を安心して楽しむことができる。音楽的には楽曲・演奏に積極的に介入するタイプで、ディテールをデフォルメしたりボカしたりするのだが、それが決して不快ではない。
 
ジャズは真空管式機ならではの味わいだ。スピーカーがアンプのアウトプット・トランスにつながっているので、逆起電力による低音の空振り現象がなく、音楽の支えがきっちりとしている。トランスがあることによる帯域制限感はたしかにあるのだが、そのぶん音楽を濃密に味わうことができる。また、真空管式であるがゆえにトランジェント感が良好で聴感上の分解能が高い。

ヴォーカルは標準的な声質の歌手でもラックスマン特有の色気が乗るので楽しく聴くことができる。これはもうラックスマンならではの「藝(わざ)」というやつだ。クラシックは弦の艶やかさが印象的だった。音楽的な客観性は希薄で、ある程度情報の取捨選択をするのだが、それが感動につながる。長期にわたって付き合える、音楽性の高いモデルである。

(石原 俊)

Specifications
●定格出力:20W+20W(6Ω)、18W+18W(8Ω)、14W+14W(4Ω)●入力感度/入力インピーダンス:PHONO(MM)3.0mV/47kΩ、PHONO(MC)0.38mV/100Ω、 LINE 180mV/47kΩ、MAIN IN 690mV/100kΩ●出力電圧:REC OUT 180mV、PRE OUT 1V●周波数特性:PHONO 20Hz〜20kHz(±0.5dB)、LINE 20Hz〜80kHz(+0、-3.0dB)●全高調波歪率:1%以下(6Ω、 1kHz)●SN比(IHF-A):PHONO(MM)84dB以上、PHONO(MC)67dB以上、LINE 95dB以上●音量調節:LECUA●回路方式:ドライバー→ムラ-ド回路、出力→ビ ーム管接続●使用真空管:6L6GC×4本、ECC82×3本●出力構成:プッシュプル●トーンコントロール最大変化量:±8dB、ターンオーバー周波数切替式BASS150/300/600Hz、TREBLE1.5k/3k/6kHz●消費電力:116W(電気用品安全法)●サイズ:440W×197H×403Dmm(奥行きは前面ノブ25mm、背面端子28mmを含む)● 質 量 : 17.6kg(本体)●付属品:リモコン(RA-25)、電源ケーブル(JPA-10000:極性マーク付)●取り扱い:ラックスマン(株)



※本記事は「季刊オーディオアクセサリー」164号所収記事の一部を抜粋したものです。くわしいレビューは雑誌でご覧頂けます。購入はこちらから

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