公開日 2013/07/12 21:10
パーカッショニスト加藤訓子の新譜「CANTUS」誕生の舞台裏
ライヒの次はアルヴォ・ペルトをフィーチャー
パーカッショニスト・加藤訓子2枚目のアルバム「CANTUS(カントゥス)」がリリースされた。6月末よりLINN RECORDSよりハイブリッドSACDおよびハイレゾ配信で販売されている。
スティーヴ・ライヒの作品を打楽器用に編曲し、全パートをひとりで演奏した意欲作「Kuniko Plays Reich」で、ライヒ本人のみならず世界中から高い評価を受けた加藤さん。2011年7月に発売された前作は、その年LINN RECORDSで最も沢山売れたタイトルになったほどの人気作に。日本でも第12回佐治敬三賞を受賞した。
■2作目はエストニアの現代作曲家 アルヴォ・ペルトをフィーチャー
多重録音を駆使して全てのパートをひとりで演奏する、という手法は、新譜「CANTUS」でも引き継いでいる。
今作では、ライヒの「ニューヨーク・カウンターポイント」に加え、アルヴォ・ペルトやハイウェル・デイヴィスの作品も取り上げている。沢山の音が珠のように連なり巡っていく「カウンターポイント」シリーズに比べ、ペルト作品は音数が少なく持続音が多いという曲の性質も相まって、ライヒ作品よりも静謐かつ内省的な印象。音同士の間に存在する「響き」が重要なキーになっている印象を受ける。
エストニアの現代作曲家・ペルトは、加藤さんがヨーロッパ留学時代に知り、感銘を受けた作曲家なのだという。
「『ニューヨーク・カウンターポイント』は、前作から今作につながっている部分。同じ“カウンターポイント”シリーズでも、もっと打楽器の音色の世界を広げたいな、と考えていたんです。打楽器の音は“点”ですが、その周りの響きや音が放たれる空間の響き、楽器自体の素材の違いやマレットの違いなどで、音が全く変わります。ちょうど次のアルバムを考えるとき、リンからも『ミニマルは引き継ぎつつ、もう少し世界を広げてみては?』という提案があったんです。だったら前作とは全く違う世界観にしたいなということで、この選曲になりました」(加藤さん)
今回の録音は、神奈川県の相模湖交流センター多目的ホールを中心に、横浜BankART Studio、安曇野穂高ビューホテルのチャペルなどで行われた。
「それぞれの会場で、全く音の響きが違います。BankART Studioは、ペルトの音楽を取り上げようということで、最初にトライアル録音した会場。天井がとても高い鉄筋コンクリートの建物で、残響が不思議で面白いんです。水琴窟のようにとても長い。最初はトライアルのつもりでしたが、この音は他の会場では得られなかった。これは、というテイクが録れたこともあり、そのまま使うことにしました。『鏡のなかの鏡』は、ここで録音したものです。
1曲目の『アリーナのために』は、孤独で、少女がじっと見つめているような…私のなかでそんなイメージだったんです。それに合う会場を探したとき、安曇野穂高ビューホテルのチャペルがいいな、と。
相模湖交流センターはアコースティックな響きが美しく、ナチュラルでフラット。自然に、素直に響きが返ってくるホール。アコースティックな楽器を演奏している者として、こういう響きを聴きながら演奏できるのが好きなんです。今回のアルバムの大部分はこちらで録音しました」(加藤さん)
■録音からマスタリングまでRME製品を使用
今作では、録音から編集、マスタリングまで全面的にRME製品を使用。また、マイクにはSanken「CO-100K」、AKG「C414」、LODE「NT5」が採用された。
オーバーダブ時には、192kHzで最大194chの録音が可能なHDSPe MADIFXからAES/EBU出力されたモニターミックスをFireface UFXで再生しながら演奏が行われたとのこと。MADIFXは、今回の録音が国内初の導入事例。織り重ねられた演奏は200トラックを超えるものもあったという。また録音ソフトには、サラウンド録音に適するというSteinbergの「NUENDO」を使用した。
録音に携わったシンタックスジャパンの村井清二代表取締役は「今回我々に課された課題は“ノンリミッター、ノンEQ、ノンエフェクター”。ソフトでリバーブや奥行きを追加するのは簡単ですが、何もいじらず、響きはホールの響き、奥行きは楽器とマイクの距離感で作り上げるのは、とても大変なチャレンジでした。192kHz/24bit録音になって、録音はもういちどアナログ録音の手法に戻りつつあるのではと感じています」と語る。
アルバムタイトルにもなった「CANTUS」は30回オーバーダブ。これは「演奏する側も大変だが、編集側にとってもお坊さんになれるくらい苛酷な修行(笑)」(村井氏)なのだそう。「弦楽合奏版は合計30本の5声弦楽パートで構成されています。でも30回オーバーダブしたのは、各楽器を全部そのままやろうとしたわけではありません。単純な“ラ-ソ-ファ-ミ-レ-ド-シ-ラ”という音型を、1stVnはピアニッシモ、2ndVnはピアノ…というように音量を少しずつ上げて重ねていきます。音の粒を重ねていくことでできあがる世界には、自分でも驚きました。ペルトさんも『驚いたよ』と。彼が思い描いていたものとは全く違う世界だったんだろうと思います」と語っていた。
山之内氏も「弦楽合奏版は厚みがある響きでピッチに幅があるが、加藤さんの演奏はもっと凝縮されたピュアな音という印象。最初聴いたとき、同じ曲だとは思えなかった。ペルトさんからは非常に細部にわたり『ここはこうしたい』『この音はこう』という指定があったそうですが、それだけ加藤さんの演奏を気に入ったのでしょうね」と感想を述べていた。
