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「ミンヨン 倍音の法則」スタッフインタビュー − 宇宙に身を投げ出すような映画製作の現場

公開日 2014/11/25 10:46 山之内優子
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作品は終わった時でなければわからない

ー シナリオはどのようなものですか?

吉田 大枠はあるんですが、ディティールはなくて、毎日、原田さんのところにメールが来るんです。

はらだ 佐々木監督は朝の5時ぐらいが一番冴えるらしくて、助監督の黒川さんと私に、毎朝、A4の紙1枚くらいが送られてくるんです。例えば…渋谷で今日こんなシーンを撮る、出演はミンヨンさんとユンヨンさんだけ、セリフはこうとか、おおまかなものです。

吉田 佐々木さんの作品は最初から決まった撮影をするのではないので、スタッフとしてみれば、終わった時でなければ完成の作品はないんです。 

はらだ 僕は絵本というと(※はらだ氏は創作絵本作家でもある)32頁なら32頁に収めなければならないじゃないですか。ドラマとかもそうじゃないかと思うんですが、先にシナリオを作って、それでほぼシナリオをなぞるようにして、こうこうこうあって最後はこういう風に終わるというのがあるだろうと思うんです。ところが編集の時にもつくづく感じたんですけれど、佐々木さんはそれがないんです。びっくりしたんですが、佐々木さんに、全体のプラン、構成というのはどうなんですかと聞いたら、「えっ、必要なの?そんなこと、考える人いるの?」と、そう言われたんです。

吉田 それは佐々木さんには不思議なことなんです。毎日、進行しているのだもの、あの人の場合は。「四季・ユートピアノ」の時には、台本を作れといわれたんです。放送局で。それで、佐々木さんは台本を作って、その提案が通ったんです。ところが佐々木さんの場合は、毎日毎日、新たに変わっていくから誰も台本を持って歩かないんです。今回もそれと同じやりかたでした。今日はこういうことをやりたいという事や、行く場所などの大枠は決まっていますけれど。青森に行くといったら、それは青森に行かなきゃいけないわけですから。

はらだ 例えば朝5時のシナリオがあったとしても、現場では大幅に変わることは常でした。とにかく佐々木さんはミンヨンという人に出会って、彼女を描こうとしているので、反戦、原爆を描くとか、そういうことを目的としているんじゃないんですよ。彼女を描くことが、彼女の人間性の全てを描くことが、至上、最高の目的であって、それをしているうちに、どこにいくかというのは、日々、それこそ……。

最近、僕は…良くわかった…良くわかったのは最近であって、その時は、まあ、全体のシノプシスがあってうまく落ち着いていくんだろうなと、必要のないカットも多分できてくるのだろうけれど、うまく落ち着いていくんだろうなという風に楽観していたんです。自分は自分で、秀さんとかスタッフが撮影する毎日を通して、自分なりに全体のイメージ、作品のイメージを作っていたというか、勝手に思っていた。

ー 最初は佐々木さんにとって作品全体のイメージはどんなものだったのでしょうか?

はらだ ミンヨンのほかには、はっきりしたものはないと思います。むしろ持とうとしなかったのでは。だからすごいんだよ。絵本だったら全体の構成は多少は考えますよね。物語があるにせよ、ないにせよ、どういう絵をいれるとか。でも、佐々木さんは多分、ないと思う。

ー 考えようによっては贅沢な作り方ですね。

吉田 考えようによらなくても贅沢ですよ。

はらだ どこへ到達するか本人もわからないと思う。

ー それでも皆さんついていくんですね。

はらだ 知らなかったから、ついていった。

吉田 みんなやめようって言わないんだから僕もついていくしかないです。

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