製品批評

Vol.
毎週水曜更新 2008年3月5日号(2/27発行)

利便性とクオリティを両立した高品位セレクター

文/井上千岳プロフィール

製品名

接点が増えたことを感じさせないワイドレンジで滑らかな音質

製品画像

<上>AS-44のリア部<下>AS-55のリア部

オーディオシステムの中で必ずしも必需品というわけではないが、根強い需要のあるのがセレクターである。マニアの中にはアンプやスピーカーを複数所有し、時に応じて使い分けながら違いを楽しむ人が少なくない。そうした用途に対応して開発されたのが、ラインセレクターとスピーカーセレクターである。

AS-4IIIとAS-5IIIは、手軽に使えるコンパクトなモデルだ。いずれも切り替え可能な4系統の端子と、それらと共通につながる1系統の端子を備えている。入力と出力の区別はなく、4系統の入力に対して出力1系統、あるいは入力1系統に対して出力4系統という使い方が可能だ。内部配線は音質を考慮してディスクリートとし、並列同時接続ができる。AS-4IIIは金メッキ端子を採用。またAS-5IIIにはヘッドフォン端子も装備されている。

AS-44とAS-55は上級バージョンで、重量級の大型筐体に高純度な金メッキ端子を装備している。AS-44は4端子選択、AS-55は3端子選択で、共通端子は1系統。やはりどちらを入力ないし出力に使っても構わない。内部配線には6N銅線を使用し、アースループを介してのノイズ混入を避けるため、アース回路ごと切り替える方式を採っている。AS-44はボタンスイッチによる切り替えだが、AS-55はロータリー式のセレクタースイッチを装備する。

スピーカーセレクターは、複数のスピーカーをアンプにつないで切り替え使用するのに使われる。しかしその逆に、複数のアンプを切り替えて1台のスピーカーを駆動することも可能だ。この場合は、プリアンプからパワーアンプ、あるいはCDプレーヤーなどのソース機器からプリメインアンプへ接続するなどの際に、やはりセレクターが必要になる。ラインセレクターはそのための存在である。おそらく最も多いのはパワーアンプが複数ある場合で、プリアンプのラインアウトは多くても2系統だから、それ以上のパワーアンプを使うにはセレクターが要るわけである。

もうひとつ考えられる用途はプリアンプの代わりにフェーダーを使っている場合で、いわゆるパワーアンプ・ダイレクトという接続に当たる。CDプレーヤーやフォノイコライザー、チューナーなど複数のソース機器が存在する場合、フェーダーには普通セレクターがないためラインセレクターが必要になるわけである。

AS-4III/AS-5IIIはロングセラー・モデルで、デスクトップやリビングなど幾つもの場所にコンパクトなスピーカーを置いている場合などにも有効活用できる。またフェーダーを使ったパワーアンプ・ダイレクトを簡単に試してみたいときなどにも効果的だ。

AS-44/AS-55は、大型システムを切り替え使用する場合にうってつけである。特にわずかな音質劣化も嫌うハイエンド・ユーザーには、これらの持つ純度が欠かせないはずだ。接点が増えたことを感じさせないワイドレンジで滑らかな音質が、利便性と品位の高さを両立させている。

スペック

【SPEC】
<AS-4III>●配線:ディスクトリート ●端子:金メッキ ●出力:並列同時出力可能 ●最大外形寸法:160W×65H×95Dmm ●質量:0.53kg
<AS-5III>●配線:ディスクトリート ●出力:並列同時出力可能 ●端子:ヘッドホーン端子付き ●最大外形寸法:240W×65H×95Dmm ●質量:0.75kg
<AS-44>●ボックス:4系統RCA端子タイプ信号切り換えボックス ●外形寸法:370W×71H×136Dm ●質量:2.4kg
<AS-55>●ボックス:3系統スピーカー端子タイプ信号切り換えボックス ●外形寸法:370W×71H×164Dmm ●質量:3.0kg
●問い合わせ:ラックスマン(株)TEL/045-470-6991

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