製品批評

Vol.
毎週水曜更新 2005年8月31日号(8/24発行)

単品での使用にも高い信頼性 力強さと均一なレスポンスが秀逸

文/井上千岳プロフィール

製品名

骨格のしっかりとした音調 ピアノのタッチもクリアに描かれる

本機には二段構えのいきさつがあって、まず管球式プリアンプCL-88専用にフォノイコライザーEQ-88が開発された。それとペアになる昇圧トランスが本機という具合である。

従って、本来は上記2モデルと組み合わせて使用するべきものかもしれない。しかし汎用性がない訳ではなく、単品での需要も高いと聞く。やはり信頼性であろう。

入力インピーダンスは3Ω固定。高効率・定損失のトロイダルトランスを2基備え、コアには日立金属の開発によるナノ結晶軟磁性材料ファインメットが採用されている。巻線はOFCで、カイガラムシから採れる天然樹脂セラニックスを含浸させている。出力は直出しだ。

ボロン緩衝材でコアを挟むフローティング構造や、真鍮製インシュレーターなどの振動対策を施し、磁気シールドは珪素鋼板である。

骨格のしっかりした音調で輪郭が明瞭だ。ピアノのタッチがクリアに描かれ、密度の高い響きを備える。室内楽では背景の静寂感が高く、鮮度が高い。オーケストラはディテールの隅々まで明確な質感で捉えている。高域に厚みの欲しいところだが、トランスらしい線の力強さに加えて均一なレスポンスが秀逸だ。大音量でも崩れず、パッシブ特有のS/N感を発揮して明朗な鳴り方を示す。

<この製品の詳細は「季刊・オーディオアクセサリー117号」にも掲載されています>

スペック

【SPEC】●方式:LR独立オートトランス ●周波数特性:10Hz〜100kHz ●全高調波歪率:0.050%(100Hz) ●セパレーション/偏差:98dB以上/ 0.1dB以内 ●コアタイプ:トロイダル ●入力インピーダンス:3Ω ●出力インピーダンス:2kΩ ●負荷インピーダンス:47kΩ以上 ●利得:26dB ●外形寸法:90W×85H×240Dmm ●質量:1.85kg ●取り扱い:ラックスマン(株)TEL/045-470-6991

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