加藤訓子さんは現在イギリスで開かれている音楽フェスティバルに参加中。今週末7月15日には、グラスゴーのリン本社でもコンサートを行う予定とのことだ。
CANTUS/加藤訓子
http://www.linnrecords.com/recording-cantus.aspx
ペルト:アリーナのために
ライヒ:ニューヨーク・カウンターポイント
ペルト:カントゥス − ベンジャミン・ブリテンの思い出に
ペルト:フラトレス
デイヴィス:パール・グラウンド
ペルト:鏡のなかの鏡
スティーヴ・ライヒの作品を打楽器用に編曲し、全パートをひとりで演奏した意欲作「Kuniko Plays Reich」で、ライヒ本人のみならず世界中から高い評価を受けた加藤さん。2011年7月に発売された前作は、その年LINN RECORDSで最も沢山売れたタイトルになったほどの人気作に。日本でも第12回佐治敬三賞を受賞した。
■2作目はエストニアの現代作曲家 アルヴォ・ペルトをフィーチャー
多重録音を駆使して全てのパートをひとりで演奏する、という手法は、新譜「CANTUS」でも引き継いでいる。
今作では、ライヒの「ニューヨーク・カウンターポイント」に加え、アルヴォ・ペルトやハイウェル・デイヴィスの作品も取り上げている。沢山の音が珠のように連なり巡っていく「カウンターポイント」シリーズに比べ、ペルト作品は音数が少なく持続音が多いという曲の性質も相まって、ライヒ作品よりも静謐かつ内省的な印象。音同士の間に存在する「響き」が重要なキーになっている印象を受ける。
エストニアの現代作曲家・ペルトは、加藤さんがヨーロッパ留学時代に知り、感銘を受けた作曲家なのだという。
「『ニューヨーク・カウンターポイント』は、前作から今作につながっている部分。同じ“カウンターポイント”シリーズでも、もっと打楽器の音色の世界を広げたいな、と考えていたんです。打楽器の音は“点”ですが、その周りの響きや音が放たれる空間の響き、楽器自体の素材の違いやマレットの違いなどで、音が全く変わります。ちょうど次のアルバムを考えるとき、リンからも『ミニマルは引き継ぎつつ、もう少し世界を広げてみては?』という提案があったんです。だったら前作とは全く違う世界観にしたいなということで、この選曲になりました」(加藤さん)
今回の録音は、神奈川県の相模湖交流センター多目的ホールを中心に、横浜BankART Studio、安曇野穂高ビューホテルのチャペルなどで行われた。
「それぞれの会場で、全く音の響きが違います。BankART Studioは、ペルトの音楽を取り上げようということで、最初にトライアル録音した会場。天井がとても高い鉄筋コンクリートの建物で、残響が不思議で面白いんです。水琴窟のようにとても長い。最初はトライアルのつもりでしたが、この音は他の会場では得られなかった。これは、というテイクが録れたこともあり、そのまま使うことにしました。『鏡のなかの鏡』は、ここで録音したものです。
1曲目の『アリーナのために』は、孤独で、少女がじっと見つめているような…私のなかでそんなイメージだったんです。それに合う会場を探したとき、安曇野穂高ビューホテルのチャペルがいいな、と。
相模湖交流センターはアコースティックな響きが美しく、ナチュラルでフラット。自然に、素直に響きが返ってくるホール。アコースティックな楽器を演奏している者として、こういう響きを聴きながら演奏できるのが好きなんです。今回のアルバムの大部分はこちらで録音しました」(加藤さん)
■録音からマスタリングまでRME製品を使用
今作では、録音から編集、マスタリングまで全面的にRME製品を使用。また、マイクにはSanken「CO-100K」、AKG「C414」、LODE「NT5」が採用された。
オーバーダブ時には、192kHzで最大194chの録音が可能なHDSPe MADIFXからAES/EBU出力されたモニターミックスをFireface UFXで再生しながら演奏が行われたとのこと。MADIFXは、今回の録音が国内初の導入事例。織り重ねられた演奏は200トラックを超えるものもあったという。また録音ソフトには、サラウンド録音に適するというSteinbergの「NUENDO」を使用した。
録音に携わったシンタックスジャパンの村井清二代表取締役は「今回我々に課された課題は“ノンリミッター、ノンEQ、ノンエフェクター”。ソフトでリバーブや奥行きを追加するのは簡単ですが、何もいじらず、響きはホールの響き、奥行きは楽器とマイクの距離感で作り上げるのは、とても大変なチャレンジでした。192kHz/24bit録音になって、録音はもういちどアナログ録音の手法に戻りつつあるのではと感じています」と語る。
アルバムタイトルにもなった「CANTUS」は30回オーバーダブ。これは「演奏する側も大変だが、編集側にとってもお坊さんになれるくらい苛酷な修行(笑)」(村井氏)なのだそう。「弦楽合奏版は合計30本の5声弦楽パートで構成されています。でも30回オーバーダブしたのは、各楽器を全部そのままやろうとしたわけではありません。単純な“ラ-ソ-ファ-ミ-レ-ド-シ-ラ”という音型を、1stVnはピアニッシモ、2ndVnはピアノ…というように音量を少しずつ上げて重ねていきます。音の粒を重ねていくことでできあがる世界には、自分でも驚きました。ペルトさんも『驚いたよ』と。彼が思い描いていたものとは全く違う世界だったんだろうと思います」と語っていた。
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ペルト:鏡のなかの鏡
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