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各タイトルの音質もレビュー

時代を作った「和フュージョン」の名盤群が新リマスターで蘇る! 録音現場の音を再現した立役者とは?

公開日 2016/09/01 11:47 大橋伸太郎
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■ビクタースタジオで「和フュージョン」制作陣にインタビュー

私達取材チームを迎えてくれたのが、「和フュージョン」シリーズの監修にあたった松下佳男氏(元『ADLIB』編集長)と、ミキサーズラボ・サウンドプロデューサーの高田英男氏だ。松下氏と故ジャコ・パストリアスが衝撃のベースプレイを初めて日本のファンに披露した1978年東京宝塚劇場のウェザーリポート来日公演初日の話でひとしきり盛り上がってからFLAIR(マスタリングルーム)へ。高田氏はこの時期のビクタースタジオの録音エンジニアで「和フュージョン」全40タイトルのうち約半分の録音を担当したという。

松下佳男 氏

高田英男 氏

一般にリマスタというとCD用の既存のデジタルマスターをアップサンプリングし、ノイズリダクションで音質改善するのが普通だが、「和フュージョン」はそうでない。レコード会社に保管されていたアナログマスターを生まれ故郷のビクタースタジオに持ち帰り、一度原点に返ってから全く新しいデジタルマスターを再創造したのだ。

制作から40年経っているので、テープをオーブンで焼いても回転ムラが出て上手く回らなかったりトラブルが頻出します。作業効率を考えたらCD初出時にデジタルアーカイブされたマスターがすでに存在するので、そこから音を整理して作るやり方もあるのですが、当時CDに落とし込むためにすでに色付けした音になっています。

今回それは使わず、どれだけ大変でも全作品アナログのLP用オリジナルマスター、それもミックス直後第一世代マスターを集めて作業に入りました。スタッフ全員に大変な苦労を掛けましたが、全作品テープに掛けていって1曲ずつデジタルに取り込みました


1980年代後半からはデジタルPCM録音の時代となり、ソニーのPCM-3324レコーダーがスタジオの主役になります。日本ビクターはDASという3/4インチ、つまりUマチック(デジタル)ビデオテープ規格を使ったデジタル音楽レコーダーを開発したのですが、これがとても音質がいいんです。第一期のタイトルでは森園さんの『4:17pm』がそうです。

CD用デジタルマスターがありますが、それは使わず敢えてミックスした直後の3/4インチオリジナルデジタルマスターを取り寄せてリマスタしました。つまり全作品原点に戻った再制作です


渡辺貞夫の1/4インチオリジナルアナログマスター

ここで「論より証拠にこんな音ができました!」と高田氏が聞かせてくれたのが、渡辺貞夫の『モーニング・アイランド』(1978)。その既発CD(1990)と今回のリマスタの比較試聴だ。

FLAIRの要の機材はすべてJVC KENWOODのプロ機器だ。モニタースピーカーはジェネレック。CD用マスターと比較して今回のリマスタはこの後の自宅での個別試聴にも書くが、音場が格段に深く立体的で陰影と音色感に富む。ハイレゾリマスタなので帯域が広く突っ張ったところがなく楽器がしなやかで柔らかくビューティフル。

FLAIRの要の機材はJVC KENWOODのプロ機器を使用している

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