公開日 2017/07/31 16:30

MUTECのクロックジェネレーターMC-3+USBを徹底的に使いこなす

【特別企画】DDコンバーターとしても利用できる多機能機

デジタル再生の次なるクオリティアップとして、クロックの重要性に俄然注目が集まってきている。しかし、クロックは価格が高いといったイメージや、専用の端子を搭載していなければ使えないなど、導入にあたってのハードルは高い、と考えられてきた。しかし、そんな中登場したMUTECのMC-3+USBはまさに画期的なアイテムだ。10万円台で入手できるお手頃さに加え、USB入力端子があればクロックが利用でき、リクロックやDDコンバーターとしても利用できるなど、これまでの「クロック」の常識を覆すようなさまざまなアイディアが盛り込まれている。本機の魅力に惚れ込み、自宅の試聴室に導入した角田郁雄氏に、その使いこなしアイディアを語っていただいた。



■USB入力でも利用できるクロックジェネレーター

今年、私が購入して感激したデジタル・アイテムがある。それは、ドイツ、MUTECのMC3+USBだ。本機は、「マルチクロック・ジェネレーター」「USB入力のAES/EBUとS/PDIF出力への変換」「リクロック」が機能する多機能クロックジェネレーター/DDコンバーターである。

MUTECのクロックジェネレーター兼DDコンバーターMC-3+USB(¥OPEN、市場実売価格¥148,000前後)

私は、ハイレゾ好きであるが、一方で30数年の歴史を誇るCD再生にも力を入れている。しかし、私のCDトランスポートとDACには、クロック入力が残念ながら搭載されていない。仮に本機をCDトランスポートとDACの間に設置したら、本機内部の高精度クロックに同期してジッターが低減され、解像度が高まり高音質化するはずだ、と予測した。実際、2016年の暮れに一度試聴したが、その効果は絶大であった。空間性が向上し、奏者や歌い手が音場にリアルに再現させるようになった。また弱音の再現性も高まった。その後、忘れられず、どうしても欲しくなり、今年4月に購入した。

本気の大きなキー・ポイントは。10MHzを超える1GHzマスタークロックとDDS回路を使った独自技術である。DDS回路は、PLL回路とは方式が違い1GHzクロックから目的とするサンプリング周波数を直接合成出力する回路で、不要な高調波(ノイズ成分)を大幅に低減する。近傍移送ノイズを低減するのである。内部には、DSPやFPGAが使用され、実に高品位である。さらに本機の同軸出力を手持ちDACの同軸入力に接続し、USB入力によるハイレゾ再生を試した。

これも、CD再生と同様に空間性が向上し、奏者や歌い手のリアリティが高まった。ハイレゾであるがゆえにCDよりも音が高密度となり、DAC本来の特性が生かされた思いがする。ハイレゾデータを高精度クロックに同期させ出力することで、高密度・高解像度な音質が得られたわけである。また、音の立ち上がりも俊敏になった印象を受けた。これらは間違いなく、本機がジッターを低減したより正確なクロックの方形波を生成するからである。


MC-3+USBの内部。FPGAやDSPが採用され、電源部にはシールド対策も施されている

MC-3+USBの背面。ワードクロックの入出力端子の他、USB-Type Bや光TOS、AES/EBUなど多彩な入力を持ち、DDコンバーターとしても機能する
■多様な音源や接続に対応しDACの性能を向上させる

USB入力は、44.1kHz〜192kHzまでのPCMに対応し、DSDは11.2MHzまで対応するが、AES/EBUとS/PDIFの規定により、DSDは176.4kHzPCMに変換される。そのPCM化された音も十分な倍音再現性と明瞭な音像の輪郭が得られ、厚みのある音へと変化する。

本機を実際に試聴する方は、まず、ハイレゾミュージックで一番スタンダードな96kHzや192kHz/24bitの音を聴いて欲しい。きっと聴き慣れた音楽を聴き直したくなると思う。DACのアップグレードにも繋がることであろう。DELAのオーディオ用NAS、N1AやN1ZともダイレクトにUSB接続できる。

本機を購入したら、できる限り長くエージングしたい。クロックはエージングすることで、より効果が発揮されるからだ。またシールド性が高く、75Ωのインピーダンスを正確に保った同軸ケーブルを使うことをお薦めする。さらに音質を極めたい方は、高精度10MHzクロックジェネレーターも接続できるので、本機内蔵クロックの音と比較してよければ導入すると良い。

MUTECでは、近くREF10という10MHzクロックジェネレーターが登場予定とのこと。これも楽しみである。まずは、専門店で本機を試してみて欲しい。


今年のミュンヘン・ハイエンドショウで発表された新クロック「REF10」(写真下)。近日日本でも正式発売される予定だ


■角田氏オススメの接続プラン

(1)愛用するApril MusicのDAC/プリアンプ、EXIMUS DP1との組み合わせです。美しいケースはニール・フレイ・カンパニーのアレックス・ラスムッセンの手によるもの。MacからUSBでMC-3+USBに入力、AES/EBUまたはCoaxialでDP1と接続します。パワーアンプには同社のEXIMUS S1を利用しており、B&Wの802D3はもちろん、800D3すら朗々とドライブするパフォーマンスの高さを見せてくれます。



(2)いまも素晴らしいスタジオサウンドを聴かせてくれるMytek DigitalのSTEREO 192-DSD DAC。MC-3+USBとSTEREO 192-DSD DAC96kHzは、AES/EBUと、ワードクロック(BNC)の2本のケーブルでそれぞれ接続します。96kHz、192kHzのPCM再生で、驚くほどダイナミックで鮮度の高い音を聴かせてくれます。

角田氏の試聴室における接続イメージ図

Mytek DigitalのDACとMC-3+USBの背面接続図


(3)最高のCDプレイバック・システムを作りたい、と考えて導入したシステムです。Metronome Kalista Reference SEというCDトランスポートから、同軸ケーブルでMC-3+USBに入力。さらに同軸ケーブルでCHORDのDAVEに接続します。CDとは思えない臨場感たっぷりの音質で、まさに眼前に演奏が展開するようです。

(特別企画 協力:ヒビノインターサウンド)

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