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Grandiosoのセパレートシステムで培った技術を結集

エソテリックの全てを凝縮した2つの“一体型”。GrandiosoのSACDプレーヤー「K1」&プリメイン「F1」

2017/07/11 山之内 正
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世界に名だたるオーディオブランドとして、確固たる地位を築くエソテリック。多くの音楽ファンに音楽の真髄を伝えてきた同社が、これまで培ってきたオーディオエンジニアリングの全てを注ぎ込んだのが「Grandioso」シリーズである。トランスポートやD/Aコンバーター、プリ/パワーアンプといったセパレートシステムに続き、それらの全ての技術と完成を結集させた、一体型プレーヤー「K1」とプリメインアンプ「F1」が登場。エソテリックの全てを凝縮した2つの“一体型”のサウンドを検証する。

ESOTERIC「Grandioso F1」(左)/「Grandioso K1」(右) いずれも2,000,000円(税抜)

ユーザーの要望に応えた一体型の最高峰

エソテリックの最上位シリーズ「Grandioso」は、第一弾の登場から3年を迎えた。その設計思想は同社の他の製品にも浸透しているが、セパレート思想を徹底した基幹モデルを中心に据えながら、Grandioso自体も毎年着実にラインアップを拡充させ、2016年秋には新たに一体型プレーヤー「K1」とプリメインアンプ「F1」を投入。別格とも言うべきGrandiosoに強い関心があるが、設置スペースを現実的な範囲に抑えたいという要望に応えて、一体型の頂点を担うべく開発された注目モデルである。

新しい技術やコンセプトを投入した文字通りの「最新鋭」

K1とF1は、設計思想の根幹をセパレート型モデルからそれぞれ受け継ぎつつ、新しい技術やコンセプトを積極的に採り入れることによって、最新鋭にふさわしい性能を獲得した。K1はAKMの最新プレミアムDAC「AK4497」を初搭載し、オペアンプ「MUSE03」と共にチャンネル当たり差動8回路の動作でリニアリティとS/Nを極めている。DAC回路は電源トランス以降出力まで左右完全独立で、基板上にスーパーキャパシターを配置したバッファー回路用電源も「K‐01X」にはなかった贅沢な構成だ。

F1は出力回路に次世代のパワーデバイスを搭載したクラスA動作のステレオプリメインアンプ。「ESOTERIC MODEL200」と名づけられたMOS‐FETは、新日本無線と共同開発した最新の出力素子で、瞬間最大供給電流150Aという大電流対応のデバイスである。低域の力強さと反応の良さを両立できる点が特徴で、今後は同社のアンプ群に継続して採用される可能性が高い。

F1は同社一体型アンプで過去最大級の物量を投入した「C1」の流れを汲むフルバランス構成のプリアンプを搭載

独自の接続方法による忠実度の高いアナログ伝送

K1とF1のアナログ接続は、通常のライン接続に加えて「ES-LINK Analog」と名づけた電流伝送用の接続端子を用意したことが注目される。送り出し側のK1が内蔵する電流伝送能力を高めた出力バッファー回路「HCLD」の特性を最大限に活かすため、F1側にも専用端子を搭載。接続経路のインピーダンスに影響を受けず、忠実度の高い伝送ができることが特徴とされる。なお、同LINKには通常のXLRケーブルを使用するが、他の製品では利用できないので注意が必要だ。

K1(左)とF1(右)の背面端子部。K1はアナログ出力、F1は入力端子に、XLR/RCAに加えて「ES-LINK Analog」を装備。F1にはL/R独立電源・独立回路のデュアルモノ・フォノイコライザー(MM/MC)も搭載し、レコードも高品位に再生可能だ

音楽の躍動感と推進力を積極的に引き出す力強さ

K1とF1の技術的基盤はあくまでGrandiosoのセパレート機から継承しているのだが、デジタルとアナログそれぞれに新しいデバイスや技術を投入することで新たな魅力を獲得しており、セパレート機を凝縮させたダウンサイジングモデルと呼ぶのはふさわしくない。K1とF1が聴かせる再生音は、一言で言えば動的な解像度が非常に高く、音楽の躍動感や推進力を積極的に引き出す力強さに溢れている。

絶対的なS/Nの高さや緻密なディテール再現は、新開発のDA変換回路がもたらす恩恵でそれ自体非常に水準が高いのだが、K1の再生音は低音から高音まで一音一音の密度が高く、骨太な要素も確保している点に注目したい。

K1はDACにAKM「AK4497」とオペアンプに「MUSE03」を採用し、チャンネル当たり差動8回路の動作で圧倒的なリニアリティと低歪み化を実現。独自の出力バッファー回路「ESOTERIC-HCLD」など、現時点での最高のパーツと回路技術を駆使している

その力強く芯のあるサウンドをF1に受け渡すと、堅固な骨格はそのまま残しながら、自在に動き回るベースの歯切れ良さや開放的な音色を発揮し、ダイナミックなサウンドを繰り出してくる。そして、通常のバランス接続からES-LINK Analogに切り換えると、ピアノのハーモニーや低音楽器の音色などが透明感を増し、もともと備わる立体的な空間描写に一層磨きがかかる。

プレーヤー、アンプどちらも外見は紛れもなく一体型だが、再生音の構えは雄大で、Grandiosoの名にふさわしいスケール感とダイナミズムをたたえている。

(山之内 正)


本記事は季刊・analog vol.54号からの転載です。本誌の詳細および購入はこちらから。

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