製品批評

Vol.
毎週水曜更新 2007年3月28日号(3/20発行)

フラッグシップ機の技術を受け継いで完成した待望の純A級ステレオパワーアンプ

文/井上千岳プロフィール

製品名

最新のノウハウを投入した16年ぶりの純A級モデル

製品画像

<上>本機の背面端子部。入力端子はRCA、XLR端子を用意。大型のスピーカーターミナルも装備している。<下>全ての音楽エネルギーの源流をサポートする電源ケーブルには、ハイエンドモデルだけに採用が許された新開発のJPA-15000を標準付属。従来の標準ケーブルJPA-10000をあらゆる角度から見直したものである。

隣に並んだB-1000fに比べると意外に小さく見える。とはいうものの48.5kgという質量は普通ではない。とにかくB-1000fが巨大すぎるのだ。

M-800A。ラックスマンのパワーアンプとしては、16年ぶりという純A級モデルである。定格は60W×2/8Ωだが、1Ωでは480W×2を保証する。ブリッジでも2Ωで960W。パワーリニアリティの正確さももちろんだが、実に1kW近くを確保する電流供給能力は強力そのものといわなければならない。

出力回路はB-1000fで開発された4×4方式を継承している。これはユニークな構成で、3段ダーリントン4パラレル・プッシュプルの増幅モジュールを、チャンネルごとに複数枚並列接続したものだ。B-1000fでは4枚使用するため4×4と名づけられたが、本機ではチャンネル当たり2枚ずつ使用。このため4×2方式と呼ばれている。出力素子を単に多数個並列するのとは違って、スピーカーのインピーダンス変動などに対する対応力が強化され、結果的に駆動力が向上する。

S/Nのよさ、解像度の高さはこれだけの製品ならむしろ当然のこととして、最も印象的なのは楽々とした駆動力だ。それは大出力による力任せのドライブではなく、放っておいてもひとりでに力が出てしまうという感触の力感である。

ボーカルのように比較的鳴らしやすいソフトでは、スピーカーが全く力まずに動いているという感覚だ。上から下までまるで屈託というものがなく、歪みや濁りによる棘を持たずにあらゆる音がなんでもないように明瞭に出てくる。エネルギーの流れにひっかかりや澱みがない。低域の豊かさはウーファーが常に十分な電流供給を受けていることを示しているが、それもアンプが動かしているというよりソースに応じてスピーカーの方が自分で動いているという印象である。

音調に固有のクセや色づけは全くなく、どこまでもニュートラルな透明度が貫かれている。強力な駆動力がそれを支えているために、物足りないと思う人はいないはずである。

<この製品の情報は「オーディオアクセサリー」124号にも掲載されています>

スペック

【SPEC】●連続実効出力:60W×2(8Ω)ステレオ時、120W×2(4Ω)ステレオ時、240W(8Ω)BTL時 ●最大出力:480W×2(1Ω)ステレオ時、960W(2Ω)BTL時 ●入力感度:773mV / 60W(8Ω)、GAIN 29dB ●入力インピーダンス:アンバランス 51kΩ、バランス 67kΩ ●全高調波歪率:0.009%以下 (1KHz、60W / 8Ω)、0.1%以下 (20Hz〜20KHz、60W / 8Ω) ●周波数特性:20Hz〜20KHz(+0、-0.2dB)、DC〜130KHz(+0、-3.0dB) ●SN比:117dB(IHF-A) ●ダンピングファクター:700 / 8Ω ●消費電力:492W(電気用品安全法の規定による)、396W(無信号時)、0.9W(スタンバイ時)●サイズ:440W×224H×485Dmm ●質量:48.5kg ●問い合わせ:ラックスマン(株) TEL/045-470-6993

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